寄稿エージェント:知念 辰樹
経営企画、事業企画、新規事業企画など、いわゆる「企画職」とは、事業や組織の課題を構造化し、意思決定を支え、実行を前に進める役割を担う仕事です。
単なる資料作成ではなく、経営と現場の間に立ち、方向性を形にしていくことが求められるため、会社の中でも花形とされることが多い一方で、転職市場においては「即戦力として活躍を期待できる経験者」のみが評価される狭き門となっています。
事業会社の企画職には優秀な方が多く存在しますが、それでも、転職市場で評価が伸び続ける人と、「今の会社では重宝されているが、外では通用しにくい人」に分かれてしまうのが現実です。
実際に企画職としてキャリアを積む中で、多くの方が直面するのが、
「このまま社内でキャリアを伸ばすべきか、それとも一度外部経験を挟むべきか」
という選択です。私はこれまで多くの経営企画・事業企画経験者を支援してきましたが、キャリアの伸び方には明確な違いがあります。
企画職のまま伸びる人の特徴
企画職として社内でそのまま成長していく方には共通点があります。
第一に、社内裁量や意思決定経験を十分に得られる環境にいること。
経営層との距離が近く、重要な戦略や意思決定に関われる人は、社内で高く評価されます。
第二に、実行力を社内で認められていること。
企画を描くだけでなく、プロジェクトを前に進め、結果を出してきた実績がある人です。
第三に、ドメイン特化で深い専門性を持っていること。
特定事業・業界における専門家としての立ち位置を確立できているケースです。
こうした条件が揃えば、企画職のままでも十分にキャリアを伸ばすことは可能です。
ただし、残念ながらすべての人がこの環境に恵まれるわけではありません。
特に社内での裁量や意思決定経験が限られる大手企業の企画職や、資料作成や報告業務が大半を占める20代若手層の場合は、企画職といえども市場での評価が高まりにくいのが実情です。
企画職の評価軸 ―「社内」か「市場」か
市場での評価が得られずに「社内専用人材」になってしまう企画職の多くは、
無意識のうちに評価軸が「社内」に固定されています。
「上司にどう評価されるか」、「社内でどう見られるか」。
それ自体は重要ですが、それだけを基準にキャリアを積むと、市場とのズレが生じます。
一方、評価され続ける企画職の人は、
「この経験は社外でどう見られるか」、「別の会社でも再現できるか」、
という視点を持っています。
この差が、数年後に大きなキャリア格差を生みます。
企画職の市場価値を高めるための戦略的転職
こうした背景の中で、近年は戦略的なキャリアステップとして一度コンサルを経由した後、事業会社の企画職に再度参画するケースが増えています。
一見コンサルを挟んで企画職に戻るという選択肢は遠回りに見えますが、企業側の目線を踏まえると、コンサル経験が企画職のキャリアアップにつながる理由は明確です。
<コンサル経験で得られる3つのメリット>
①論点整理、関係者調整、立て直しなどの汎用的な実行力を体系的に鍛えられる
②複数企業の経営層と向き合い、意思決定に直接関与する経験を積める
③業界・企業を横断した経験により、キャリアの再現性と柔軟性が高まる
企業側が「コンサル経験」を高く評価するのは、この点にあります。
事業会社の人事や経営層からすると、
「即戦力としてプロジェクトを任せられるか」
「意思決定層との議論経験があり、実行まで落とせるか」
「特定の会社や業界に限定することなく、異なる環境でも通用するか」
この3つを高い基準で備えている人材を採用したいという意図があり、
コンサル経験者は企画職と親和性の高い経験を積んでいることが多いのです。
実際に、ある大手事業会社の事業企画出身者は、
「社内調整や資料作成は評価されるが、経営判断に深く関われない」
という課題感からコンサルへ転職しました。
目的は年収ではなく、社内では部長や責任者相当の役職に就かないと得られない
「意思決定に直結する実行経験を取りに行くこと」。
結果として、複数業界の事業戦略策定や事業ポートフォリオの立て直し経験を積んだ後、
積み重ねてきた案件と近しい領域の事業会社に即戦力として参画し、以前より広い裁量と高年収を実現しています。
キャリア選択の考え方
とはいえ、重要なのは、企画職かコンサルかという二択ではありません。
「自分の経験が、社内評価に閉じていないか、市場で通用する形になっているか」
を見極めることです。
社内で十分に成長できる環境にいるなら、その道を進むのは合理的です。
一方で、経験の幅や再現性に限界を感じる場合、コンサル経験はキャリアの幅を広げる
「一つの手段」になり得ます。
キャリアは肩書きではなく、積み上げた経験の質で決まります。
その整理と設計を、必要なタイミングで行うことが何より重要です。