大手SIerを目指すSE若手が必ず準備すべき”3つの武器”

大手SIerを目指すSE若手が必ず準備すべき”3つの武器”

寄稿エージェント:樫木 宏太

ここ数年、20代のシステムエンジニア(以降、「SE」と略す)から「大手SIerでプロジェクトマネージャー(以降、「PM」と略す)を目指したい」というご相談を数多くいただきます。背景には、より上流の工程に携わりたい、裁量の大きな案件に挑戦したい、という強いニーズがあります。
しかし転職市場では、SESやSIer出身の若手は「担当領域が狭い」と見られやすい傾向があります。これらをどう克服し、大手SIerに評価される人材になるのか。その答えの“3つの武器”を整理して、解説していきます。

キャリアアップのために必要なスキルセット(=3つの武器)

武器①:要件定義力

大手SIerでは「作れる人」より「定義できる人」が評価されます。顧客の要望を正確にヒアリングし、それをシステム仕様に落とし込む力がなければ、高い技術力を持っていても上流工程で活躍することは難しいです。

  1. 業務理解力:システム開発の背景や業務フロー全体を把握する力です。顧客と直接話す機会が少なくとも、テスト仕様書や設計書をレビューしたり、上流工程の背景を意識して読み解くことで養えます。具体的には、テスト仕様書や設計書をレビューしたり、上流から降りてくる指示の背景を「なぜこの要件が必要なのか」と意識して読み解いたりすることで、業務理解を深めることができます。例えば「なぜこのチェック機能が必須なのか」「この入力項目はどの業務に使われるのか」を掘り下げて考えるだけでも、業務フローを把握する力が鍛えられます。
  2. 要件を仕様に落とす力:顧客の要望は抽象的なことが多く、そのままでは開発に落とし込めないため、業務理解をもとに要望を具体的な仕様に変換する能力が問われます。議事録作成や課題整理の際に「この要望は何を実現したいのか」「必須条件と任意条件は何か」「他機能との矛盾はないか」を意識して整理することで、日常業務で鍛えることができます。また、テスト仕様書や設計書をレビューする際に「顧客の意図と仕様が合致しているか」を考え、必要に応じて改善案を提示するプロセスも、面接では評価されます。

武器②:マネジメントの素地

プロジェクトを円滑に推進する力も、大手SIerでは評価されます。大手SIerは数十名規模の案件を担うことが多く、タスク管理や進捗把握、調整力は重宝されます。

  1. 課題解決力:発生した問題を正しく把握し、実行可能な解決策に落とし込める力です。具体的には、進捗遅延や障害などの課題を構造化して優先順位を整理し、誰が何をいつまでに行うかを明確にして改善策を実行する経験です。また、複数のステークホルダーの意見を調整し、最適な解決策を導くリーダーシップは、選考でも聞かれることがあるので、事前にエピソードを用意しておきましょう。
  2. 品質管理の視座:システムやプロジェクト全体の品質を意識して改善策を実行することも評価されるケースがあります。具体的には、テスト工程の設計・実施や不具合の傾向分析、再発防止策の提案、手順書や仕様書の整備などです。単に問題を指摘するだけでなく、チーム全体の作業品質を一定に保つための仕組み作りや改善策を実行できることは、マネジメント力として非常に重要です。

武器③:技術トレンド対応力

近年の大手SIer案件ではクラウドやモダナイゼーションが前提になりつつある一方で、その人材確保に苦労しているポジションも多く存在します。そのため、モダンな技術の実務経験がなくとも、「経験を活かしてどう貢献できるか」を語れると、より評価に繋がりやすい傾向があります。

  1. モダンな技術の理解:例えば、オンプレ環境での設計・運用経験がある方は、「クラウド環境に応用できる力」として語ることが効果的です。具体的には「物理サーバーの冗長化設計経験を、クラウドの高可用性設計にどう転用できるか」を具体的に語るなどすると、評価に繋がるケースもあります。
  2. キャッチアップ力:そもそも環境に触れる機会が少ない方は、資格取得や自宅環境でのハンズオン、社内の小規模PoCに手を挙げるなどの工夫に取り組んでみてください。限られた環境の中でもキャッチアップを続ける姿勢そのものが、転職市場では大きな強みとなります。

転職を成功させるステップ

転職成功には段階的な準備が必要です。

  1. 棚卸し:「PJにおける主体性の発揮の仕方」、「PJや顧客にどう価値を提供したか」を整理。
  2. 不足補強:外部研修や資格取得、社内プロジェクトを活用してスキルを強化。
  3. タイミング:20代後半までに「プロジェクトマネジメント」や「基本設計より上流工程」の経験を積んでおくと、大手SIerでの評価が格段に高まります。

実際の転職事例から学ぶ

  1. SES出身(27歳):運用保守のリーダー経験や開発チームとの折衝経験を評価。加えて、基本技術者検定やAWSの資格取得などにも励んでいたため、業務姿勢を含むポテンシャルと基礎スキルを総合的に評価されました。実際の選考の中でも、「保守業務内での開発担当者とのコミュニケーションの仕方」や「マネジメント業務での工夫」をアピールできたことがご内定に繋がった事例です。大手SIerに転職後は基盤運用の企画・推進をご担当されています。
  2. SIer出身(25歳):金融業界向けの基本設計~保守業務を経験。プライムベンダーとのコミュニケーションから体系的なシステム開発の流れを理解していることと、若手ながら設計や開発経験を有していたことが評価されました。選考の中では、ユーザーとの折衝経験はなかったものの「PMとのコミュニケーションでの工夫点」をしっかりとアピールできたことがご内定に繋がりました。大手SIerに転職後はPM補佐としてご活躍をされております。

事例が示す通り、出身に関係なく、20代のうちにどのような経験を積み、どのように強みとして言語化するかがキャリア成功のカギです。

まとめ

SES出身でもSIer出身でも、大手SIerを目指す若手SEが揃えるべきは「要件定義力」「マネジメントの素地」「技術トレンド対応力」の3つの武器です。これらを意識的に準備し、戦略的なタイミングで動くことが転職成功のカギとなります。

転職支援を行う中で、大手SIerの業務内容を意識し、必要なスキルを戦略的に身につけてきたエンジニアほど、確実にキャリアアップに成功しています。
この記事が、次のキャリアステップを目指す皆さんにとって、準備や方向性を整理するきっかけになれば幸いです。