寄稿エージェント: 高木 土筆
製造業の中でも特に成長している企業としてアイリスオーヤマが挙げられる。同社の商品を購入したことがある人も多いと思うが、どんな企業なのか詳細を知らない人もいる。
今回は成長を続けるアイリスオーヤマ秘密に迫っていきたい。
シンプル、低コスト、クオリティ担保の実現
アイリスオーヤマはもともとプラスチック製の生活用品メーカーであったが、家電事業に参入している。
同社が急成長している理由は、主力商品だが、後発の家電を中心にヒットしていることが主な要因となる。
家電商品が人気である理由はその価格の安さがある。他のメーカーの商品と比べても安い商品が多いため、消費者は価格優位性から同社の商品を選んでいる。
一方で、安さと機能はトレードオフの関係から安いものは品質を担保できないというのが通常だ。
そこを両立させているのがアイリスオーヤマの製品の特徴でもある。
品質を保ちつつ低価格で提供できている秘密は、無駄な機能を付けておらず、必要な機能フォーカスしている。
不必要な機能を省くことで、製造コストを抑えて低価格で提供できるようにしている。
必要最低限の機能さえあれば良いという人も多く、ニーズを満たしてくれる機能があれば、価格勝負の世界になり、アイリスオーヤマはそこで勝ち続けている。
もちろん多機能を求める人には刺さらない商品も多いが、最低限の機能で十分でシンプルなものを求めている人は意外と多い。
「ミニマリスト」という言葉が登場するくらい最低限のものしか持たない、という人は増えている。現代は物に溢れているため、洗練された最低限の機能のみ、というのは一定のユーザーにはかなり刺さる。
商品をシンプルにすることは簡単ではない
同社はこれまでに15,000以上の商品を開発している。基本的なコンセプトは、シンプルな機能、リーズナブルな価格、良い品質の3つを重要視している。
商品開発会議は社長のOKがもらえない限り世に出ることはなく、コンセプトを徹底している。
アイリスオーヤマでは商品が売れなかった場合は全て社長の責任になり、 売れなかった場合は社長の責任になるので、商品開発会議で社長からOKをもらうには社員・社長ともに真剣勝負となる。
一方で、毎週1,000点ほどの新商品案が生まれており、それだけ多くの商品を提案できるのは、社員1人1人の商品開発力が高いということになる。
社員自身が徹底的に消費者目線に立つことで、より良い商品を開発することに繋げている。消費者目線に立つ方法として、他の企業の商品を使い家事や生活して、当事者となる。
他社の商品を使っているうちに感じた不満点や使いやすかった点を自社の商品開発の際に取り入れることで、より良い商品を生み出せるように試行錯誤している。
他社商品を使いながら本当に必要な機能と無駄な機能も選別することでより、シンプルで使いやすくリーズナブルな商品に向けて研ぎ澄ましていく。
「スピード経営」の代名詞を持つ同社
最後の同社の強みはその圧倒的なスピードだ。商品開発力もそのスピードが後ろ支えをしている。
スピード化を図るために、開発は時間がかかるという前提の下、「純粋な開発」以外を短縮している。
意思決定のスピードを上げ、スピーディに開発できるように仕組みを作る。この仕組みは「伴走方式」と呼ばれるプロジェクトの進め方で、プロジェクトを「やる」と決めるたら、関連部署が一斉に立ち上がり、開発や品質管理、生産などの複数部門が同時並行的に物事を進める。
一般的には、企画が決定したら開発・設計部門へプロジェクトを手渡し、設計がある程度固まったら生産や品質管理に部門へプロジェクトを渡す、といったリレー方式を採用しているため、1つ1つ進めていかなければならないならない。
また、開発者の裁量の広さもスピードを上げるために持たせている。一般的な開発部門では、設計者は設計だけ、さらに言えばモーターの設計だけ、回路の設計だけと、非常に狭い範囲だけを担当する場合が多い。
同社では、開発が企画も考え、設計も広範囲に担当。さらには製造にも関わり、品質もチェックする。 1つの製品が世に出るまで、ほぼすべてのオーナーシップを設計者が持つことになる。
1人あたりの守備が広く、同時並行で進めていく仕組みができているため、圧倒的なスピードでプロジェクトを推進することができる。
今回は急成長を続けるアイリスオーヤマの要因を解説した。ECサイトでその名前を見ることも増えているため、ぜひ注目してみてほしい。