SIer業界の動向やSIer営業の業務内容とキャリアパスについて解説

SIer業界の動向やSIer営業の業務内容とキャリアパスについて解説

寄稿エージェント:稲葉 譲

SIer業界は世の中のIT化に伴い、成長著しい業界として知名度を上げている。

右肩上がりの成長曲線を描くSIer業界では、それに合わせて人手不足も目立つ状態となっている。

また、新興業界であるがゆえに、業界に対する専門的な経験・スキルを持つ人材が少ないのが、転職希望者にとってはチャンスが大きい要因の一つだ。

人手不足と新興業界の2点により、未経験者のキャリアチェンジにおいても転職成功の可能性も高い。

今回は特にSIerの営業に焦点を当て、業界の動向・業務内容・キャリアパスについて紹介する。

SIer業界の動向

SIer業界は、30年以上前に大規模システムの需要が高まったことを背景に誕生した業界である。

総務省情報流通行政局が発表している「2021年情報通信業基本調査」を基に現在の国内市場を考察したい。

調査によると、SIerが属している「情報サービス業内、受託開発ソフトウェア業(P49)」において、8兆を超える売上高が集計されている。

2019年度は9兆円を超える売上高が記録されており、比較すると3.2%ほど減少している。

しかし、今後については、「2025年の崖」問題が指摘しているように、老朽化しているレガシーシステムを刷新していく必要があることから、市場は拡大すると予測できるだろう。

システムの刷新作業は、多くが大規模なプロジェクトとなり、各種調整を行いながら豊富な人員を投入しなければならない。

そのため、必然的にSIerへの期待はより高まるだろう。

さらにDX化の推進も追い風となり、ERP(Enterprise Resource Planning:企業資源計画の略語)をはじめとする、大企業向けのパッケージソリューションの導入などもある。

システムの刷新・DX化の推進により今後もSIerの市場は成長傾向にあるといえる。

SIer営業の業務内容

SIerの営業は、大きく「アカウント営業」と「ソリューション営業」の2種類に分けられる。

アカウント営業

アカウント営業は、特定の大口顧客を担当し課題解決をサポートするのが特徴だ。

顧客と常に綿密なコミュニケーションを取り、信頼関係を構築しながら情報を収集して、案件の受注に向けて活動していく。

そして、本格的な提案の時期になると、SEを含めたプロジェクトチームを組成し、提案内容をブラッシュアップして顧客にプレゼンを行う。

受注後も、プロジェクトの状況を確認しつつ各所との調整を行い、納品までのフォローを行うため、社内外を問わず調整要素の大きい業務になる。

ソリューション営業

ソリューション営業は、担当商材(ソリューション・サービス)の受注を目的に活動する。

アカウント営業と異なり、多くの見込み顧客にアプローチする営業スタイルとなり、提案するソリューションについても、担当商材に依存する傾向にある。

そのため、ソリューション営業はSaaSの営業内容と共通点が多い。

また、アカウント営業の担当顧客との商談に同席し、担当商材の受注に向けた営業活動も行う。

SIer営業のキャリアパス

SIerはプロジェクトワークであるため、業務のなかで以下のようなポータブルスキルを高められる。

  • 調整力
  • コミュニケーションスキル
  • マネジメントスキル

また、近年どの業界でも必要とされるIT知見が身につくので、豊富なキャリアパスの選択が可能だ。

SIer営業のキャリアパスは以下の通りだ。

  • 別のSler企業への転職
  • コンサルティングファームへの転職
  • SaaS・メガベンチャーセールスへの転職

別のSler企業への転職

SIer営業で最も多いキャリアパスは、別SIer企業への転職である。

SIer企業にも大手から中小、スタートアップと多種多様な企業が存在し、労働条件も当然ながら企業ごとで異なる。

そのため、給料・職場環境・ワークライフバランスなどの労働条件の改善を求めて、転職する人も多く見られる。

SIer業界で求められるITスキル・マネジメントスキル・企画力などの、価値のあるスキルを高めて、より好条件の企業への転職が可能になる。

コンサルティングファームへの転職

SIer業界で習得できるポータブルスキルに加え、付加価値が高いスキルを身につければ、コンサルティングファームというキャリアパスも視野に入れられる。

転職先として有望なファームとしては、総合ファーム・ITファームなどがある。

コンサルティングファームへの転職は概して難易度が高いため、必要十分な対策は欠かせないが、チャレンジ可能なキャリアパスだ。

SaaS・メガベンチャーセールスへの転職

SIer営業は、案件によっては億単位の大規模なプロジェクトワークを遂行できるのが魅力の一つだ。

一方で、個人の仕事に対する手触り感や業務全体のスピード感に懸念がある人もいるかもしれない。

そのような懸念がある場合、IT知見や無形営業の経験を活かし、個人の裁量が大きいSaaS・メガベンチャー企業への転職を視野に入れるのもよい。

まとめ

ここまで、SIer業界の動向・SIer営業の業務内容・キャリアパスについて述べてきた。

将来性が高いSIer業界で働くと、ポータブルスキル・専門スキルを身につけられるため、その後のキャリアパスも多種多様であるのが魅力だ。

しかしSIer業界に限らず、転職活動を進めるにあたって大切なのは、将来ありたい姿から逆算して、現在のキャリア・スキルでは何が課題なのかを明確にすることである。

もし自身のキャリアについて悩んだ際には、ぜひ一度エージェントに相談してみてほしい。