寄稿エージェント:出口 航季
「向いてる仕事がわからない」「今の仕事が自分に合っているのか分からない」──
キャリア相談の現場で最も多く聞く言葉のひとつです。特に20代後半から30代前半の営業職・販売職の方に多く見られます。
社会人経験を積む中で、「できること」と「やりたいこと」のズレが生じ、何を軸に次を選べばいいか分からなくなるのです。
しかし、この“キャリア迷子”状態には、ある共通した「罠」があります。
罠①:「自己分析の沼」にハマる
多くの人が「向いている仕事を知るには、まず自己分析」と考えます。
たしかに、自分の価値観や得意不得意を知ることは大切です。
しかし、ここでよくある誤解が、「自分の好きなこと=向いている仕事」と思い込むこと。
キャリア支援の現場で見ていると、“好き”や“得意”だけで仕事を選んでも、長く続かないケースが多いです。
なぜなら、キャリアには“市場性”という第三の要素があるからです。
どれだけ自分に合っていても、市場が求めていなければ評価も報酬も上がらず、やがてモチベーションが続かなくなります。
罠②:「転職すれば解決する」と思い込む
もう一つ多いのが、「向いてる仕事がわからないから、とりあえず転職してみよう」というパターンです。
ただ、環境を変えても「なぜ今の仕事が合わないのか」を整理できていなければ、同じ壁にぶつかります。
実際に、複数回転職しても満足感を得られない人の多くが、この“原因の未整理”状態にあります。キャリアは「選び方」で決まります。
次に進む前に、自分のキャリア課題が「環境の問題」なのか、「自分の方向性の問題」なのかを見極めることが何より大切です。
唯一の方法:「市場」と「自分」を掛け合わせて考える
キャリア迷子から抜け出す唯一の方法は、自己理解と市場理解を掛け合わせて考えることです。
自己理解だけでは「自分の理想」に寄りすぎ、
市場理解だけでは「企業都合」に偏ってしまう。
両者を重ね合わせた“交点”にこそ、あなたのキャリアの最適解があります。
たとえば営業職であれば、「自分は人との関係構築が得意」という強みを、市場の伸びているSaaSや人材、金融といった業界の“営業モデル”と照らし合わせてみる。
そのとき初めて、「自分が活かせる場所」が見えてきます。
最後に:キャリアは「探す」より「設計する」もの
向いている仕事は、探して見つかるものではありません。
経験を積みながら、方向性を“設計していく”ものです。
大切なのは、過去の選択を否定することではなく、次の選択に活かすために“意味づけ”を変えること。
キャリア支援の現場で、多くの方が「正しい軸を持てた瞬間」に表情が変わります。
迷いが消え、言葉が前向きになり、次に進む覚悟が生まれるのです。
もし今、「自分に向いてる仕事がわからない」と感じているなら──
まずは、自分の強み・価値観・市場の3点を一緒に整理してみましょう。
キャリアは、誰かに決められるものではなく、自分で“育てていく”ものです。