寄稿エージェント:沼部 亮平
スポーツ経験のある方は、「頑張るのは当たり前」という世界に身を置いている。
それゆえに、仕事・キャリアに対しても「頑張る」ことは当然と捉えがちで、言語化する必要性を感じていない場合も多いだろう。
しかし、頑張る理由を言語化することは、自己理解につながるだけでなく、伝え方の工夫で自身をより魅力的にアピールできるため、キャリアの実現には大切な要素だ。
そこで本記事では、「当たり前」を言語化していく方法について、スポーツ経験者の観点から解説する。
スポーツとキャリアの関係性
スポーツを通じて、以下のスキル・経験を得られることが多い。
- チームワーク
- リーダーシップ
- 努力
- 精神面での強さ など
スポーツ経験者というだけで「根性がありそう」「頑張ってくれそう」と評価されることが多いのは、上記のスキルや経験がビジネスでも通用すると捉えられているからである。
リーダーシップ・チームワーク・戦略的思考・精神的な強さなど、スポーツで培ったさまざまなスキルや価値観は、ビジネスの世界で大きな武器となることが期待されるのだ。
しかし、当人達はなぜそのようなイメージになっているのか、いざ聞かれると答えられない場合がある。
当たり前に努力をしてきた環境だからこそ、あえて言語化するのが難しいのだ。
就職や転職市場では、スポーツを通して培った経験は間違いなく、スポーツ未経験者と比べて有利に働く。
だからこそ、自身が置かれていた環境を言語化して、強みを分析することでキャリア戦略に活かしてほしい。
「当たり前」の見つけ方
中途採用における面接では、実現したいキャリアに対する努力の原動力は何かを言語化して説明しなければならない。
しかし、スポーツ経験者のなかには、言語化に苦手意識を持つ方も多いだろう。
そこでおすすめなのが「モチベーショングラフ」を活用する方法だ。
モチベーショングラフとは、過去に起きた出来事を軸にして、感情の揺れ動きを可視化するグラフのことである。
モチベーショングラフの作成手順は以下の通りだ。
- 紙に横軸:年代(小・中・高・大・社会人)、縦軸:モチベーションの高低を記載する
- これまでの人生を振り返ったときに、一番モチベーションが高かった所と低かった所に印をつける
- モチベーションの上限と下限を踏まえて、小学校から現在に至るまでのモチベーションを記載する
- モチベーションが低い所から上がっている所の境目に何があったのか記載する
- ネガティブからポジティブに移行している要因を精査する
上記の手順を踏めば、自身の原動力が明確になり、行動への納得感も出てくるはずだ。
さらに、原動力が何かわかれば、それに付随して自身が工夫して取り組んでいたことも明瞭になる。
スポーツ経験者は、このモチベーショングラフが作成しやすい。
なぜなら、「スポーツ」という一貫して取り組んできたものがあるからだ。
スポーツのように継続的に行ってきたものであれば、モチベーションの各基準を設けやすい。
また、4および5でいえば、例えば「ケガ」「挫折」の経験はモチベーションが低くなる要因である。
「ケガ」「挫折」の後にモチベーションが上がっているのであれば何か内的要因、外的要因が作用しているはずだと判断しやすい。
内的・外的要因が明確になれば、自身の原動力が言語化できるはずだ。
原動力の伝え方
自身の理解が進めば、次に検討すべきなのが「伝え方」である。当然面接の場では、その場で考えて対応できるほどの猶予はない。
それゆえに、事前に伝え方を検討しておくことが望ましい。
過不足なく採用側に納得感を持って理解してもらえる伝え方のポイントは以下の通りだ。
伝え方のポイント1:結論ファーストで話す ・相手の質問に対してまず結論でアンサーを返すと、回答が明確でズレることがない ・結論→抽象→具体の順で話すとよい 伝え方のポイント2:誰にでも伝わる言葉を選ぶ ・凝った表現や一般的ではない専門用語などはできるだけ避けて、わかりやすい表現・言葉を選ぶように意識する 伝え方のポイント3:実体験に基づいたエピソードを話す ・具体的な内容を伝える際には、実体験を織り交ぜて話すと自身の個性・強みを納得感を持って伝えられる |
上記のポイントを参考に、自身の伝えたい内容を整理して面接に臨んでいただきたい。
伝え方の実例
ここでは、実際に筆者が転職活動で実践していた伝え方の実例を紹介する。
質問:何があなたの原動力となっているか 結論:はい、「人に頼られたい」という気持ちが強く関与していると思います。 抽象:また私は、人の課題や悩みを解決できたときに、多くの喜びを感じます。 具体例:このような思いに至ったのは、大学生1年生のとき、とある先輩から言われた救いの一言がきっかけでした。 私は小学校からラグビーを始め、中学校まではそれなりの成績を出せていました。そのため、高校も全国大会常連校に進んだのですが、当然のように猛者が集まり、結局スタメンとしてジャージに袖を通すことはありませんでした。 今までの人生を振り返っても、一番の挫折と言えます。大学でもラグビーは続けようと思っていましたが、正直そこまでやる気が出ないまま入学式へと向かいました。 そんな折に一つ上の先輩に焼肉に誘われ、「一緒にラグビー部を変えてくれないか」との言葉をかけていただきました。 その瞬間視界が一気に広がったのを今でも鮮明に覚えています。 人に求められることによって、挫折で落ち込んでいた自分の心が救われた気がしたのです。 それから少しの間はその先輩のためにラグビーをしていたと言っても過言ではありません。 結果的に、その対象が先輩だけでなくラグビー部全体へと変わり、4年時には主将も務めさせていただきました。 以上のことから私の原動力は、人に頼られたいとの気持ちが大きく関与していると言えます。 |
このように、結論を補完する形で具体的なエピソードを交えて説明できれば、より説得力のある回答が可能となるだろう。
まとめ
転職にはスポーツ経験者が有利ではあるが、本記事で解説した内容はスポーツ経験者以外にも当てはまることが多い。
長く楽器をやっている方もいれば、さまざまな経験をしたいとの理由から、あらゆるジャンルに挑戦している方もいる。
それぞれに違いはあるが、一人ひとりに個性があり、可能性があるのは共通している。
弊社ASSIGNは、その個性や可能性を最大限に発揮するサポートを担い、転職支援ではなくキャリア支援が当たり前の世界を実現するのが目標だ。
キャリアや言語化に悩んでいる方は、ぜひ一度ご相談いただきたい。