寄稿エージェント:龍崎 優磨
転職することが一般的になりつつあり、自分の将来、キャリアについて考え、悩むことは誰しもがあることだと思う。ライフスタイル、ライフステージの変化によって、キャリアについての考え方も変化していくはずだ。今回はそもそも「キャリア」とは何かについて考えてみたい。
何者かになってしまうことへの恐れ
突然だが、あなたは今の仕事に対して、天職だと感じており、一生この仕事を続けたいと自信を持って答えることができるだろうか。
もちろん、自信を持って「はい」と答えられる人もいるだろう。しかし、自分の仕事に対して、何の不安もないという人は少数派で、筆者の経験則から言うと、仕事がうまくいっている人も、そうではない人も、程度の差こそあれど何らかの悩みは持っていると思う。
特に、仕事にも慣れてきて、自分のスタイルを確立しつつある20代後半から30代前半くらいの人たちは、何とも言えない漠然とした将来への不安があるように思う。
この不安をあえて言語化するならば、「何者かになってしまうことへの恐れ」だと言えるのではないだろうか。新卒の就職活動や1年目のときは何にでもなれるような自分の可能性、将来の広がりを感じていたと思う。
しかし、ある程度自分のできること、できないことがわかってくるとその可能性が小さく、閉ざされていくような感覚を持ってしまう。何にでもなれる気がしていた数年前とは何かが違うことに気づき始める。
輝かしい、自分らしいキャリアをつかみ取ろう、という気持ちと現状とのギャップが焦りを生み、不安な気持ちにさせてしまうのだろう。
キャリアとは轍である
キャリアとは、自分の手でつかみ取りにいくもの、完成させなければならないと思い込んでしまうが、考え方を少し変えてみて欲しい。前述の漠然とした不安は誰しもが持ち、あなた1人だけの悩みではないから安心して欲しい。
そもそもキャリア(career)とは、日本語で経歴や経験と訳され、その語源はラテン語のcarrusにあり、この言葉は「轍(わだち)」を意味する。轍とは馬車などが通った後に残る車輪の跡のことだ。
つまり、キャリアとは轍であり、自分の前に伸びていくものではなく、自分が歩んできた人生を振り返ってみると、自分の努力や成果など、成し得てきたことや周りに与えてきた影響が残されているというものなのだ。
キャリアは、何か決まりきった正解のようなものがあるわけでもなく、どこかで完成するようなものでもないということになる。充実したキャリアとは、充実したこれまでのプロセスだと言える。
このようにキャリアについて考えるときに、未来ばかり見通したり、世間や他の誰かが良いと言っている価値観に安易に流されないようにしなければならない。
キャリアについての捉え方を正しく理解し、自分の歩みに対する振り返りをしっかり行うことで、自分のキャリアや理想のキャリアについて考えることができる。
もし、あなたがキャリアについて漠然と悩んでいる状態だとしたら、一旦立ち止まり、これまであなたが成し得てきたことをじっくりと振り返ってみて欲しい。想定通り歩んできたところ、道を外れてしまったところ、いろいろあると思うが、自分の歩んできた足跡こそがキャリアであり、今後の進むべき方向性のヒントが必ずあるはずだ。