寄稿エージェント:上田 愛由美
はじめに
20代の営業職の方からキャリア相談を受ける中で、非常に多い質問があります。
「年収を上げたいのですが、どの業界に行くべきでしょうか?」
営業職は成果に応じて報酬が上がる職種ですが、
実際にはどの業界で営業をするかによって年収の伸び方は大きく変わります。
例えば、人材業界ではインセンティブ比率が高い企業が多く、成果に応じて年収が伸びる報酬体系を採用している企業が多くあります。
一方、SaaS業界は継続課金型のビジネスモデルで安定した売上構造を持つ企業が多く、
営業職の基本給が比較的高く設定されているケースがあります。
またコンサル業界では企業の経営課題を扱う高付加価値なサービスを提供するため、
業界全体の給与水準が高い傾向があります。
このように、業界ごとに年収が上がる仕組み自体が異なるため、
どの業界で経験を積むかはキャリアを考えるうえで非常に重要な要素になります。
本記事では、営業職のキャリア相談でもよく比較される
・人材業界
・SaaS業界
・コンサル業界
の3つの業界を取り上げ、それぞれの特徴と年収の伸び方について解説します。
営業職の年収はなぜ業界によって変わるのか
前提、営業職の年収は主に次の3つの要素によって決まります。
①扱うサービスの単価
②企業のビジネスモデル
③利益率
例えば、単価数万円のサービスと数千万円のサービスでは、企業の売上規模が大きく異なります。
また、企業の利益率が高いビジネスモデルであれば、営業への報酬として還元できる金額も大きくなります。
そのため、同じ営業職であっても業界によって平均年収には大きな差が生まれます。
営業として年収を伸ばしていくためには、営業力を磨くことだけでなく、どのようなビジネスモデルの業界で経験を積むかも重要になります。
では実際に、営業職のキャリアとしてよく比較される人材業界・SaaS業界・コンサル業界では、どのように年収の構造が異なるのでしょうか。
人材業界のキャリアと年収
人材業界は営業職としてキャリアをスタートする方が多い業界の一つです。
コロナ禍では企業の採用活動が一時的に停滞し、人材業界全体の市場も大きく影響を受けました。
しかし現在は企業の採用活動が再び活発化し、特にIT人材や専門人材を中心に人材不足が深刻化しています。その結果、企業は自社に合う人材をどのように採用するかという採用戦略の重要性をより強く意識するようになっています。
こうした企業の採用課題に対して、
・求人広告
・人材紹介
・採用コンサルティング
などのサービスを提案するのが人材業界の営業です。
人材業界の特徴は、成果報酬型のビジネスモデルを採用している企業が多いことです。営業成績に応じたインセンティブ制度が設計されている企業も多く、20代でも高年収を実現するケースがあります。
一方で、サービス単価や企業の利益構造によっては年収レンジが一定水準に収まりやすいケースもあります。そのためキャリア相談の中では、人材業界で営業経験を積んだ方から
「営業力は身についたが、年収をさらに伸ばすキャリアを考えたい」
という相談を受けることがあります。
実際に、人材業界から次のキャリアとして検討されることが多いのが、SaaS業界やコンサル業界です。
SaaS業界のキャリアと年収
SaaS(Software as a Service)とは、クラウド型ソフトウェアを提供するビジネスモデルです。企業の業務効率化やDXを支援するサービスが多く、これまで市場は急速に拡大してきました。
SaaS企業の特徴は
・サブスクリプション型の収益モデル
・比較的高い利益率
・市場成長による売上拡大
という点です。
サブスクリプション型のビジネスでは、顧客がサービスを利用し続ける限り売上が積み上がるため、企業の収益構造が安定しやすい特徴があります。
そのため、営業職の給与水準も比較的高く設定されている企業が多く見られます。
転職市場でも、20代後半のSaaS営業の年収レンジは600〜800万円程度になる企業が多く、
人材業界やメーカー営業から転職するケースも増えています。
一方で近年は、AIの進化によってSaaS業界の見られ方にも変化が生まれています。
これまでSaaSは高い成長率を背景に市場から評価されてきましたが、現在は単に機能を提供するだけでなく、顧客の業務データをどれだけ蓄積し活用できるプロダクトなのか、また特定の業務領域にどれだけ深く入り込めているサービスなのか、などといった点がより重要視されるようになっています。
そのため、SaaS業界への転職を検討する際にも、単に「大手企業であるか」ではなく、「スイッチされにくい構造を持つ会社か」という観点で企業を見ることが重要になります。
コンサル業界のキャリアと年収
コンサルティング業界は、企業のDX推進やAI活用の広がりを背景に、近年さらに需要が高まっている領域の一つです。
これまでコンサルティングは一部の専門的な領域の仕事というイメージを持たれることもありましたが、現在は企業の業務改革やデジタル化など幅広いテーマでコンサルティングのニーズが拡大しています。
コンサルティングの仕事は、企業の経営課題や業務課題の解決を支援することです。
具体的には、
・経営戦略の立案
・業務改善
・DX推進
などのテーマでプロジェクトを進めます。
提供するサービスの付加価値が高いことから、コンサル業界は年収水準も比較的高い傾向があります。
企業によって差はありますが、20代後半でも700〜1000万円以上を目指せるケースがあります。
その一方で、コンサル業界では「論理的思考力」「問題解決力」「業務理解」などの能力が求められます。
営業経験の中でも「法人営業」「提案型営業」「プロジェクト型業務」などの経験がある方は、コンサル転職の可能性が広がります。
コンサル業界への転職を検討する際には、どの業界や領域の課題を扱っているのか、またどのような専門性を身につけられる環境なのかといった観点で企業を見ることが重要になります。
3つの業界の特徴
ここまで紹介した3つの業界を整理すると次のようになります。
■人材業界
・営業力を磨きやすい
・成果次第で年収を伸ばせる
■SaaS業界
・成長市場
・営業の給与水準が高い
■コンサル業界
・高付加価値ビジネス
・年収水準が高い
このように、同じ営業職であっても業界ごとに年収が上がる仕組みは大きく異なります。
そのため、営業として年収を伸ばしていくためには、単に営業力を高めるだけではなく、
どのような業界でどのような経験を積むかを考えることが重要になります。
営業職として年収を伸ばしている方には、いくつか共通する経験があります。
例えば
・法人営業として経営層に提案した経験
・顧客課題を整理し、解決策を提案するコンサルティング型営業
・複数の関係者を巻き込むプロジェクト型の営業経験
といった経験です。
これらの経験は、SaaS企業やコンサルティングファームなどでも評価されやすく、キャリアの選択肢を広げることにつながります。
まとめ
20代営業が年収を伸ばしていくためには
・業界選択
・ビジネスモデル
・経験の積み方
が大きく影響します。
本記事で紹介した人材業界・SaaS業界・コンサル業界は、いずれも営業経験を活かしながら年収を伸ばせる可能性のあるキャリアですが、それぞれ特徴が異なります。
人材業界は成果に応じて年収が伸びやすいインセンティブ型の報酬制度を採用している企業が多く、営業としての基礎力を磨きたい方や成果に応じて報酬を得たい方に向いている業界です。
SaaS業界は継続課金型のビジネスモデルにより比較的高い給与水準が設定されている企業が多く、顧客の課題を理解しながら提案を行う課題解決型の営業を経験したい方に適しているキャリアといえます。
コンサル業界は企業の経営課題を扱う高付加価値なサービスを提供するため、業界全体の年収水準が高い傾向があります。論理的思考力や問題解決力を活かしながら、企業の経営や事業に深く関わる仕事に挑戦したい方に向いているキャリアです。
このように、同じ営業職であっても業界によって年収の伸び方や求められる能力は異なります。
そのため、自身の経験や強み、どのような仕事にやりがいを感じるのかといった志向を踏まえながら、
どの業界でどのような経験を積むのかを考えてキャリアを設計することが重要になります。