IT業界で“年収600万円の壁”を超えられない人の共通点─スキルの深さではなく「構造理解」が報酬を変える

IT業界で“年収600万円の壁”を超えられない人の共通点─スキルの深さではなく「構造理解」が報酬を変える

寄稿エージェント:村松 歩

「今の会社ではもう上がりきっている気がする」「次は700万を目指したい」。 IT業界出身者との面談で最も多い相談の一つが、この“600万円の壁”です。 開発・セールス・コンサル・CS──職種を問わず、30歳前後でぶつかるこの水準には共通の理由があります。 それは、スキルの深さではなく“構造理解の浅さ”です。

評価の構造を知らずに努力しても、報酬は上がらない

多くの方が「スキルを磨けば報酬が上がる」と考えます。
しかし実際には、会社が評価するのは“スキルの深さ”ではなく、
「スキルを事業成果に変えられる構造」への貢献度です。

たとえば、
・SaaS企業では「ARR(年間経常収益)」にどう影響を与えたか
・ITコンサルでは「顧客単価」や「プロジェクト粗利」をどう改善したか
・エンジニアであれば「開発効率」や「運用コスト削減」にどう寄与したか

この“構造への理解”がないまま、「自分は頑張っているのに評価されない」と感じるケースは少なくありません。
スキルがあっても、経営視点での翻訳力がなければ、報酬には反映されにくいのです。

年収が伸び悩む人の3つの共通点

私が支援してきたIT人材の中で、年収600万円前後で停滞する人には、次の3つの特徴が見られます。

  1. 成果が“再現性”ではなく“個人技”に依存している
     属人的な努力や顧客関係に頼る形では、再現性のある価値として認められません。
     企業が高く評価するのは、「仕組みで成果を出せる人」です。
  2. “役割の幅”を広げる意識が薄い
     個人目標の達成に留まり、隣の工程(企画・CS・分析など)に関与しない。
     年収の上限は、役割の幅に比例します。
  3. 事業構造を理解していない
     自分の業務がどの収益ドライバーに紐づいているのかを把握していない。
     事業構造の理解が浅いと、経営目線での提案ができず評価が止まります。

年収を上げる人が実践している“視点の転換”

年収を上げている人ほど、**「何をするか」より「どこに効かせるか」**を意識しています。
同じ提案書をつくるにしても、「顧客満足のため」ではなく、
「LTVを上げるため」「チャーンを下げるため」と語れる人は、報酬テーブルが変わります。

市場では、スキルよりも**“経営視点で自分の仕事を説明できる人”**が上位層に上がっていく。
これは現場での地道な改善を軽視するという意味ではなく、
“自分の業務をどの構造に貢献させているのか”を理解する力が差を生むということです。

まとめ:年収を上げるとは、「スキルを磨く」ではなく「価値を再定義する」こと

年収600万円の壁を超えるには、スキルを積み上げるだけでは足りません。
自分の仕事の意味を、事業構造の言葉で再定義すること。
それができる人は、どんな組織に行っても評価され、報酬も上がります。

キャリア相談の現場では、そうした“構造の翻訳”を一緒に整理することで、
「自分がどう価値を出してきたか」が言語化され、次のステージに繋がるケースが多くあります。
年収を上げたいなら、まず“スキルの外側”を見てみてください。
報酬は、努力ではなく“構造理解”が決めています。