転職の軸は何を「捨てる」か明確にする

転職の軸は何を「捨てる」か明確にする

寄稿エージェント: 長谷川 翔

転職活動では「転職の軸」を明確にすべき、ということを耳にしたことがある人は多いだろう。この「転職の軸」とは具体的に何を指すのか、どのように考えていけば良いのかといったことについて今回はご紹介したい。

「転職の軸」とは自分にとっての最優先事項

結論から言うと「転職の軸」とは、転職において自分が譲れない最優先事項となる。この最優先事項を自分の中で整理することは転職活動のファーストステップであり、自分の転職活動が成功だったのかどうか判断する基準となる。

転職活動における成功は、有名企業に転職することや年収を大幅にアップさせることだと思っている人がいるかもしれないが、それはあくまでも一般論であって、その人にとっての転職成功かどうかはわからない。

ファーストステップである転職の軸を明確にした上で、その軸に沿った転職を実現してこそ転職成功と言える。間違っても一般論や他人が決めた価値観で転職活動を進めてはいけない。

仮に転職の軸を決めずになんとなく転職活動を始めてしまうと、自分が行きたい業界や企業を選ぶことができない。また、最終的に内定をもらえたとしても承諾しても良いかの判断基準がなく、複数社内定もらえた場合もどの企業に行けば良いか迷うことになってしまう。

理想と現実のギャップに軸のヒントがある

では、具体的にどのように転職の軸を見つければ良いのか。大きく3つのステップに分けると、①自分のなりたい姿・理想像をイメージする、②理想と現実のギャップを分析する、③ギャップを埋めるための最優先事項を選ぶ、といったように進めるのが良いだろう。

①の自分のなりたい姿・理想像をイメージするステップでは、自分なりの5年後、10年後、20年後のなりたい姿をイメージしてみることが重要だ。ここでは、自分なりの理想像をイメージすることが重要であり、一般的な理想像をイメージしてはいけない。

また、自由に発想してみるということも大切だ。社会人経験がある程度積み上がってくると、これはできない、あれは難しいと自分の中で勝手に制約を付けてしまうことがある。自分なりの理想像をイメージするのだから、特に制約は考えず、自由にイメージを膨らませる。

次に、自分のなりたい姿・理想像をイメージすることができたら、②の理想と現実のギャップを分析するステップに移る。現実を考える際は、今の職場で頑張り続けることでその未来を実現することができるか考えてみる。

今のまま頑張ることで理想の未来に近づけることができそうならば、現職に残ることをおすすめする。転職活動の選択肢の1つとして、転職活動の結果、現職のメリットが明確になり、現職に残るという選択も立派な成功事例と言える。

一方で、現職のままでは理想の未来に近づけそうもないということであれば、具体的にどのようなポイントに理想と現実のギャップがあり、改善の余地があるか考える必要がある。

転職の軸は選ぶと同時に捨てるものを明確にする

③の理想と現実のギャップを埋める最優先事項を考える中で自分なりの転職の軸が明確になっていくが、同時に何を捨てるか、何をあきらめるか、といったことも考える必要がある。

例えば、自分にとって譲れないものとして、年収、企業ブランド、社風、やりがい、勤務地、ワークライフバランス、職種、役職など、転職の軸となりうる項目が列挙されたときに、これらすべてを完璧に満たすような企業は存在しない。

自分の中で何を優先するか、といった優先順位を付けると同時に、何を捨てるかまで決めなければ、理想だけを追い求めてしまい、転職活動は全く前に進まなくなってしまう。

極論だが、年収さえ高ければどんなに激務でも構わないという人もいれば、多少年収は低くともワークライフバランスを重視したい、という人もいるため、自分なりの理想像と現実のギャップを分析する際には自己分析が非常に重要となる。

このように転職のファーストステップとして、自分なりの転職の軸を整理した上で転職活動を進めることで、業界・企業選び、面接での志望動機、内定承諾の判断軸、といった転職活動における重要な各ポイントで判断基準や思考のベースとなってくれる。

もちろんこの転職の軸は転職活動の最初に整理して終わり、ということではなく、転職活動を進める中で軌道修正をしていくものだが、自分自身のベースとなる価値観は転職活動のはじめの一歩として整理することをおすすめする。

人によって何を得たいか、何を捨てられるか、といった価値観は必ず異なるため、ぜひ転職活動のファーストステップとしてしっかりと自分と向き合い、自分なりの転職の軸を明確にした上で転職活動を進めていただきたい。