20代エンジニアのキャリア分岐点 ― 技術スペシャリストか、マネジメントか

20代エンジニアのキャリア分岐点 ― 技術スペシャリストか、マネジメントか

寄稿エージェント:水谷 亮太

キャリアの岐路に立つ20代エンジニア

ITエンジニアとしてキャリアを歩む中で、多くの方が20代半ばから後半にかけて「技術スペシャリストとして腕を磨くのか」「マネジメントを志向するのか」という分岐点に直面します。私自身、数多くの若手エンジニアの転職支援に携わる中で、スペシャリストとしてキャリアを歩むのか、もしくはマネジメントをする立場に回るのか、どちらを選択するのかによってその後のキャリアに大きな影響を与えることを痛感しています。

一般的にキャリアの分岐点が訪れるのは、大手SIerやWeb系企業で数年経験を積んだエンジニアが、リーダーやサブマネージャーの役割を任され始める時期です。プロジェクト規模が拡大し、メンバーを束ねる機会が増えると、技術一本でいくのか、組織を率いる方向に進むのか、選択を迫られます。

適性と強みをどう見極めるか

ここで重要なのは「どちらを選ぶか」ではなく、「自分がどちらに適性を持ち、どちらに強みを発揮できるか」を見極めることです。

スペシャリスト志向の方は、特定の技術領域で深い知見を築き、業界全体に求められる人材へと成長していきます。生成AIやクラウドネイティブ、セキュリティといった分野は今後も市場ニーズが高く、20代から技術を積み上げる価値は非常に大きいといえます。

一方、マネジメント志向の方は、早期にリーダー経験を重ねることで、30代以降に大規模な組織運営や事業責任を担うキャリアが開けます。IT投資が経営課題の中心となっている今、エンジニアリングバックグラウンドを持つマネージャーは、経営層からの期待も高いポジションです。

キャリア相談の現場でよく耳にするのは「まだ自分はマネジメントに向いていないのでは」という声です。しかし実際には、マネジメントの適性はやってみなければ分からない部分が大きいです。逆に「技術を極めたい」と思っていても、企業によってはリーダー職を経験していなければ上流に進めない場合も少なくありません。ですから、分岐点は「自ら決断するもの」であると同時に「環境から与えられるもの」でもあるのです。

実例から学ぶキャリアの選択肢

私が支援したある20代後半のエンジニアの方は、当初「技術を突き詰めたい」と考えていました。しかし現職でマネジメントの役割を担ったことで意外な適性が見え、最終的にスタートアップのVPoEに挑戦しました。逆に、早期にリーダーを経験したものの「自分は現場技術の方がやりがいを感じる」と気づき、外資系クラウドベンダーでスペシャリストとして年収を大きく伸ばした方もいます。どちらの選択も正解であり、重要なのは自分のキャリアゴールに照らして判断することです。

迷いを成長につなげるために

キャリアの分岐点は、迷いが生じるタイミングでもあります。その迷いは自然なことであり、むしろ真剣に考えている証拠です。ただし、独りで考え込むと「どちらが正しいか」という二択に縛られてしまいがちです。大切なのは、自分の強み・市場価値・ライフプランを照らし合わせながら、中長期的な視点で選択すること。私たちは、その意思決定を支える情報や経験知を持っています。

もし今、キャリアの分岐点に立っていると感じているなら、一度専門のエージェントに相談してみてください。親身に話を伺いながらも、客観的な市場の視点で伴走できる存在が、キャリアの選択肢を広げてくれるはずです。