寄稿エージェント:山内 馨介
近年、特にコロナ禍が影響してフレックス制・リモートワークなどの多様な働き方に対応する企業が増えてきている。
多様な働き方が拡大するのと同じく、終身雇用の崩壊やメンバーシップ型からジョブ型への雇用の変化など、一人ひとりの仕事観も多様化している。
また、日本だけでなく世界がグローバル化し、通信技術が飛躍的に進化するなかでは、国や文化の境界線が曖昧になる場面が目立つ。
ただ、働き方についてフォーカスすれば、それぞれの文化における個性や特徴は依然として存在する。
例えば、日本は「長時間労働」と「社会的義務」が特徴であり、アメリカは「個人主義」と「自由な時間管理」が特徴だ。
日本とアメリカの働き方の違いは、深く根ざした社会的価値観や文化的規範によって形成されている。
そのため、それぞれの特徴を尊重したうえで正しく理解することが大切だ。
そこで本記事では、日本とアメリカの仕事観やマインドセットについて解説したい。
日本のマインドセット
日本のマインドセットでは、「組織への忠誠心と調和を重んじる」傾向が見られる。
これは、日本の社会構造や伝統的な価値観が深く反映されている。
組織への忠誠心を示すものの一つが「モーレツ社員」をはじめとした一生懸命働く価値観だ。
一生懸命働くことを是とする文化は、結果的に長時間労働を助長し、過重労働・過労死など、社会全体に悪影響を与えている。
また、調和を示す要素としてチームワークが尊重される傾向が強い。
事業活動におけるさまざまな決定は、グループ・組織単位で行われ、多数決の原理に基づき進められる。
これそのものは、民主主義の原則的な考えであるため当然ではあるが、どちらかといえば「少数意見の尊重」が少ないように思える。
忠誠心と調和を大切にする概念によって、企業は従業員に対して、専門性だけでなく献身を期待している。
また、従業員自身も自己のアイデンティティと価値を仕事に見出す傾向がある。
繰り返すが忠誠心と調和を重んじる価値観は、過重労働やストレスの引きがねになることもある。
日本が重んじる忠誠心と調和について、ぜひよい側面もそうではない側面も含めて、理解につなげてほしい。
アメリカのマインドセット
アメリカの働き方は、個々の能力や成果を重んじ、フレキシブルな時間管理やワークライフバランスを重視する。
このような文化は、個人主義、自己表現、そして自己決定の価値観が反映されている。
アメリカの労働者は、自己の能力と成果を重視することで、大きな喜びを感じ、自己のアイデンティティを確立しているのだ。
自己の能力と成果を重視する文化は、企業文化にも広く反映されている。
革新性や創造性を重んじた、商品やサービスがリリースされるのも欧米企業が多いように、新たなアイデアや異なる視点を歓迎する風土が浸透しているのだ。
また、個々の生活スタイルやニーズに合わせて働くテレワークやフレックスタイム制は、アメリカを象徴する働き方である。
しかし、アメリカの労働文化にも多くの課題が存在する。
例えば、個人主義の傾向が強いことで競争心を助長し、過度のストレスや燃え尽き症候群など、心身に多大なダメージを与える可能性もある。
また、フレキシブルな働き方は、仕事とプライベートの境目を曖昧にし、「ワーカホリック」になりやすい傾向がある。
日本とアメリカの仕事観におけるメリット・デメリット
日本とアメリカの両方で共通する概念として、働き方は「個々の生活の質や幸福度に直接影響を与える」ということである。
働き方が個人に直接影響を与えることで、以下の事柄にも多大な影響が出る。
- 社会的な構造
- キャリア形成
グローバル社会での意思決定 など
上記の事柄の具体例は以下の通りだ。
・日本の集団主義的な働き方は、組織の安定性を生み出す一方で、ワークライフバランスやジェンダー不平等の問題を引き起こす可能性もある。 ・アメリカの個人主義的な働き方は、労働者の自主性と自己表現を可能にするが、一方で経済的な不平等や職場での孤立を深める可能性もある。 |
このように日本とアメリカの働き方における、メリットとデメリットを知ることで相互理解につなげ、ビジネスの場でも円滑な人間関係の構築や取引先とのやりとりにつなげてほしい
グローバルな視点で見る働き方
今後、日本とアメリカのみならずさまざまな国において、グローバル化・テクノロジーの進化などにより、働き方は大きく変わるだろう。
例えば日本では、労働力不足と高齢化の問題により、今よりもさらに多様な働き方や柔軟な時間管理が求められる。
テレワークやフレックスタイムの導入、女性管理職の増加など、ワークライフバランスを重視した働き方が浸透することは間違いない。
一方、アメリカでは、AIや機械学習などのテクノロジーが加速することで、より個人主義が強くなる。
一部の労働者は自由度が増し柔軟な働き方を実現できるが、そこに取り残されてしまえば貧富の差はますます激しくなる。
日本もアメリカもフレキシブルな働き方が浸透することそのものは歓迎だろうが、それによって生じるデメリットにも目を向けて、諸問題を解決しなければならない。
文化的な違いを正しく理解し尊重しつつ、自身の働き方を評価し適応することの重要性も深く認識いただきたい。