「正解探しの就活」を終えた優秀層が、20代後半のキャリアで一転して迷走する構造的理由 

「正解探しの就活」を終えた優秀層が、20代後半のキャリアで一転して迷走する構造的理由 

寄稿エージェント:富浜 大護

日々、20代〜30代の若手ビジネスパーソンのキャリア支援を行っていると、定期的に「ある共通した特徴」を持つ方々からの相談を受けます。

出身大学はMARCHや早慶。新卒採用では、大手メーカー、総合商社、メガバンク、あるいは注目の事業会社やベンチャー企業へ入社。

傍から見れば、まさに「順風満帆」「就活の勝者」と呼ばれるにふさわしい歩みを進めてきた方々です。

しかし、入社4〜6年目、年齢で言えば26歳〜29歳を迎えたタイミングで、彼らの多くが共通して深刻なキャリアの壁にぶつかります。

「今の会社にいていいのだろうか。」

 「次にどこへ向かえばいいのか、自分が何をしたいのかが全くわからない。」

これまであらゆるハードルを「正解を出すこと」で攻略してきたはずの優秀なビジネスパーソンが、なぜ20代後半というキャリアの重要な局面で一転して迷走してしまうのか。

そこには、個人の能力不足やモチベーションの低下といった表面的な問題ではなく、「受験・就活」と「その後のキャリア」の構造的な乖離が存在しています。

なぜ「優秀な彼ら」が迷走するのか?——就活とキャリアの「構造的乖離」

彼らが迷走する最大の理由は、「外部に明確な物差し(正解)が存在する世界」から、「物差しが一切存在しない世界」へと、ゲームのルールが突如として変わったことにあります。

高校受験、大学受験には「偏差値」という明確な物差しがあります。高い偏差値を目指し、正解の解答欄を埋めることが評価された世界です。

 続く就職活動においても、実態としては「就活偏差値」や「人気企業ランキング」「平均年収」といった、目に見えやすい外部の物差しが存在していました。

MARCHや早慶という難関を突破してきた方々は、いわば「与えられた物差しの中で、最適解(正解)を見つけ出し、勝ち抜く能力」が極めて長けている人々です。

彼らのファーストキャリアの成功は、この能力の高さを裏付けています。

しかし、入社して数年が経ち、20代後半になると事情が一変します。

  • 「昇進を目指すべきか、専門性を磨くべきか」
  • 「年収を追うべきか、ライフワークバランスや働きやすさを取るべきか」
  • 「事業会社に行くべきか、独立や起業を見据えるべきか」

ここに「絶対的な正解」は存在しません。正解の物差しがない世界で突然、「あなたはどうしたいの?」と問いかけられるのです。

これまで「他者からの評価」や「客観的な正解」を基準に勝ち上がってきた人ほど、「自分は何を望んでいるのか」という「一人称(主語)のキャリア観」を構築してきた経験が絶対的に不足しています。

正解を探そうと周囲を見渡しても、そこには他人の答え(他人の物差し)しか落ちていません。

これが、優秀な人が20代後半で突然、立ち尽くしてしまう構造的なメカニズムです。

20代後半に蔓延する「なんとなく〇〇」という危険な罠

一人称の軸を持たないままキャリアの岐路に立ったとき、多くの人が陥ってしまう回避行動があります。それが「なんとなく」の意思決定です。

  • 「今の環境に不満があるから、”なんとなく”人気のコンサル業界へ転職する」
  • 「周りの同世代が動き始めたから、”なんとなく”スカウトが来たITベンチャーの話を聞いて転職する」
  • 「まだやりたいことが決まっていないから、”なんとなく成長できそうな環境を選ぶ」

一見すると、転職活動を行い、新しい環境へ一歩を踏み出しているように思えるかもしれません。しかし、これは「選択」ではなく「選択からの逃避」に過ぎないケースが非常に多いのです。

自分の意思ではなく、「流行っているから」「優秀な同期が選んでいるから」「スカウトの条件が良かったから」といった外部の刺激に乗り、意思決定の責任をうやむやにしてしまう。

“なんとなく”で選んだ次の環境でも、数年後には必ず同じ壁に突き当たります。「思っていたのと違った」「ここでも自分のやりたいことが見つからない」と。

厳しい現実をお伝えするようですが、何かを自分の意志で「選択すること」から逃げ続けている限り、キャリアの迷走が止まることはありません。

 30代を目前にしてこの逃避を繰り返すと、キャリアの専門性や軸がますます曖昧になり、市場価値にも深刻な影響を及ぼし始めます。

キャリアの本質——「正解を選ぶ」のではなく「選んだ選択肢を正解にする」

では、どのようにすればこの「正解探しの呪縛」から抜け出し、力強いキャリアを歩むことができるのでしょうか。

最初にお伝えしたいのは、「キャリアに最初から用意された正解など、どこにも存在しない」という事実です。

受験や就活までの人生が「正解のある問題を解く作業」だったのだとすれば、20代後半からのキャリアは「白紙のキャンバスに自分だけの絵を描く作業」です。

成功しているキャリアを歩む人々は、「正しい選択肢」を引き当てたから成功しているのではありません。

「自分で悩み抜き、自らの意志で選んだ選択肢を、その後の自分の努力と行動によって『正解』へと導いた」に過ぎないのです。

「どの会社に行くか」「どの職種を選ぶか」という選択そのものよりも、「なぜ自分はその道を選んだのか」という理由の引き受け(責任)こそが、あなたのプロフェッショナルとしての軸となり、不確実な時代を生き抜く本当の強さになります。

正解を探すのをやめましょう。 

あなたが向き合うべきは、「どの選択肢が一番得か」という比較ではなく、「自分はどんな価値観を大切にして生き、仕事を通じて何を実現したいのか」という、自分自身の内部にある声です。

あなたの「なんとなく」の裏にある、本当の意志を言語化する

これまで長年「正しい答え」を出すトレーニングを積み重ねてきた方にとって、突然「自分自身を主語にして語れ」と言われても、すぐに答えが出ないのはごく自然なことです。

思考を巡らせるうちに、過去の成功体験である「他人の評価(年収、知名度、他者からの見え方)」に引っ張られ、再び「なんとなく」の思考に戻ってしまうこともあるでしょう。

しかし、キャリアの選択に戸惑い、不安を感じるということは、あなたが他人の決めた尺度ではなく、初めて「自分の人生のハンドル」を握ろうとしている証拠であり、ビジスパーソンとしての重要な成長の兆しです。

キャリアに最初から用意された正解はありません。だからこそ、自分の選択を自分の意思で「正解にしていく覚悟」が必要になります。
あなたが抱える「なんとなく不安」「なんとなく次のステップへ」という言葉にならないモヤモヤを放置せず、一度立ち止まって解きほぐしてみてください。
その裏側にある「本当の価値観」や「譲れない軸」を泥臭く言語化できたとき、あなたのキャリアは「正解を追う旅」から、「自分だけの価値を創り出す旅」へと、確かな一歩を踏み出すはずです。