寄稿エージェント:稲葉 譲
現代は、終身雇用制を廃止する企業が増加しており、その流れを受けて転職が当たり前の時代になりつつある。
転職活動において、面接での通過率に悩まされている人も多いかもしれない。
企業側は、面接で転職希望者の転職のきっかけ・今後のキャリアパスなどの回答から、「キャリアの一貫性」を探ることが多い。
キャリアの一貫性について、納得感のある明確な返答ができなければ、面接を通過するのが難しくなる。
そこで本記事では、面接で重視されるポイントの一つであるキャリアの一貫性について解説する。
キャリアの一貫性とは何かを確認し、今後の転職活動に活かしたい人はぜひ参考にしてみてほしい。
キャリアの一貫性とは
キャリアの一貫性とは、以下の要素において一貫した軸がある状態のことを指す。
1. 新卒時に入社した企業を選んだ理由
2. 転職理由
3. 転職活動の軸
4. 志望理由
5. 将来像
上記のうち1・2は過去、3は現在、4・5は未来について述べている。
また、2の転職理由と4の志望理由はよく似ているが、以下の点が異なる。
- 転職理由:新卒で入社した企業から転職する理由
- 志望理由:応募先企業に入社を志す理由
キャリアの一貫性は、その人の過去・現在・未来における重要な節目で、どのような考え方で意思決定してきているかを図る指標になるものである。
言い換えれば、考え方や意思決定の癖のような表現がしっくりくるだろう。
この一貫性があるかないかによって、面接の通過率は変わってくるため、ぜひ面接に臨む前に整理しておいていただきたい。
なぜキャリアに一貫性が重要なのか
なぜ面接においてキャリアに一貫性が必要になるのか。
その理由は、その企業でどのくらい長く勤務できるかを示す指標になるからである。
採用企業としては、特に正社員雇用であれば「長く貢献してくれる人材を雇用したい」気持ちがあるはずである。
長く貢献する人材の要件として、一貫したキャリアを持つ人材のほうが、企業にとって早期離職のリスクは少ない。
そのため、キャリアに一貫性がある転職希望者であればあるほど、採用担当者も安心できるというわけだ。
それゆえに、転職を希望される方は「しばらくしたらまた転職するのではないか」というような、採用担当者の懸念を払拭しなければならない。
懸念の払拭には、過去の自分の意思決定を根拠に志望動機を作成して、志望度の高さをアピールする必要がある。
ただし、新卒時に取り組みたかったことと、転職時に新たに取り組みたいことに乖離が生じるケースもある。
乖離がある場合は無理して一貫性をもたせる必要はなく、取り組みたいことが変更になった背景を明確にすれば問題はない。
一貫性のあるキャリアの考え方
まず【①新卒時に入社した企業を選んだ理由・②転職理由・③転職活動の軸・④志望理由・⑤将来像】をそれぞれ考えていただきたい。
その際はそれぞれ【For You:誰に対してどのような価値を提供したいか/For Me:成長軸、どのようなスキルアップをしたいか】の2軸で考えてみるのがおすすめである。
具体例としては以下の通りだ。
①新卒時に入社した企業を選んだ理由: 学生時代に飲食業界でアルバイトをし、食を通じてお客様に喜んでいただきやりがいを感じたから |
②転職理由: 正社員として飲食業界で働くなかで、業界の改善点が明確になり、その改善点をコンサルタントとして全体を見通しながら解決への支援をしたいと考えるようになったから |
③転職活動の軸: 飲食業界への支援実績が豊富なコンサルティングファーム |
④志望理由: 御社は大手企業から個人経営まで、さまざまな規模の飲食店への支援実績が豊富で、御社であれば私の希望のキャリアが積めると感じたから |
⑤将来像: 飲食業界全体がより発展し、お客様だけでなく働く人も笑顔になれる業界になるような支援ができる人材になりたい |
上記の具体例のように、それぞれ5つの項目を洗い出し、一貫性があるのか確認する。
仮に、キャリアの一貫性がない項目が判明した場合は、それぞれの項目にスポットライトをあてる箇所を工夫してみるとよい。
また先述したように、新卒時に取り組みたかったことと、転職時に新たに取り組みたいことに乖離があること自体は、問題はない。
キャリアの一貫性がないことへの説明ができるように、キャリア軸を変更した理由を明確にし、その背景にある原体験までも考えておくのが望ましい。
まとめ
今回は転職活動の面接で必ず問われるキャリアの一貫性について解説した。
キャリアの一貫性は単なる面接対策としてではなく、自己分析においても有効なツールになり得る。
また、企業の雇用制度改革・第4次産業革命が進むなかで、仕事を通じて幸せになるためには、自分自身のキャリア形成を計画的に考えることが不可欠である。
キャリアに対して無計画で過ごすと、仕事を通じて幸せになることは大変難しくなる。
今後は、キャリア形成について計画的に考えつつ、専門スキルを高めるのが重要だ。
将来ありたい姿を明確にすると、行くべき企業も明確になる。
キャリアの一貫性は、選考対策としてだけではなく、よりよいキャリアを歩むための一つの手法としても活用してもらえれば幸いだ。