寄稿エージェント：高橋 駿介
ITコンサルタントとSIerは、どちらもIT業界に属しているが、その役割は大きく異なる。
実際に転職の相談をいただく際にも、「SIerとITコンサルタントの違いがわからない」「SIerからコンサルティングファームへの転職は可能なのか」などの相談が多い。
そこで本記事では、似ているようで異なるITコンサルタントとSIerについて、それぞれの特徴を説明する。
本記事を通して、自分が目指したいキャリアゴールや、身につけたいスキルを検討してみてほしい。
ITコンサルタントとSIerにおけるビジネスモデルの差異
ITコンサルタントとSIerでは、まずビジネスモデルにいくつかの相違点が見られる。
ここでは、双方のビジネスモデルについて解説する。
ITコンサルタント
ITコンサルタントは、ITロードマップの策定やビジネスプロセスの最適化など、クライアント企業に対して戦略的なITアドバイスとソリューションを提供する専門家だ。
彼らはクライアントのビジネスニーズを理解し、最適なIT戦略を策定する役割を果たす。
そのため、カウンターパートも多岐にわたる。
何をシステム化するべきかを全体像から捉えるため、時にはIT部門だけでなく、営業・企画・総務などの現場に近い部門ともやり取りを行う。
若手でも、部長以上の役職者と相対する経験を積める魅力がある。
SIer
SIerは、具体的なシステムの構築と運用にフォーカスし、開発・導入・保守を専門とするITサービスプロバイダーだ。
クライアントからプロジェクトを請け負い、要件定義からシステムの設計・開発・テスト・導入・保守までの一連のプロセスを担当する。
メインとなるカウンターパートは、情報システム部・アプリケーション開発部・基盤部などのIT部門担当者だ。
SIerでは、技術スキルが高く評価される。
プログラミング・システム設計・インフラ管理などの技術的な能力を駆使して、プロジェクトを遂行し、システムの品質と機能性を確保するのが責務だ。
ITコンサルタントとSIerにおける役割の差異
ITコンサルタントとSIerそれぞれの役割は、ビジネスモデルと同じぐらい差異が見られる。
ここでは、双方の役割について解説する。
ITコンサルタント
ITコンサルタントは、ビジネス戦略とITの融合を推進する役割を果たす。
クライアントのビジネス上の課題を分析し、最適な解決策の提案が求められる。
ITコンサルタントとして活躍するには、以下のスキルが必須だ。
- コミュニケーション力
- プレゼンテーション力
- 交渉力
一方で、技術面のスキルはそれほど要求されない。
SIer
SIerは、具体的なシステムの開発と実装に焦点を当てた役割を果たす。
SIerに不可欠なスキルは以下の通りだ。
- プログラミング
- システムアーキテクチャの設計から導入までを実行できるスキル
さらに、上位職種になれば、関係部門を取りまとめる管理能力や、人を巻き込んでプロジェクトを進めるリーダーシップが重宝されるようになる。
また、SIer営業の場合は金額規模が大きく稟議フローも長いため、高いクロージングスキルが求められる。
ITコンサルタントとSIerそれぞれで得られるスキル
ITコンサルタントとSIerは、ビジネスモデル・役割に相違点があるがゆえに、得られるスキルもそれぞれ異なる。
得たいスキルから逆算して職種を選ぶのも一つの方法だ。
ここでは、得られるスキルについて解説する。
ITコンサルタント
ITコンサルタントは、ビジネス戦略とテクノロジーの融合を支援していくことで、以下のスキルを得られる。
- ビジネス戦略の理解と策定スキル
- コミュニケーション力
- プレゼンテーション力
- 交渉力
- 問題解決力
- プロジェクトマネジメント
SIer
SIerは、システムの設計と実装にフォーカスした以下の技術的なスキルを養える。
- プログラミングスキル
- 要件定義と設計力
- システム設計とアーキテクチャの知識
- プロジェクトマネジメント
- チームワーク
ITコンサルタントとSIerそれぞれのキャリアパス
ITコンサルタントとSIerでは、選べるキャリアパスにも違いがある。
ここでは、それぞれのキャリアパスについて解説する。
ITコンサルタント
ITコンサルタントには、以下のようなキャリアパスがある。
- ITコンサルタントとして、より高度な戦略的プロジェクトに関与し、専門性を深める
- フリーコンサルタントとして独立or副業
- 企業の情報システム部門でCTOを目指す
ITコンサルタントは、ITスキルを活用したビジネス戦略において専門的なリーダーシップを発揮できる。
また、フリーコンサルタントとして独立や、事業会社の情報システム部門にエグゼクティブクラスで転籍を叶えることも可能だ。
SIer
SIerは、以下のようなキャリアパスを選択できる。
- システムアーキテクト・プロジェクトマネージャー・テクニカルリーダーなどの役職に昇進する
- 技術スペシャリストやエンジニアとして、特定の技術領域に専念する
- 外資ITベンダーのフィールドセールスとしてセールススペシャリストを目指す
- ITコンサルタントへの転職を叶える
SIerは、技術的なスキルとリーダーシップ能力を持つことで、市場価値を向上させられる。
また、特定の技術分野に専念し、スペシャリストとしての地位を築くことも可能だ。
まとめ
ITコンサルタントとSIerは、IT関連のキャリアとして以下の要素が異なる。
- ビジネスモデル
- 役割
- スキルセット
- キャリアパス
どちらの職種もIT分野で重要な役割を果たすが、適したキャリアを選択するには自身のスキルセットとキャリア目標を考慮する必要がある。
ITコンサルタントは戦略的なITアドバイスとビジネス戦略の統合に焦点を当てる一方で、SIerは具体的なシステムの開発と実装に特化している。
ITコンサルタントやSIerへの転職を検討する際は、各企業の業務範囲に詳しいエージェントに相談し、一緒に解決策を模索することを推奨したい。