寄稿エージェント:能津 亮汰
近年では、競合他社との違いをアピールする際に、サービスの性能や価格だけを宣伝するのは効果的な手法と言えなくなった。
競合他社との差別化の手法で注目されているのが「顧客体験(CX:カスタマーエクスペリエンス)」だ。
優れた顧客体験の提供は、サービスのLTV(Life Time Value、顧客の生涯価値)を高めるために欠かせない。
顧客のLTVを自社のサービス・製品で高めることは、競合他社との競争に勝つためにも不可欠な要素である。
本記事では顧客体験の定義や重要性といった基本から、顧客体験を向上させていくための取り組みを紹介する。
顧客体験(CX:カスタマーエクスペリエンス)とは
顧客体験とは、サービスやプロダクトの購入前後において、顧客が得る一連の体験のことを指す。
例えば、以下の内容が挙げられる。
- Sense(感覚的価値)
- Feel(情緒的価値)
- Think(創造的・知的価値)
- Act(行動、ライフスタイルに関わる価値)
- Relate(社会的経験価値)
Sense(感覚的価値)
五感を通して得られる経験価値を指す。
例えば、コンサートホールで聴くオーケストラの演奏は、聴覚および視覚を通じて得られる感覚的価値の一つである。
Feel(情緒的価値)
顧客の感情に訴えかけて発生する価値のことである。
例えば接客業・飲食業では、以下の項目が顧客の感情を左右する。
- 接客のクオリティ
- 対応スピード
- 店内のレイアウト、清潔さ など
上記の項目が顧客に満足される水準に達していれば、情緒的価値も高まるだろう。
Think(創造的・知的価値)
顧客がサービス・商品に抱く知的好奇心や創造性を喚起することで生まれる経験価値のことである。
「この商品やサービスを利用することで、〇〇ができるようになるかもしれない。」
上記のような状態を作り出すことこそが、創造的・知的価値が高まっている状態だと言えるだろう。
Act(行動、ライフスタイルに関わる価値)
顧客がこれまで得られなかった体験や、ライフスタイルを提案されて感じる経験価値のことである
極端な例で言えば、バンジージャンプやスカイダイビングなど、挑戦したことがないアクティビティを体験するのもActの一つだ。
Relate(社会的経験価値)
組織・集団への帰属意識・承認から得られる経験価値のことである。
具体的な例は以下の通りだ。
- 上級クレジットカード入会のインビテーションが届く
- ファンクラブ限定のライブに当選して参加する
顧客は所属によって特別感や優越感を抱くようになり、それが帰属価値・社会的経験価値の向上へとつながる。
顧客体験を向上させるメリット
顧客体験を向上させるメリットは以下の二つだ。
- 優れた顧客体験が差別化要素となり満足度向上につながる
- 企業・ブランドイメージが向上する
優れた顧客体験が差別化要素となり満足度向上につながる
現代では、プロダクトやサービスの機能・価格だけで競合他社と差別化することは難しい。
そのため、差別化においては優れた顧客体験こそが重要な要素だ。
質の低い体験は顧客の他社乗り換えにつながるが、体験の品質が高ければ顧客に選ばれる可能性も高くなる。
また、性能や値段などの特徴はわかりやすい反面、陳腐化しやすい価値でもあるため、一定水準を満たす必要がある。
それゆえに、競合他社との際限のない品質競争・価格競争に陥るリスクがあることに留意しなければならない。
このリスクを避けるためにも、顧客体験のなかで感情的な価値を提供して差別化を図ることが有効となるのだ。
さらに、優れた顧客体験は顧客の満足度を高め、企業やブランドに対する顧客ロイヤルティを醸成する。
顧客ロイヤリティが高まれば、企業・サービスは、足元の地盤が固まり、中長期的に安定した経営が見込めるようになる。
企業・ブランドのイメージが向上する
優れた顧客体験を提供することで、単発的な売り上げの増加・継続的な購入などによる直接的な利益だけではなく、企業やブランドイメージの向上にもつながる。
顧客ロイヤルティを高めることにより、顧客は企業・ブランドに対して利益となる以下の行動をする可能性が高まる。
- SNSで体験のレビューを拡散する
- 家族・友人などにサービス・商品を推奨する
このように顧客によるポジティブなイメージの発信は、企業・ブランドにとって大きな利益となる。
顧客体験価値を高めるために重視すべきポイント
顧客体験価値をさらに高めるには、以下のポイントを重視するとよい。
- 顧客視点でCXを検討する
- 使いやすさを向上させる
顧客視点でCXを検討する
CXを向上させるためには、「顧客視点」を尊重することが大切だ。
サービス・プロダクトに関わる顧客体験のフェーズごとに、顧客が抱える以下の諸問題を理解する必要がある。
- 顕在・潜在ニーズ
- 思考・感情
特に潜在的なニーズは、表層的に顧客の動きを捉えてもわかりにくいことがある。
そのため、的確に把握できるように、顧客の属性やサービスの利用傾向などの関連データにも着目することが大切だ。
特に顧客のサイコグラフィックやデモグラフィックから紐解かれるペルソナに関しては、時代と共に変化していくため、定期的に見直しを図ることが重要だ。
使いやすさを向上させる
サービス利用中の顧客体験においては、「ユーザビリティ」が一定以上の水準を満たしているかを把握すべきである。
多種多様な機能を持った高性能なプロダクトが失敗するのは、使い方が難解・操作画面のUIが不便などの原因であることが多い。
そのため、ユーザビリティが確保できているかどうかは必ず調査すべき項目になるのだ。
顧客体験向上の成功事例「ソニー損害保険株式会社」
顧客体験を向上させる取り組みは、多くの企業で実施されている。そのなかでも今回は、ソニー損保の事例を紹介したい。
保険商品の販売を手がけるソニー損害保険株式会社は、お客様の満足度向上を図るため、2006年4月から顧客とのコミュニケーションを醸成するコミュニケーションサイト「コエキク」を運営している。 コエキクで集まったお客様の声に対して、回答や対応策をまとめた改善レポートを掲載し、真摯に顧客満足度向上に取り組まれている。 参考:お客様とソニー損保のコミュニケーションサイト、お客様にとって価値ある「違い」の実現に向けて|ソニー損害保険株式会社 |
まとめ
優れた顧客価値の提供は、現代のビジネスの成否を左右する大切な要素だ。
それだけに、社内でもステークホルダーとなり得る顧客体験に関わる職種に、転職をしたいと考えている方もいるかもしれない。
顧客体験に関わる職種への転職なら弊社「ASSIGN AGENT」の利用をおすすめする。
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