寄稿エージェント:北 駿弥
ロジカルシンキングとは、筋道立った合理的な思考方法やその方法論のことを指す。ビジネスパーソンにとって重要なスキルの1つであるが、実践で使えるようにするためにどうすれば良いかご紹介していきたい。
ロジカルシンキングとは?
ロジカルシンキング、論理的思考はビジネスの現場では必要不可欠だ。なぜなら、ビジネスは最終的には意思決定とコミュニケーションの繰り返しであり、自分や他者を納得させるには論理的であることは非常に重要なスキルであるからだ。
論理的であることは意思決定とコミュニケーションのスピードを格段に上げ、効率的にしてくれる。
例えば、何かを主張したいときに、その理由が「なんとなく」や「周りがそうしているから」など論理的ではなかった場合、主張を納得することはできず、意思決定を即決することはできないだろう。
相手がどうして?という疑問を持っている間は意思決定できず、質問や確認にコミュニケーションの時間が取られてしまい、非効率になっていく。
また、仕事に再現性を持たせるためにもロジカルシンキングは効果的だ。再現性とは、自分が再度挑戦したり、他の人が挑戦したときに同じような結果が出せるかという観点である。
個人の感覚やセンスに依存したやり方などは他の人に伝えることが難しく、同じような結果を再現することが困難ということもある。
因果関係やデータ・数字に裏付けされた手法は個人に感覚やセンスの影響を受けにくく、ある程度期待された結果を導く可能性が高い。
日常的にできるトレーニングとは?
では、具体的にどのようにロジカルシンキングを伸ばしていき、実践で使えるようにしていけばよいのか。
ロジカルシンキングにはフレームワークで物事を捉えるという観点が重要であり、ここではロジックツリーと5W1Hを抑えておきたい。
ロジックツリーとは、物事を構造化し、事象を整理していく考え方のことである。課題の分析などで用いられることが多く、見たことがある人も多いだろう。
ロジックツリーは階層が詳細化されるときに必ず問いが入る構造になっている。
例えば、「転職したい」という主張があったときに「なんで転職したいの?」と問いを立てることで①やりがいのある仕事がしたい、②年収を上げたい、③ワークライフバランスを改善したい、など次の階層に理由を整理することができる。
これが一番シンプルな2階層のロジックツリーとなるが、本格的な課題整理や分析では階層が多階層化していく。このような多重階層のロジックツリーを毎回整理するのはかなり負荷が高いため、日常的な習慣として、問いを立てて3つ回答を出す、というのを習慣にしてみてほしい。
最初は紙に書き出してロジックツリーを整理することをおすすめするが、慣れてきたらシンプルな2階層のロジックツリーであれば頭の中でパッと浮かべられるようにしたい。
ここで、問いを立てるときに5W1Hを用いる。5W1Hはビジネスシーンでよく用いられるが、特に意識すべきなのがWhy、What、Howの3つだ。
この3つは質問として強いため、ロジックツリーを整理するときにとにかくこの3つから入ることを意識してみよう。
先ほどの転職の例はWhyで理由を整理したが、Howでどのようにを整理すると、①転職エージェント経由、②現役社員の紹介制度、③直接応募、など手段について整理することができる。
当たり前のように感じるが、ビジネスシーンで1つ1つちゃんと意識して実践できているかというと当てはまる人は少ないと思うので、ぜひ実践してみてほしい。
ロジカルシンキング活用の注意点
最後にロジカルシンキング活用の注意点についてもご紹介したい。
冒頭にロジカルシンキングは意思決定とコミュニケーションにとって重要であると説明した。これはその通りだが、一方で、人間は100%論理的に意思決定できるかというとそんなことはない。
ロジカルであることはこちらの主張を伝える上では必要不可欠だが、あくまでも論理的であることは手段であり、目的ではないことに注意したい。
ガチガチのロジックを構築することを重視してしまい、ビジネスの生産性や相手の立場を無視してしまうとかえってコミュニケーションに失敗してしまうこともある。
ビジネスの場では組織の政治的な要因やメンツなどの論理的ではない作用が働くこともしばしばある。
論理的であるがゆえに、相手のプライドを傷つけてしまっては最終的なゴールからは遠ざかってしまう。
物事を論理的かつ構造的に整理することはビジネスの場において非常に重要であるが、それはあくまでも手段であって、最終的な目的・ゴールを意識して、どの範囲をどの順番で出していくか、という観点もコミュニケーションにおいては必要だ。
このように論理的であることは経験の差や立場の違いに関係なく、相手に物事を納得させたり、自分が進めたい方向に導くときに非常に有効になる。
これはいきなり実践することは難しいため、日ごろからご紹介したような方法で問いを立て、回答を3つ整理する、という訓練を繰り返し、即座にロジックツリーが頭の中に浮かぶような状態を目指してほしい。