寄稿エージェント:仲谷 香南
コロナ禍で注目を集めたのが「リモートワーク・在宅勤務」である。
これまで、技術的には可能でもさまざまな理由から導入が進んでいなかったリモートワークが、この数年で一気に定着した。
リモートワークがもたらす労働者へのベネフィットの一つが、「場所にとらわれずに働ける」点だ。
場所にとらわれない働き方は、自分の人生における選択肢を飛躍的に広げられるため、目標とする方が増えている。
そこで本記事では、場所にとらわれない働き方を実現するために大切な予備知識と必要なスキルについて解説する。
今後、場所にとらわれない働き方を実現したい方はぜひ参考にしてほしい。
働き方の多様化
働き方の多様化により、リモートワークをしたい・地元に戻りたいなどの相談は増えている。
仕事が人生の目的となる暮らしではなく、自分の理想の暮らしを実現するために地方に住み、そこで働く選択をしたいと考えている人も多いはずだ。
現在の労働環境は、終身雇用制度や年功序列型の働き方が崩壊し、雇用に流動性が生まれているのが特徴だ。
そのため、個人においては幅広い環境に対応できる「転職力」とも表現されるような力が求められている。
また、終身雇用を前提としない現代では、企業にとっても汎用性が高いスキルを持った人材が必要とされやすい。
いわゆる「VUCA時代の到来」である。
VUCAとは以下の単語の頭文字をとった造語のことだ。
- Volatility:変動性
- Uncertainty:不確実性
- Complexity:複雑性
- Ambiguity:あいまいさ
VUCAは、将来が不透明で予測が難しく、状況が目まぐるしく変化していく様子を示す
際に用いられる。
VUCA時代においては、技術革新が急速に進み、既存の知識やスキルが役に立たなくなってしまう可能性が高い。
場合によっては、長らくその企業を支えてきた独自の強みが通用しなくなってしまうケースもあり得る。
変動の激しい時代において、汎用性の高いスキルを持った人材の価値は、ますます高まっていくだろう。
汎用性の高い人材が「地方で働く」ことは不利なのか
地方への転職は、求人数・情報量が都市部とは異なるため、困難であると捉える方も多いだろう。
一方で、どこにいてもあらゆる情報を入手できる現代では、リスクがあると考えられていたIターン、Uターン転職の成功率も高くなってきている。
Iターン、Uターンは以下の理由から検討されることが多い。
- 都会である程度キャリアを積んだが、地元にさらに貢献したい
- 都会の忙しなさに疲弊し、地元のゆったりとした環境で暮らしたい
- 子どもが生まれたことを機に、実家近くの豊かな自然環境のなかで子育てしたい
また、最近ではJターンの需要も拡大している。
Jターンとは、地方で生まれ育った方が進学や就職などを機に都市部へ移住したのち、自分の出身地に近い地方都市へ移住することを指す。
Jターンを選択するケースには、以下のような例が考えられる。
- 地元で暮らしたいが利便性の側面から、地元に近い地方都市を選ぶ
- 地元へいつでも帰れて、地方都市であれば仕事の母数も確保できる
つまり、地方は少子高齢化で人口が減っていることも相まって「マーケットが小さい」と思われがちだが、Jターンも検討材料に加えれば、十分地方で場所にとらわれない働き方が可能なのだ。
またマーケットの捉え方が多様化し、地方にもさまざまな活路を見出せる時代となった。
もはや都会にいても、地方にいても世界中をマーケットにすることは難しい話ではない。
場所にとらわれることがない現代、「どこで働くか」ではなく、「自分が価値を出せる人間かどうか」が重要である。
自分のバリューを出し、市場価値を高める際に有益なのが「ポータブルスキル」だ。
次章ではポータブルスキルについて解説したい。
自身の価値を見出すポータブルスキルの重要性
ポータブルスキルとは、一般社団法人人材サービス産業協議会(JHR)が開発したものであり、「職種の専門性以外に、業種や職種が変わっても持ち運びができる職務遂行上のスキル」と定義している。
特定の職種のみで活かされる知識や実務的なスキルとは異なり、どのような職種においても発揮される汎用性の高さが、ポータブルスキルの大きな特徴だ。
ポータブルスキルは、主に以下の二つに分けられる。
- 仕事のし方
- 人とのかかわり方
仕事のし方
仕事のし方とは、業種や職種にかかわらず、業務を遂行する上で必要とされる能力のことだ。
具体的には、以下の五つがある。
- 現状の把握
- 課題の設定
- 計画の立案
- 課題の遂行
- 状況への対応
上記の能力を兼ね備えている人材は、どの業界・職種でも一定以上の成果を出せる人材として評価されやすい。
人とのかかわり方
人とのかかわり方は、経営層・上司・顧客などの全方向に対する対人スキルを示したものだ。
具体的には、次の四つの要素がある。
- 社内対応
- 社外対応
- 上司対応
- 部下マネジメント
上記の対人におけるスキルが高ければ、どの業界・職種でも早期に環境に慣れて、自身の専門的スキルを発揮しやすくなる。
参考:ポータブルスキル見える化ツール|厚生労働省まとめ
ポータブルスキルを持った人材は、必要な技能や知識を積み上げることで、即戦力としての働き方が期待できる。
そのため、VUCA時代における転職市場では、価値貢献度の高い人材として扱われるだろう。
ポータブルスキルは決して先天的な才能ではなく、正しい段階を踏むことで後天的に身につけられる能力だ。
早い段階で高いポータブルスキルを身につけられれば、働く場所に捉われず、仕事とプライベートをどちらも大切にできる。
地方転職のニーズも増えている現状では、将来的に場所に捉われない働き方をしたい方も増えている。
だからこそ足元の選択肢から妥協して選ぶのではなく、ポータブルスキルも含めて、中長期的なキャリア戦略を構築してから、豊かな人生を実現してほしいと願う。