銀行業界の将来性や今後の見通しとは

銀行業界の将来性や今後の見通しとは

寄稿エージェント:山内 馨介

金融業界は、一昔前は生涯安泰・高年収・大量採用により、就職ランキングでも上位を占めており、将来性の高い業界と評されていた。

しかし、近年は以下の要因で金融業界自体の雲行きが怪しくなってきているといわれている。

  • 銀行再編
  • 少子高齢化
  • マイナス金利政策の継続
  • DX・AIの導入による省人化 など

現職で働いている方は、一度は上記のような要因で不安に感じたことがあるかもしれない。

このような背景を踏まえて金融業界に関しては、ほかの業界で働く人も現在の市場や今後の動向の正しい理解が大切である。

そこで本記事では、金融業界のなかの「銀行」にスポットを当て、現在の市場動向や今後の見通しについて解説する。

金融・銀行業界は、経済の中心を担う重要な業界であるため、ぜひ参考にしてほしい。

金融業界における現在の市場動向

近年、銀行業界は特に地方銀行での収益力が衰えてきて、銀行そのものの収益力が低下している。

収益力の低下を受けて、さまざまな銀行で支店の統廃合が行われている。

大きな要因は下記の2点だ。

1:グレーゾーンの撤廃や改正貸金業法などの影響により、大規模な市場縮小が起きている
2:マイナス金利政策が継続しているため、収益が圧迫されている

上記の要因から、地方・都市銀行問わずすべての銀行で採用予定人数は年々減少傾向にある。

そのため、銀行業界も採用人数を減らす分、ほかの業界と同じくITを活用した取り組みが進んでおり、1人当たりの生産性や収益性がより求められてきている。

金融業界における今後の見通し

金融業界は、テクノロジーの発展により大きく変わろうとしている。

金融業界の変化に対し、世界中の既存銀行で新たなイノベーションを起こせない場合、その92%が10年以内に消滅するとも予想されている。

金融業界における今後の見通しについての予測を3つ紹介する。

1:銀行の窓口や受付業務、データ入力などの仕事は人工知能(AI)の発展により次々に代替されていく
身近な例だと、日本でも小売業でセルフレジが主流になってきている。金融業界でいえば、今後は窓口・受付業務が少なくなるとの予想は容易である。
2:個人向け融資に関しても、ビックデータや人工知能(AI)の活用が進み、代替されていく
既に家計簿・金融機関のアプリでキャッシュフローの状況を把握でき、どのように資産運用すればよいかAIからアドバイスを受けられる環境は多い。
そのため、顧客は自分で検討するためのツール・情報が得られるがゆえに、あえて営業マンからアドバイスを受ける必要性が減ってきている。
3:近い将来は法人向け融資でさえも、人工知能(AI)が行うケースも増えていく
通常運用資産の2%程度の手数料がかかるところ、1%以下の格安で行う企業も登場している。
実際のところ、銀行間での有意差はほとんどなく、結局売り上げを作れるかどうかは営業マンの力量に依存しているのが現状である。
今後は手数料の低さ・高機能なAIの導入が売り上げに影響を与える可能性は高い。

1~3の例からいえるのは、金融業界の一般職・営業職に該当する職種は、AI化の影響を強く受けはじめていることだ。

事務・窓口・ATMのような一般職中心の仕事はコストとして見られるため、今後はより効率化が進んでいくと予測される。

また、営業職もAI化から逃れるのは難しく、個人向け・法人向け問わずAIに業務を代替される可能性は十分にあるといえる。

銀行業界の今後の課題

金融業界の変化に大きな影響を受けるのが銀行業界だ。

銀行業界は、金融業界の変化で生まれる課題への解決策を検討・実行していくことが急務である。

ここでは、銀行業界の課題を2点解説する。

収益性の改善、ビジネスモデルの確立

バブル崩壊から、預貯金の金利は低くなる一方だ。

預金はほぼ利息が付かないため、資産運用を行っている個人は、多少の金融リテラシーさえあれば、株や債券といった投資に回すケースが増える。

その結果、さらに銀行にお金が集まらなくなることで、銀行側が運用できる預金が減り、悪循環を招きかねない。

収益性を上げるための新たなビジネスモデルの構築・検討が急務である。

テクノロジーの活用

銀行が提供するオンラインサービスやスマホアプリは使いづらさが目立つ。

テクノロジー企業の開発するスマホアプリに比べると、明らかにユーザー体験(UX)が劣る。

一方で、ITベンチャー企業では使い勝手のよいアプリを提供する金融系サービスが登場している。

そのため、個人向けのサービスでは国内外問わずに今後さらにリプレイスが起こっていくと予想される。

銀行業界には、テクノロジーの活用を進めつつ、新興企業と組んで新しいサービスを創造するなどの新たな取り組みを進める施策が求められている。

まとめ

数百年の歴史のある銀行業界は、テクノロジーの発展により、ちょうど今変化のタイミングを迎えている。

厳密にいえば、銀行業界は将来性がないのではなく、変化しようとしているフェーズである。

そのため、その変化に順応できなければ、存在価値は薄れてテクノロジーに淘汰されてしまう。

金融業界で勤務する人は、金融リテラシーのみならず、同時にITリテラシーも兼ね備える必要がある。

特に今後は、フィンテック関連の情報には感度を高くしておくのが望ましい。