若手経理が「会計のプロフェッショナル」になるために意識すべきポイントを解説

若手経理が「会計のプロフェッショナル」になるために意識すべきポイントを解説

寄稿エージェント:清水 駿

「経理はAIに代替される」とにわかにささやかれる時代となった。

経理がAIよりも価値を出し、企業に貢献するためには、転職市場の動向を注視しつつ、求められるスキルを習得することが肝要である。

また、今後経理としてどのようなキャリアを積んでいきたいのかを検討することも大切だ。

本記事では、さまざまな難問が立ちはだかる時代を生き抜く、プロフェッショナルな会計マンとはどのような人材なのかを解説する。

現在の経理の転職市場

転職市場においては、これまでは求める人材を採用する企業側にパワーバランスがあり、企業が組織上不足している部分を、即戦力として中途採用していた。

しかし、ここ数年の転職市場は、新型コロナウイルス感染症の影響もあり、若手の採用そのものに消極的な姿勢が続いている。

先行き不透明な状況だからこそ、即戦力採用に期待をよせる企業も多いが、どの企業も戦力となる人材を募集したいことから、売り手市場が激化しているのも実情だ。

その結果、名の知れた大手企業でさえも優秀な経理人材を採用すること自体が難しくなった。

また経理では通常業務のほかに、以下の業務を遂行できる人材が求められる傾向も強く、よりいっそう採用が難航している。

  • IFRS(国際会計基準)導入業務
  • DX化に伴う社内インフラ・会計ソフト導入業務 など

また、30代以降の人材を採用することで、組織ピラミッドの歪みを整えたい企業も散見される。

転職市場の変化と企業の求める人材の影響を受け、経験・スキルが豊富な30代以降の経験者に対して求人が集中し、企業側は満足に採用できないという構図が生まれてしまった。

一方で、経験者を求める企業が多いため、これから経験を積んでいくフェーズにある若手経理マンへの求人は減少している。

このような状況から、自社の強みや魅力を理解したうえで、今後に期待ができるポテンシャル人材の採用に踏み切る企業が増加傾向にある。

つまり現在は、企業側の採用マインドに変化が見られるため、若手経理マンの転職においては追い風になってきている。

経理のキャリアパス

経理は、概して業務に忙殺されてしまい、自身のキャリアについて考える時間が取れないことも多い。

ただ、会計のプロフェッショナルになるためには、「どのような環境」で「どのようなスキル」を積むことができるのかを理解してキャリアを積んでいくことが重要である。

経理として勤務するなかで、キャリアを効果的に積むために精査すべき項目は以下の通りだ。

  • 経理関係における組織体制を把握する
  • 自社がどのような業界・特徴・どこまで内製化されているかを理解する
  • ポジションによって経験できる業務範囲・責任などを把握する など

上記の項目において、現職がどのような状態であるのかをまず精査して、自身のキャリアパスに落とし込むことが大切だ。

経理が企業に属して目指せるキャリアパスは、主に以下の2通りである。

事業形態目指せるキャリアパス
一般事業会社日常業務→月次決算→年次決算+管理会計
上場企業・日常業務→月次決算→四半期・年次決算を経て、連結・開示・海外関連業務など
・経理からは少し離れるがIRや財務分野も視野に入れる

業界や業種によって多少違いはあるが、上記のような内容が主に目指せるキャリアパスとして挙げられる。

キャリアパスを目的として、転職の際に企業選択をする際には、その組織でどのような経験を積めるのかを理解することが重要だ。

また、そもそもキャリアを積める組織なのかを見極める必要もある。

ただ、確認すべきポイントは多いが、1~2社しか経験していないなかで判断するのは難しい。

そのため、自身での判断が難しい場合はぜひ転職エージェントに相談してほしい。

会計のプロフェッショナルとは

会計のプロフェッショナルになるためには、まず会計のプロフェッショナルとはどのような人材なのかを考えなければならない。

よく挙げられる会計のプロフェッショナルが保持している要素といわれるものは以下の通りだ。

  • 社内で重要なポジションに就く
  • 経営に近い業務を遂行する
  • 自身の業務だけでなく、関連部署全体のマネジメントも遂行する

上記の要素は、確かに会計のプロフェッショナルが保持しているものといえる。

経理は業務の性質上、目の前の数字に対して考えを凝らすことが多い職種だ。

経理から多様なキャリアパスをたどり、会計のプロフェッショナルと呼ばれるようになった人材には共通点がある。

その共通点とは、常に会社において自分がどのような役割を担っているのかを意識して仕事をしている点だ。

例えば、目の前の請求書処理一つにおいても、会社のどの部分のお金が動いているのかをまず認識する。

そして、どのように業務を行うことが企業にとって一番よい結果につながるのかを理解しようとする姿勢が見られる。

若手の経理は、現状は経験が浅く、業務に取り組むので精一杯の状態であることも少なくない。

ただ、業務に忙殺される状態であっても、まず「自分は会計のプロフェッショナルだ」との認識を持って日々の業務に取り組むことが大切だ。

会計のプロフェッショナルのスタンスを意識しながら、なりたい将来像に向けて進んでいくことが、本当の意味で会計のプロフェッショナルへと近づけるはずだ。