寄稿エージェント:江城 天陽
「自分のキャリア、この先どう評価されるんだろうか?」
事業会社で人事として経験を積んできた方や、人材業界で採用支援をしてきた方から、頻繁にいただく相談のひとつです。人事という職種は企業の成長に不可欠でありながら、評価軸が曖昧で、転職市場での価値が見えにくいポジションでもあります。
この記事では、私がこれまでハイクラス人事職の転職を支援してきた経験をもとに、「業界別」「年収帯別」に人事職がどのように評価されているのかを解説します。キャリアを見直す際の一助となれば幸いです。
業界と企業フェーズごとに見る人事職の評価傾向
まず、業界によって人事に求められる視点や評価ポイントは大きく異なります。
スタートアップ・ベンチャー企業では、「採用広報」「制度設計」「カルチャー醸成」のようなゼロイチの経験が高く評価されます。特にシリーズB〜C以降は、急成長に耐えうる“組織を創る力”が求められ、制度・採用・労務などを横断的にリードできる人材が重宝されます。だからこそ、現職での制度構築やカルチャー施策の主導経験がある場合は、具体的に言語化しておくことが、ネクストキャリアを切り開く鍵になります。まだ携わっていない場合は、「横断経験」を積める部署やプロジェクトへのアサインを希望して動くことが効果的です。
一方、大手事業会社(メーカー・金融など)では、労務・制度・人事企画の深い専門性が求められる傾向があります。「人事部門の一機能を担ってきた」だけでは選考通過が難しく、異動や制度変更などの“変革局面”にどう関与したかが見られます。そのため、制度改定やM&A、統合プロジェクトなどの「非日常業務」への関与を積極的に取りにいく姿勢が重要です。「どのような背景で、どの利害関係者と、どんな成果を出したか」をセットで語れるようにしておきましょう。
人材業界(RPOや人材紹介など)出身者は、「採用のプロ」として特定業務に強い一方で、「事業会社の一員としての視座」が足りないと見なされがちです。KPI達成や運用改善の経験を、「どんな事業課題と結びつけていたか」に言語化できるかが鍵となります。そのため、成果が「顧客事業にどう貢献したか」「どのフェーズの課題を解決したか」をストーリーで語れるよう準備しておくことが非常に重要です。現職で担当しているクライアントのビジネスモデルや成長戦略を深く理解し、採用の上流に関わる機会を得ることを意識しましょう。
そしてSaaS・IT企業では、「変化適応力」「採用マーケ」「定量的な組織改善」に長けた人事が評価されます。プロダクトと並走し、データドリブンに組織を拡大させることができるかが選考通過の分水嶺です。採用チャネル改善・エンゲージメント向上施策・データ活用による課題発見といった「仮説検証型」のアプローチをどれだけ回してきたかが武器になります。
年収帯別に見る「求められる役割」の違い
次に、年収帯別に人事に求められる役割を整理してみましょう。
- ~600万円:プレイヤー層
採用・労務・研修などの実務を高い精度で遂行できるかが評価ポイント。特に他者との分業体制の中で「自律的に動けるか」が見られます。 - 600~900万円:プレイングマネージャー層
実務だけでなく、チームマネジメントや改善提案が求められます。「再現性のある仕組み」を自らつくった経験があるかどうかが、評価を左右します。
- 1000万円~:CHRO候補層
経営と人事をどう接続するかが問われます。「戦略人事」「事業理解」「人と組織の変革経験」がキーワード。単なる制度運用ではなく、「何のために人事をやっていたのか」が明確である必要があります。
キャリアを見直す際の視点とは?
業界と年収帯、この2軸で整理するだけでも、キャリアの棚卸しがしやすくなります。「どのフェーズの組織で、何を目的に、どんな影響を与えてきたか」を言語化することが、ハイクラス転職では特に重要です。
市場での評価に自信が持てない方こそ、プロとの対話を通じてご自身の経験を可視化してみてください。「自分では普通と思っていた経験が、実は市場価値が高かった」というケースは少なくありません。
人事として、次のキャリアに一歩踏み出すための参考になれば幸いです。もし、自分の市場価値を具体的に知りたいと感じた方は、ぜひ一度ご相談ください。プロとして戦略的にご支援させていただきます。