キャリアにおいて「ブランドカード」は通じるのか?

キャリアにおいて「ブランドカード」は通じるのか?

寄稿エージェント:枝野 陽

2019年3月のNIKKEI STYLEの記事によると、入社1~3年目で転職を検討している人は50%を越えているとの調査が出た。転職ありきでいわゆる「有名企業」に新卒で入社し、自分に合わなければ転職する、という考えの人が増えている。このようなキャリア戦略は正しいのだろうか。

今もなお「新卒純血主義」の企業は多い

新卒カードを使って、有名企業に入社することは悪いことではなく、むしろリスクが低い選択肢の1つと言える。日系大手企業はやはりまだまだ新卒一括採用の文化・新卒純血主義の企業が多く、中途採用をほとんど実施していない企業もある。

1社目から2社目に転職をする場合、大手企業からベンチャー企業のような規模の小さい企業に転職することはできても、ベンチャー企業から大手企業に転職するという「小⇒大」の転職は難しいというのが実態だ。

加えて、特に日系大手企業は新入社員への研修も手厚い。同じ部署の年次が上の先輩社員が指導員としてついてくれるケースが多く、「ブラザー」「シスター」「メンター」など呼び方は様々であるが、新入社員は困ったらすぐに指導員に聞ける環境にある。

また、集合研修や資格試験のサポートなどもあり、1年目の間は働いているものの、教えてもらえる時間・機会が多く、会社からの手厚いサポートを受けられ、いわゆる「ビジネス戦闘力」をまんべんなく底上げすることができる。

20代は自分が「何者」か語れるようにするべき

では、恵まれた環境であることが多いこのような有名企業出身であれば、転職もうまくいくのだろうか。

結論としては「ノー」である。20代は専門スキルを身に付け、自分は「○○」ができます、と他人に自分が「何者」か語れるようにするべきである。

ここでの専門スキルは職種という意味合いであり、他の会社でも通用するような汎用性のある専門スキルのことを指す。例えば、法人営業、個人営業、経理、マーケター、エンジニア、人事、法務などである

20代で専門スキルを身に付けたほうが良い理由を2つ挙げよう。まず、シンプルに若いうちは吸収が速い。特に20代前半はまだ仕事の型もできておらず、とにかくなんでもまっさらな状態で吸収できる時期である。

30代以降でも新しい知識の吸収が速い人はもちろんいるが、自分の中である程度の常識・考え方ができてしまっているので、20代前半の吸収率と比較するとスピードはケタ違いである。

次に、20代の有利な点として周りの人から教えてもらいやすい。一般的には目上の人に教えるのは気が引けてしまい、周りの人から教えるというアクションにつながりにくい。転職してきた年上の人に基本的なことを教えるのはなんだか気まずいという経験をしたことがある人もいるだろう。

20代の若手であれば、周りの先輩社員も「教えてあげよう」という気持ちになりやすく、部署やチーム単位で若手を育てようという文化・方針を取っている場合も多い。周りの人から自然と教えてもらえる時期というのは長いキャリアの中でかなり貴重な時期である。

転職では「ブランドカード」ではなく「スキルカード」で勝負

転職活動では経歴を確認されるため、在籍している企業が有名企業であれば、一定の能力はある人だと判断してもらえる場合もある。少なくとも新卒の就活時点では高い倍率を勝ち抜いて入社しているところは評価されるだろう。

しかし、その「ブランドカード」だけでは転職活動はうまくいかない。転職活動は職務経歴書や面接の中で、「あなたは何ができますか?」という問いに回答していかなければならず、有名企業に在籍している、というだけで面接を突破できるほど甘くはない。

20代の強みを十分に生かして、自分が「何者」であるか語れるように「スキルカード」をしっかりと手に入れて、自分は戦力として戦えることをアピールできることが転職活動では非常に重要である。

また、30代になると専門スキルに加えてマネジメントスキルも重要になってくる。マネジメント経験は専門スキルがある人に優先的に回ってくるものであり、30代で専門スキルの土台がないのはかなり苦しくなってくる。

このように転職ありきで1社目を選ぶ人が増えている中で、自分のキャリアをどのように積み上げていくのか、どのカードを獲得すべきか、そして使用するのか、というキャリアにおける戦略的思考が非常に重要になってきているのだ。