銀行業界からのキャリアチェンジを成功させるためには

銀行業界からのキャリアチェンジを成功させるためには

寄稿エージェント:島倉 悠斗

銀行業界は、新卒での就職活動で長年人気の高い業界であり、新卒での採用人数も多い。

ただ、銀行業界は社会情勢の変化を受けた労働環境・雇用情勢への対応が遅れている部分がある。

そのため、入社後数年して銀行業界からキャリアチェンジを検討する人材が転職市場に多く流入している。

銀行業界は、その特性から活躍できる業界が数多くあり、適切な転職対策を行えば、比較的キャリアチェンジも容易だ。

本記事では、銀行業界からのキャリアチェンジについて、銀行業界の現状と課題も含め解説する。

銀行業界の現状と課題

日本では、長い間終身雇用制度が浸透し、労働者が転職を検討することは少なかった。

しかし、以下の理由でこの終身雇用は崩壊の一途をたどっている。

  • 日本経済の低迷
  • 少子高齢化
  • 働き方改革・成果主義などの労働環境の変化 など

この終身雇用の崩壊は、漏れなく銀行業界にも影響をおよぼしている。

リクルートワークス研究所の「ワークス採用見通し調査(新卒:2024年卒)」によると、2023年卒の2022年10月時点での採用充足率は78.5%で、過去10年間で最も低い水準となった。

業種別でみると金融業が63.7%と最も低く、2022年卒と比較すると96.0%から63.7%へ-32.3%と大きく減少している。

このことから金融業界への就職意向が下がっていることが見て取れる。

銀行は初任給が全産業平均より低く、長く働き30歳を迎える前後で役職がつき、大きく年収を上げていく終身雇用・年功序列での給与体系であることが大半だ。

そのため、終身雇用が崩壊しジョブ型雇用が推進され、キャリアを自分自身で設計しなければならなくなっている昨今では、銀行業界からの転職者増加に歯止めが効かない。

銀行業界からの人材流失を食い止めるためには、まず社会情勢に配慮した労働環境の整備が急務だ。

一方で、労働者側からすれば銀行業界からの転職はむしろ普遍的となっているため、転職市場でも活動しやすい状況といえる。

参考:ワークス採用見通し調査(新卒:2024年卒)|リクルートワークス研究所

銀行業界における採用市場の強み、転職に活かせるスキルとは

銀行業界で得たスキル・経験は転職で活かせるものが多い。

特に強みとなり得るのは以下の4つである。

  • 金融知識
  • リスク管理能力
  • 無形商材の営業経験
  • チームワーク

金融知識

銀行業界で得られる業界・市場の知識は転職先でも十分に活かせる。

銀行業界で身につく金融知識の例は以下の通りだ。

  • オープンAPI
  • モバイル決済
  • ブロックチェーン・暗号資産
  • 各種ローン・融資
  • クレジットカード など

現代で、金融知識と全く無縁な業界は存在しない。

そのため、銀行業界で得た知識は直接的・間接的どちらにおいても少なからず役に立つ。

例えば、各業界の営業職では、顧客とのコミュニケーションや提案において、財務をはじめとした業界知識は大きな武器となる。

特に経営層に直接営業を行うような場合では、提案内容に具体性が増し、金融知識に造詣が深い点から信頼を得られやすくなる。

リスク管理能力

銀行では重要な顧客情報を扱うことから、他業界と比べてもリスクへの感度が非常に高い。

ほかの業界でも総務・人事などのバックオフィス関連職では、個人情報・社外秘を取り扱うことが多いため、そのリスク管理能力をすぐに発揮できる。

また、ベンチャーへの転職・メンバーマネジメントの際にも銀行で得られたリスク管理能力を発揮する機会がある。

無形商材の営業経験

個人や法人に対して融資・保険・投資信託などの金融商品を提案する経験は、顧客のニーズに合わせた提案や問題解決能力が鍛えられる。

金融商品は商材のカテゴリーとして「無形商材」と呼ばれ、以下の商材もこれに該当する。

  • コンサルティング
  • 教育関連(塾・家庭教師など)
  • IT関連(エンジニア・SIer営業など)
  • 人材関連
  • 広告関連 など

上記のうち特に業務親和性が高いのがコンサルティングである。

顧客のニーズに合わせた提案や問題解決能力を活かしつつ、金融知識全般もコンサルティングにおいて役立つ場面が多い。

現に、銀行業界からコンサルティング業界へ転職を志す人材は増加している。

チームワーク

銀行業界では多くの場合、チームで業務を進めていくことが多い。

時には本部や業務提携先の企業と密に連携をとりながら案件を進めることもある。

そのため、周囲を巻き込みながらチームで案件を進めていく経験はさまざまな業界で武器となる。

銀行業界からキャリアアップするために今できること、やるべきこと

銀行業界からの転職理由で多いものは以下の通りだ。

  • 本当に必要な顧客のためになれない
  • 業界の将来性が不安
  • 専門性が身につかない

しかし、本来は転職すべきか転職すべきでないか・自分にはどのような仕事が合っているのかを理解するためには、まず自己分析と将来像を明確にすることが重要である。

自己分析については、過去の意思決定のなかで自分は何がきっかけになったのかを整理してみると自己理解が進むはずだ。

将来像については、10年後、20年後の姿を抽象的でもよいのでイメージすることが重要である。

ただ、実際はキャリアに関する情報があふれているため、自分だけで考えることが難しい場合もある。

自分だけで考えることに行き詰まりを感じた際は、ぜひキャリアのプロである転職エージェントに相談することを推奨したい。

他人からみた自分が何者なのかを把握することで、より自分の得意なこと・目指したい姿が明確になるはずだ。