“顧客体験のプロ”がキャリアの武器になる|D2Cブランドで評価される販売出身者のスキルとは

“顧客体験のプロ”がキャリアの武器になる|D2Cブランドで評価される販売出身者のスキルとは

寄稿エージェント:川北 華鈴

はじめに:販売出身者の強みが評価される新たな舞台

かつて「販売職」は、現場で顧客と向き合いながらも、キャリアの選択肢が限られがちな職種とされてきた。しかし近年、D2C(Direct to Consumer)ブランドの台頭により、販売現場で磨かれたスキルは、ブランド価値の体現者として、なくてはならない戦力に変わりつつある。

特に販売出身者が「CX(カスタマーエクスペリエンス)」や「コミュニティマネージャー」といったポジションで高く評価され、年収アップを実現する事例が増えてきている。

例えば、アパレル販売員として5年以上の現場経験を持つ30代の方が、ナチュラル系コスメのD2Cブランドにて「カスタマーリレーションズマネージャー」として年収120万円アップで転職を成功させた。

上記のように、販売出身者でも「顧客と向き合ってきた経験」をキャリアの武器として、ブランドマーケティングや企画、サービス作りに関わっていくことができる。

そのために、現場で培ったスキルをきちんと整理・言語化し、自信をもって発信することが重要になる。

D2Cブランドが求めるスキル

「顧客インサイトの現場感覚」

実際に店頭で顧客と対話し、言語化されないニーズをすくい上げてきた経験は、データでは掴みきれない“本質的な顧客理解”に繋がり、マーケティングやプロダクト開発においても重宝される。


「リアルとデジタルをつなぐ接客体験」

オンラインとオフラインを行き来する顧客の体験を設計するには、現場で得た“肌感”が不可欠。実店舗での接客が、EC体験の改善にも応用される場面は多い。


「ブランド体現者」としての高い共感力と責任感

自社の世界観を理解し、言葉やふるまいで体現してきた共感力や責任感は、CXやブランドコミュニケーションを担う上でも大きな武器になる。

転職成功のカギ:現場経験を“ビジネススキル”として翻訳する

履歴書・職務経歴書

「単に販売経験がある」ではなく、“顧客体験のプロ”としてどのように顧客と向き合ってきたかを言語化することが鍵となる。職務経歴書では、売上や顧客満足度だけでなく、「どう顧客行動を変えたか」「ブランド価値をどう伝えたか」などを数字や具体エピソードで示すことが重要。

【NG例:ただの「接客・売上・店舗運営」】

・接客業務を中心に、販売やレジ対応を行う  

・月間売上ノルマを達成  

・店舗レイアウトや在庫管理も担当

【OK例:「顧客インサイト」や「体験設計」の視点を加える】

・月間1,000人超の顧客対応を通じて、年齢・属性ごとの購買傾向や離脱要因を分析。改善案を提案し、リピート率を15%向上  

・SNS上の口コミやECレビューを元に、リアル店舗でのUX改善を実施。顧客体験の一貫性に貢献  

・自社のブランドコンセプトを深く理解し、体験価値として表現する接客を実践。社内CS調査で半年連続トップ評価

販売職の実績を、マーケティング感覚・顧客理解力・ブランド体現力といったビジネスコンピテンシーに変換して書くことがポイントになる。

 面接で意識すべきポイント

① 「なぜ販売経験がビジネスに通じるのか」を語ることができるか

「なぜそれがD2CブランドのCXやマーケティングに活きるのか?」という視点で答えられることが重要。例えば、「現場で得たリアルな顧客の声をどう活用したか」を具体的な改善施策とともに話せると評価されやすい。

② 「再現性」を持たせる

単なる成功談で終わらせず、「なぜうまくいったのか」「自分のどんな思考プロセスによるものだったのか」を伝えること。面接官が見ているのは「入社をした後に活躍できそうか」である。

③ 「数値と構造」で語る

数値で成果を語り、どんな課題に対し、どんなアクションを取り、どんな成果につながったかを、構造立てて説明する。STARフレーム(Situation / Task / Action / Result)で伝えることがポイントになる。

終わりに:

販売出身者がD2Cブランドの「ブランド価値の体現者」として年収アップの転職を実現させるチャンスは十分に存在する。

まずは、顧客体験のプロとして伸ばしてきたスキルや強みが何かを棚卸しして言語化し、次にキャリア戦略を練る。理想の将来像を実現するためには、足元の転職をゴールとするのではなく、正しいキャリア戦略とひたむきな努力が鍵となるだろう。

現場で培ったスキルの整理や言語化、次のキャリアを築くためのサポートを、私たちは全力で行っている。