「大企業」vs「ベンチャー」キャリア形成の本質とは?

「大企業」vs「ベンチャー」キャリア形成の本質とは?

寄稿エージェント:高木 土筆

「大企業」vs「ベンチャー」の構図はいろいろな場面でよく目にする。キャリアの選択肢が多くなっている中で、大企業・ベンチャーの特徴を説明し、キャリア形成の本質について考えてみたい。

大企業かベンチャーか迷う人は大企業を選択せよ

まず、大企業にいくべきかベンチャーにいくべきか迷っている人は、大企業を選んでおいたほうが良いだろう。大企業は思っているよりもいろいろな面でメリットが大きい。

メリットの1つ目は、社会的信用が高いところだ。定性的な側面としては、家族、友達、恋人からの信用は大企業に勤めているというだけで一定担保される。

また、実利として住宅ローンを組む場合、一般的には大企業のほうがベンチャーよりも審査に通りやすく、ローンの組み方や金利の設定が大企業に勤めている信用から優遇される場合がある。

メリットの2つ目は、福利厚生が手厚いことが挙げられる。一般的には、給料が平均よりも高く、年々安定的に増加していく。また、住宅補助・社宅が充実している企業もあり、同水準の年収の人よりも可処分所得が高くなる。特に若手のうちは月に1,2万円で社員寮に住んでいる人もいるだろう。

加えて、有給休暇、傷病休暇、産休育休などの制度が整備されており、ライフステージに合わせた福利厚生によるサポートが整っていることは大企業の大きな特徴であり、ベンチャー企業では大企業ほどの制度は難しい。

一方、デメリットになりうるのは、大企業ならではでの、定型化・細分化された仕事をこなす点だ。大企業は組織が大きいため、機能ごとに部署が細分化されており、さらにチーム、個人レベルまで落とし込んでいくとかなり細分化されたタスクが決まってくる。

任された仕事が楽しければ問題ないが、大きな歯車の一部となってしまうようにルーティンワークをひたすらこなす場合もあり、希望の部署に配属されるかどうかも会社次第のため、働くモチベーションを保ちにくいことがある。

会社としては大きな事業を推進していたとしても、自分はその中のごく一部を担っているだけなので、目の前のタスクの意味付けがうまくできず、仕事のやりがいを感じにくい。

余談だが、大企業に入社した5年目前後くらいの人たちから、仕事に対して大きな不満はないが、やりがいや面白みを感じないと相談を受けることがかなり多い。

ある程度仕事もこなせるようになってきて、5年後、10年後、15年後の先輩たちを見て、自分の将来がある程度想像できてしまったときに「このままで良いのだろうか」となんとも言えぬ不安が出てくることは大企業勤務20代のあるあると言える。

明確な目的を持ってベンチャーを選択せよ

一方で、ベンチャーは大企業が持つ社会的信用や福利厚生が弱い代わりに、会社としてのミッションと各個人がやりたいことの欲求の重なる部分が大きい。

ベンチャーは人数が少ないため、会社としてやるべきこと、経営層がやりたいことの認識合わせを全体でやりやすい。ベンチャーで働く人はこの目的や意味付けを十分理解して働いているので仕事に対しての納得感が強い。逆に言うとビジョンに共感できていないならば、そのベンチャーで働く意味は薄れるので他に移ったほうが良い。

また、大企業のように業務を細分化して分担するほど人的リソースがないので、1人1人がカバーしている業務範囲がかなり広くなる。

例えば、①販売戦略立案⇒②営業活動⇒③事務作業という業務プロセスがあった場合に、大企業はそれぞれが別部署で分担されているが、ベンチャーはすべて1人で行うこともある。

1人のカバー範囲が広いのでシンプルに業務が大変かもしれないが、業務の全体像が見えている中でビジネスの始まりから終わりまで当事者意識を持って進めることができるのでやりがいを感じやすく、よく言われる「手触り感がある」という状態になる。

このように構造上、大企業よりもベンチャーのほうが仕事が楽しいケースが存在する。事業のスピード感、自分たちで事業を作り上げていく感覚、同じ志を持った仲間と進んでいく一体感、これらはベンチャーで働く醍醐味と言える。

だからこそ、明確な目的・やりたいことを自分の中で整理してからベンチャーに挑戦することをおすすめする。大きな裁量の中で自分の成し遂げたいことを実現していく環境としてベンチャーは最適だが、逆に言うと大企業のようにタスクや目標は構造的には定義されない。

自分自身で何をすべきか、何をすれば売上に貢献できるか、など能動的に行動することが求められるため、自分の中でやりたいことが明確になっていないと何を指針とすればよいかわからなくなってしまう。

何のために働くのかきちんと整理する

ここまで大企業とベンチャーそれぞれの特徴について説明してきた。しかしがら、どちらが良いということ自体にあまり意味はなく、最も重要なのは、どのような人生を歩みたいか、その中で何のために働くのか明確にすることだ。

当然のことながら、幸せな人生を生きたいという誰しもが思うだろう。そのときに幸せな人生の定義は人によって異なり、それを実現するために働く意味合い・位置づけも人によって異なる。

働く目的を明確にしたうえで、自分にとって何が譲れないポイントなのか、逆に何なら捨てることができるのか、という判断基準を持ったうえで、大企業の環境が良いのか、ベンチャーの環境が良いのか考慮していくことが大切だ。

今回はわかりやすく「大企業」vs「ベンチャー」というように対立概念で説明したが、大企業といっても日系の伝統的な大企業もあれば、外資系の比較的新しい大企業もあり、メガベンチャーといわれるようなある程度成熟したベンチャーもあれば、創業1期目のベンチャーもある。

大企業・ベンチャーという言葉に踊らされず、自分自身のやりたいこと・実現したいことの判断基準に基づいて、ベストな環境はどこなのか、一番納得できる形でキャリア戦略を考えてみて欲しい。