寄稿エージェント:村井 英里佳
「同世代よりは稼げているし、仕事はキツいけれど、まあなんとかなるだろう」
「何とかここを耐えて成果を出せれば、もっと良い所で活躍できるんじゃないか」
もしあなたが今、20代の住宅・不動産営業として働きながら、心のどこかでこのように考えているとしたら、一刻も早くその認識を改める必要がある。
なぜなら、これらはかつて住宅営業として働いていた頃の私が本気で自分に言い聞かせていたことであり、キャリア支援を職として選んだからこそ気づいた、都合の良い思い込みだったからだ。
一定長い期間やり切ったし評価してもらえるだろう、そう思って転職活動をスタートした当初のお見送り通知の山は、それまで作った自分の自信を打ち砕くには十分すぎる衝撃だった。
毎日遅くまでテレアポや飛び込みに奔走し、上司からの詰めに耐え、数字を追っているあなたへ。まずは、その圧倒的な行動力とタフさに、心からの敬意を表す。誰もができることではない。
しかし、本気であなたの5年後、10年後の人生を豊かにしたいと願うからこそ、綺麗ごと抜きで、耳の痛い現実をお伝えしなければならない。
今の働き方や環境に強い不満を抱えながらも、「まあ、稼げているからいいか」と目を背けていると、30代になった時に完全に手遅れになる。
この記事では「お行儀のいい正論」ではなく、中途採用市場のシビアな現実を交えながら、あなたが今ハマっている罠の正体と、そこから抜け出すための生存戦略を解説する。
耳が痛い現実。なぜ、あなたのスキルは30代で「他業界から無視」されるのか?
不動産業界や住宅業界の営業職は、20代のうちであれば転職市場で「行動力がある」「ストレス耐性が高い」と非常に重宝される。
しかし、30代の中途採用市場は驚くほどシビアだ。 30代の採用において企業が見ているポイントは一つ。
「即戦力としてどう価値をだせるか?」という問いに明確に答えられることだ。
20代のうちはポテンシャルが重視され、やり方を教えて長期目線で育成ができれば良い、という観点で採用される。
一方、30代になると会社の看板や商材を外したとき、あなた個人にどんな再現性のあるスキルがあるのかを言語化できないと、活躍できるか分からない人として切り捨てられてしまう。
だからこそ、20代のうちにどの業界に行っても自分はこれで貢献できる、と胸を張って言えるポータブルスキルを磨ける領域へキャリアをシフトしておく必要がある。
ここで「とはいえ今の会社で成果を出し続ければ、どんなキャリアも自由に選べるんじゃないか。」と考える人も少なくないだろう。
現実には、今の会社でトップを取ったら次を考える、と思っているうちにキャリアの選択肢は刻一刻と狭まっていく。
なぜなら、キャリアには明確な年齢ごとのマイルストーンが存在するからだ。
・第二新卒
実績やこれまでの経験以上に素直さやコミュニケーション能力が評価される。未経験領域へのキャリアチェンジが最も容易な時期。
・20代後半~30歳
30歳以降のキャリアに向けて、足元の自分の実力やスキルを高めていくフェーズ。
・30代以降
未経験領域への転職が難しくなり、身を置いた領域で深めていくフェーズ。どんな実績を出しているか、育成や組織作りなどマネジメント経験があるかどうかが見られる。
転職市場において、成果を出すこと以上に重要なのはどの年齢で、どの場所にいるかというマイルストーンの意識だ。
「今の環境で成果を出してから」と足元の選択を後回しにしていると、気づいた時には30代を迎え、未経験の成長業界や目指したかったキャリアへのドアが閉まってしまう。
「なんでも選べる」というのは、適切な年齢で適切な選択をしてきた人だけに与えられる特権である。自分が今どのマイルストーンにいて、次にどこへ足を進めるべきかを意識する必要がある。
あなたが無意識にハマっている「3つの足枷」
「現状がキツいなら、早く転職活動を始めればいいじゃないか」と外の人間は言う。しかし、それができないからこそ苦しいのだということも、私はよく理解している。不動産営業の若手が無意識のうちに身動きを取れなくなっている、3つの足枷の正体を暴いていく。
【罠①】インセンティブ依存による「生活水準の高さ」という底なし沼
20代後半で、基本給は低くともインセンティブ込みで年収600万〜800万円、人によってはそれ以上を稼ぐ営業マンは少なくない。周りの異業種の友人よりも使えるお金が多いことに、優越感を抱くこともあるだろう。
しかし、これこそが最大の罠である。
一度上げた生活水準を人間は簡単には下げることはできない。
30代になり、「土日も休めず家族との時間が全くない」と絶望して異業界へ移ろうとした時、未経験からのスタートになるため、提示される年収は一時的に下がることがほとんどである。その時に、「生活水準を落とせない」という障壁が足を引っ張り、今の環境で耐え続けるという悪循環に陥るのである。
【罠②】「もう少し実績を作ってから」「資格を取ってから」という準備の無限ループ
真面目な人ほど、この罠に深くハマりやすい。「今の実績じゃ他業界にアピールできないから、せめて次の査定で役職がついてから」「宅建を取ってから、あるいはもっと上の資格を取ってから転職活動をしよう」と、転職を先延ばしにするパターンだ。
厳しいことを言うが、これもただの現実逃避だ。 なぜなら、他業界の採用担当者は、不動産業界内のローカルな役職名や宅建の有無で合否を決めることは無いからだ。彼らが見ているのは、あなたの「若さ」と「ポテンシャル」のバランスだ。
「資格や実績が揃った30歳」よりも、「何も持っていないけれど圧倒的な伸び代がある26歳」の方が、転職成功率は高いのが現実である。準備が整ったら動こうと考えているうちに、中途市場におけるあなたの最大の武器である若さの価値が毎日目減りしていることに気づいてほしい。
【罠③】「いつかはデベロッパー・大手へ」という叶わぬ幻想
「今の会社で数字を作って、将来は大手総合デベロッパーに転職するんだ」そう語る若手に私は何度も出会ってきた。しかし、これは最大級の勘違いだ。
新卒採用において、超高学歴層がしのぎを削って数パーセントの枠を争う総合デベロッパーが、中途採用において、仲介出身の人材を営業力があるからという理由だけで採用することは、現在の転職市場においてほぼないと言って良いだろう。届かない幻のルートを追いかけ、「もっと今の会社で頑張ってから」と20代の貴重な時間を使ってしまうのは、あまりにも勿体ない。
20代あなたが目指すべき「業界」と身につけるべき「スキル」
では、このデッドエンドを回避するために、20代の不動産営業はどこを目指し、何を身につけるべきなのか。
あなたが選択の軸とするべきは、「伸びている市場」に身を置き、どの業界からも必要とされるポータブルスキルが身に着けられることだ。
■狙うべき2つの有望業界
成長IT・SaaS業界
今、最も仕組み化が進んでおり、かつ市場が拡大している領域。不動産営業が持つ馬力や圧倒的な行動量は、この業界では非常に強力なアドバンテージになる。ここでデータに基づいた論理的な課題解決力やロジカルな合意形成のプロセスを身につけることで、どの環境でも活躍できる市場価値の高いスキルを持って、ステップアップができる。
人材業界
「無形商材」の中でも特に難易度が高い領域で、ビジネスパーソンとしての純粋な思考力が試される業界だ。扱うのは形がなく不確定要素の多い「人」や「組織」。顧客の抽象度の高いニーズに対し、市場のデータや労働法、業界トレンドなどの深い知識をインプットした上で、自分自身の頭で抽象度の高いソリューションを論理的に組み立てて提案する必要がある。自分自身に高いスキルと知見がないと成果が出せない環境だからこそ、ここを経験することで、あらゆるビジネスに汎用できる。課題解決能力と高度な論理的思考力が圧倒的なスピードで身につく。
自分の「市場価値」へ投資する、その一歩の決断があなたのキャリアを決める
「今の会社はしんどいけれど、次の打席で勝てる保証もない」
「年収が下がるくらいなら、今の場所で耐えた方がマシかもしれない」
そうやって現状維持を選びたくなる気持ちは、痛いほど分かる。しかし、中途採用市場において最も恐ろしいのは、失敗することではなく、打席に立つのが遅すぎて手遅れになることだ。
望む転職を実現できるのは、完璧な準備ができた人ではない。最も価値のある時間を使って、勇気を持って市場価値の高い環境へ飛び込む意思決定をした人だけだ。
自分の5年後、10年後の市場価値にベットできる思い切りの良さを持った人が、自身のキャリアを望むように選んでいける。
耳の痛い現実も含めて、あなたのキャリアを叶えるために、プロフェッショナルとして全力で伴走する。