ITソリューション営業の市場価値は二極化する。今後5年で評価される人材の条件とは 

ITソリューション営業の市場価値は二極化する。今後5年で評価される人材の条件とは 

寄稿エージェント:澤里 夏樹

「IT業界は成長市場だから安心」
ITソリューション営業の方とお話ししていると、こうした声をよく耳にします。

実は、私自身も前職でITソリューション営業をしていた頃は、同じように考えていました。

DX投資の拡大や生成AI活用の加速を背景に、市場そのものは今後も拡大していく。だからこそ、「IT業界にいる限り、市場価値は一定担保されるのではないか」と感じていたのです。

しかし実際に現場に立つ中で感じたのは、“IT営業”という括りだけでは市場価値を語れなくなっているということでした。

同じIT営業でも、

  • 顧客の経営課題まで踏み込める人
  • 業務改善や運用設計まで提案できる人
  • 単なるプロダクト説明で終わってしまう人

では、顧客からの期待値も、転職市場での評価も大きく異なります。

そして現在、キャリア支援の立場として多くのIT営業経験者の方とお話しする中で、その差は以前よりさらに広がっていると感じています。

実際、年収を大きく伸ばしながらキャリアアップしていく方もいれば、30代を前に「次のキャリアが見えない」と悩む方も少なくありません。

では、その違いはどこで生まれるのでしょうか。

結論から言えば、「商材を売ってきた人材」と「顧客課題を変えてきた人材」の差です。

「説明上手な営業」はAIとYouTubeに代替される時代へ

以前のIT営業の価値は、「情報格差」にありました。
顧客が知らない製品知識を、営業が提供する。その情報優位性そのものが価値だった時代です。

しかし現在、その構造は崩れています。

比較サイト、YouTube、ウェビナー、そして生成AIの普及によって、顧客は営業に会う前に、ある程度“答え”を持った状態で商談に入ってきます。

つまり今後淘汰されるのは、「製品を説明する営業」です。

なぜなら、“知識”はAIで代替できるからです。

一方で、代替されにくいのは、「顧客自身も言語化できていない課題」を見つけられる営業です。

例えば、

  • 本当のボトルネックは業務フローなのか
  • 現場定着を阻むキーパーソンは誰なのか
  • システム導入ではなく、評価制度に問題があるのではないか

こうした“組織の内部構造”まで踏み込める人材は、単なる営業ではなく、半分コンサルタントに近いです。

そして今後、IT営業の市場価値は、「どれだけ売れるか」ではなく、「どれだけ顧客変革に踏み込めるか」で決まっていくでしょう。

「営業力が高い人」より、“業界理解が深い人”が選ばれる時代 

今後、IT営業の市場価値を大きく左右するのが、「業界解像度」です。

現在は、

 ・製造業向け
・建設業向け
・医療機関向け
・金融向け

など、業界特有の業務フローに深く入り込んだVertical SaaSが急速に伸びています。

こうした領域では、単なる機能説明だけでは導入は進みません。

業務フロー、現場特有の慣習、意思決定構造まで理解した提案が求められます。

実際、エンタープライズ営業で評価される方ほど、「製品知識」以上に「業界の泥臭さ」を理解しています。

「マネジメント経験あり」だけでは、30代以降は評価されない 

30代前後のIT営業で非常によくあるのが、「マネジメント昇格=市場価値向上」だと思い込んでしまうケースです。

もちろん、組織マネジメント経験は重要です。

ただし、転職市場で本当に評価されるのは、“管理人数”ではありません。

見られているのは、

  • 売上構造をどう改善したか
  • 再現性ある営業組織を作れたか
  • 属人化をどう解消したか
  • IS〜FS〜CSをどう連携させたか

つまり、“事業を伸ばした経験”です。

実際、営業組織の管理だけを続けた結果、
「営業マネジメント経験が、他領域へ接続されにくい 」
という状態になってしまう方も少なくありません。

特にSaaS業界では、
営業活動を仕組み化・最適化する役割の重要性が急速に高まっています。

例えば、

  • 営業データを分析し、組織全体の成果を最大化する「RevOps」
  • 営業戦略やKPI設計を担う「営業企画」
  • 事業全体の成長戦略を考える「事業企画」

など、“営業をする側”ではなく、“営業組織を強くする側”の人材価値が上がっています。

背景には、SaaS企業の成長において、「個人の営業力」だけでは限界があるという考え方があります。
再現性のある営業プロセスを作れる人や、組織全体の売上を伸ばせる人材が、より評価されるようになってきているのです。

だからこそ30代前後では、
「管理職になるか」
だけではなく、

「自分は事業視点を持てているか」
「売れる仕組みを考えられているか」

を問い続けることが重要なのです。

今後のIT営業キャリアで重要なのは、“売上”だけではな

IT営業のキャリアパスは、以前よりも大きく広がっています。

例えば、

  • ITコンサル
  • BizDev(事業開発)
  • RevOps(Revenue Operations:営業・マーケティング・CSを横断して売上最大化を支援する役割) 
  • カスタマーサクセス責任者

など、営業経験を土台にしながら、より事業に近いポジションへ進む人も増えています。

これらの職種に共通して求められるのは、
「社内外のステークホルダーを巻き込みながら、複雑な課題を解決してきた経験」です。

もし今、
「自分は営業しかしてこなかったので…」
と不安に感じているなら、一度整理してみてください。

重要なのは、「何を売ったか」だけではありません。

  • 顧客の業務をどう変えたのか
  • 組織の成果をどう改善したのか
  • 周囲を巻き込みながら、どんな変化を生み出したのか

こうした“変革の経験”こそが、今後の市場価値を大きく左右していきます。

「何を売ったか」という実績は、時間とともに薄れていきます。
一方で、「何を変えたか」という経験は、5年後・10年後でも評価され続ける可能性があります。

IT業界が伸びる時代だからこそ、“どの領域で、どんな強みを築くか”によって、キャリアの差は大きく開いていくでしょう。