寄稿エージェント:田代 章悟
コンサルタントから事業会社への転身は、多くのコンサルタントにとって魅力的なキャリアチェンジだ。
ただ、一口に事業会社への転職といっても、さまざまなパターンがある。
そのなかでも、特に経営企画職と事業企画職への転職は、コンサルタントとしての経験を活かしたキャリアアップ先として、有力な選択肢だ。
本記事では、事業会社の経営企画と事業企画の業務内容について解説する。
コンサルティング会社から事業会社に転職することのメリット
コンサルティング会社から事業会社に転職をすると、以下のようなメリットを得られる。
- 「実行」経験の獲得
- 海外拠点の設立
- 影響力の確立
「実行」経験の獲得
事業会社の企画職に転職すると、実際の事業運営に関わるさまざまなプロジェクトに携わる機会が増える。
プロジェクトの例は以下の通りだ。
- 新規事業の立ち上げ
- 海外拠点の設立
- 自社事業の統廃合 など
上記のプロジェクトに携わることで、ビジネスシーンにおける実務経験を積める。
この実務経験は、コンサルタント業務では得られない「主体者」としてのビジネス上の問題解決能力や実践的なスキルを向上させるのに役立つ。
特定領域への知見の深化
事業会社の企画職に移ると、自身の専門知識やスキルを特定の事業に特化させることになる。
特定の領域に精通できれば、業界の動向やニーズを把握し、組織の成長に寄与する能力を高められる。
また、事業会社での経験は将来的な経営層へのキャリアパスを開拓する上で有益だ。
事業会社の企画職は、概して事業に対する戦略立案だけでなく、実働部隊としての側面もあるため、結果的に双方の経験を積める。
それゆえに、企画職を経験していれば、経営に参画した際にどのような施策・行動が効果的なのかを判断する能力が身につくため、経営層へのキャリアパスが拓けるのだ。
影響力の確立
事業会社では、自身が立案した企画や戦略が直接的に実行に移されるシーンが多くなる。
そのため、自身の意思決定による成果や成長が、組織に大きな影響を与える。
特に、良好な業績を上げられた場合は、自身の評価も連動して上がることが大半だ。
また、自身の評価が上がっていけば、組織内部でのポジションの安定性や地位の確立も見込める。
社内での影響力を高められれば、自身のアイデアや提案が組織全体により大きな影響を及ぼす可能性が高まる。
経営企画と事業企画の違いとは
事業会社への転職で得られるメリットを踏まえた上で、経営企画職と事業企画職の相違点を精査し自身の希望に合った職種を選ぶことが大切だ。
ここでは、経営企画と事業企画の相違点を解説する。
経営企画の業務内容
経営企画の業務は、組織全体の戦略策定やビジョンの言語化に焦点を当てている。
具体的な業務は以下の通りだ。
- 中長期的な経営戦略の立案
- 立案した計画の実行管理
- 全社予算の策定 など
入社後は、経営層との判断決定に関与し、組織全体の最適化に貢献する。
経営企画としての経験を積んだ後のキャリアパスは、さらに高度な組織の戦略立案を行う経営幹部へのキャリアアップ、そして経営トップのポジションを目指すことも可能だ。
また、経営企画の経験を活かし、独立・起業をキャリアパスとして選択することも視野に入れて検討できる。
経営企画に求められるスキルは以下の通りだ。
- 分析力
- 戦略的思考力
- リーダーシップ など
上記のスキルを持つ人材が、経営企画として活躍できる可能性が高いといえる。
事業企画の業務内容
事業企画の業務は、特定の製品・サービスの立ち上げや成長戦略の基本に焦点を当てる。
具体的な業務は以下の通りだ。市場分析、新商品の企画立案、具体的な事業計画の推進などが含まれる。
- 市場分析・マーケティング
- 新商品の企画立案
- 具体的な事業計画の推進 など
事業企画としての経験を積んだ後のキャリアパスは、特定事業部門のマネジメント・新規事業の責任者などがある。
事業企画のキャリアパスでは、いずれも特定の製品やサービスの成功に直接関わるのが特徴だ。
事業企画に適している人材の特徴は以下の通りだ。
- 市場への洞察力・製品戦略の基礎能力に長けている
- 市場の変化に素早く対応できる柔軟性がある
- 組織マネジメントも含め、サービスとヒトの両面から課題解決に取り組める
上記の特徴を満たした人材が、事業企画として大成できる可能性が高いといえる。
事業会社への転職に向けて現職で意識すべきポイント
事業会社への転職を考える際には、事業会社の文化や価値観に対する心構えが重要となる。
また、自身のスキルセットや経験を事業会社のニーズに適合させるためのスキルアップも検討すべきだ。
さらに、自身のキャリア目標と事業会社の戦略的な方向性を見据え、双方が調和するように調整することも肝要である。
事業会社への転職を中長期的なプランとして考えている場合は、現職のコンサルティング企業でのプロジェクト参画の際に意識すべき点がある。
その意識すべき点とは、自身が将来的に目指す事業会社の業界や課題解決に関連するプロジェクトへのアサインを狙うことだ。
関連するプロジェクトを経験すればするほど、事業会社への転職に役立つ経験・スキルを身につけられる。
希望するプロジェクトにアサインされるように、まず現職で成果を出していくことが将来的な転職に効果的である。
まとめ
経営企画と事業企画は、事業会社におけるポストコンサルタントのキャリアにとって有力な選択肢だ。
経営企画は組織全体の方針策定に重点を置き、事業企画は特定の事業や製品の成功に焦点を当てる。
つまり、経営企画と事業企画の大きな違いは、対象が企業全体であるか一つの事業であるかである。
この経営企画と事業企画の差異により、業務内容や求められるスキルにも大きな違いが生まれることも意識しておきたい。
また、ポストコンサルタントのキャリアパスとしては、ほかにも事業開発・マーケティング・起業/独立なども考えられる。
最終的には自身の志向性やスキルセットに合わせて最適な選択をすることが重要だ。