寄稿エージェント:南 浩市
SaaS業界でトップセールスとして活躍されている方の多くが、次のステップとして「事業開発」ポジションを志望されます。SaaSという成長領域で実績を積んだ営業経験者は、企業からも市場からも高く評価されやすいのが現状です。しかし実際には、書類選考は通るのに面接で評価が伸びない、あるいは入社後に「思っていた業務と違った」と戸惑う方が少なくありません。
私自身、これまで数多くのトップセールスの方々を事業開発へのキャリアチェンジで支援してきました。その中で、特に大きな落とし穴は主に3つに集約されます。
営業スキルと事業開発スキルは別物
まず多いのは、営業と事業開発を同一線上で考えてしまうケースです。営業職は既に作られた商品・サービスをどう売るかが主眼ですが、事業開発はそもそも「何を、誰に、どのように提供するか」を考え、仕組みをゼロから作り、社内外の関係者を巻き込みながら形にしていく役割です。いわば営業の「前工程」であり、必要とされるのは論理性と構想力、そして社内外の調整力です。面接でも「顧客を口説く力」だけでは評価が割れるのはこのためです。
社内調整力・企画力を甘く見る
次に多いのは、「数字を作るのは得意だから、あとは何とかなる」という過信です。事業開発では、営業現場とは異なり、相手は社内の経営層、他部署、時には外部パートナーです。相手の利害を調整しながら、新しい収益モデルや提携スキームを形にする能力が不可欠です。ここを過小評価していると、配属後に上司から「君は提案力はあるが、社内を動かせない」と指摘されてしまうことが多いです。
KPIが不明確な状況に耐えられない
最後に意外と見落とされがちなのが、KPIの不在です。営業職は明確な受注目標があり、頑張れば結果が見える環境です。しかし事業開発は「成果が見えにくい」「正解がない」仕事です。短期で成果が出ないと不安になり、結局「営業に戻りたい」と感じる方も少なくありません。
では、どうすればよいか?
私がこれまでご支援した方の中には、現職で小さくてもいいので、「新規プロジェクトの立ち上げ」や「社内横断のアライアンス業務」を経験し、面接でもそのプロセスを論理的に語れるように準備したことで、希望のポジションに進まれた方が多くいらっしゃいます。
また、面接では営業成績だけでなく、「どのように関係者を巻き込み、課題を構造化したのか」という過程を整理して話せることが重要です。これができる方は、選考官から「この人は営業だけではなく、再現性のある課題解決力がある」と評価されます。
まとめ
トップセールスとしての経験は、事業開発に挑戦する際の大きな武器です。ただし、活かし方を間違えると、せっかくの市場価値を損ねてしまう可能性もあります。だからこそ、転職活動では「どう活かすか」「どこを補うか」を冷静に整理することが大切です。
もし、どのように準備すべきか迷われている方がいれば、ぜひ一度お気軽にご相談ください。営業・事業開発両面に精通したプロとして、あなたの可能性を最大化できるお手伝いをさせていただきます。