寄稿エージェント:吉田 崇朗
私には、これまで2,000名以上の就職・転職支援を行ってきたなかで、一つの経験則として得たものがある。
その経験則とは、キャリアを考えるうえでは、小学校から社会人になるまでの学生時代の深堀りが、カギを握っているということだ。
学生時代の深掘りに関しては、就職活動時にたびたびその重要性が説かれているため、すでに経験済みの方も多いだろう。
しかし、社会人になってからの転職時に関しては、あらためて学生時代の深掘りから自己分析をする方は少ないのではないだろうか。
そのため、就職時のみならず、転職時に関しても学生時代の深掘り・自己分析を意識して行うことが大切である。
本記事では、キャリアを考えるうえでカギを握る「学生時代の深掘り」が、どのような点で重要なのかを解説する。
キャリアを考えるコツは「まずは自身の価値観を知ること」
キャリアを考える際のコツは、まず自身の価値観を知ることだ。
価値観が個人の行動や決断の基盤となり、自身が何を重視し、何に時間や労力を投資するかを決定するヒントとなる。
キャリアにおいても、自分の価値観が何かを明確にすると、どのような職種や業界に興味を持って社会人として活躍したいのかが鮮明になる。
また、価値観を理解していると、自らの強みや弱み、興味や適性をより的確に捉えられる。
自身の強み・弱み・興味・適性が把握できていると、自分に合った職種や役職を選ぶ際の判断基準が明確になり、適切なキャリアパスを設計しやすくなる。
さらに、価値観が合致する職場環境やチームでの仕事は、仕事の満足度やモチベーションを高める要因にもつながるだろう。
つまり、価値観を知ることは、自分のキャリアの方向性を定め、長期的なキャリアの成功と満足を実現するための基盤となるのだ。
学生時代から価値観を紐解く重要性
学生時代は、さまざまなイベントや他人との交流などにより、価値観が形成されやすい時期である。
学生時代は多くの新しい経験をするとともに、自己探求の過程にあり、アイデンティティの形成を目指して過ごすのが一般的である。
また、学びの場である学校では、さまざまな情報や知識とともに、社会の価値観やルールに触れる機会が増える。
さらに、友人やクラスメートとの関わりのなかで、グループ内での価値観や信念、所属の重要性を実感する。
加えてクラブ活動や部活動、学外活動などでの経験は、団体行動を通して自分の役割や責任感を学ぶ場となり、価値観の一部として定着していく。
これらの経験と反省を通じて、学生は自分の信じる価値観を形成していくのだ。
なぜ学生時代の頑張りを認められないのか
時折、今までの人生で頑張ったことがないと自身を卑下する人がいる。
しかし、ほとんどの人は人生のある時期や状況で頑張って取り組んできた経験があるはずだ。
なぜ自分の頑張りを認められないのかについては、主な要因として以下の3つが考えられる。
- 自己評価の低さ
- 成果が出ていない
- 過去の経験や挫折
自己評価の低さ
人は自分の努力や成果を他人と比較して、過小評価してしまうことがある。
特に、高い期待値や他人の成功を目の当たりにすると、自らの努力が十分でないと感じてしまう。
自らの努力が足りないと感じる出来事があると、それが自己評価を下げる要因となる。
成果が出ていない
努力の成果が外部から評価されにくい内容だった場合、自分の頑張りが無駄だったと感じやすくなる。
結果を直接的に努力と結びつける考え方は、目に見える成功や成果がないと頑張りが認められないと感じやすい特徴がある。
他者からの評価を得られない事柄に対し、「成果が出ていない」と感じてしまうと、後々「頑張ったことがない」と事実とは異なる記憶だけが残りやすくなる。
過去の経験や挫折
過去に頑張ったことで失敗や挫折を経験した場合、そのトラウマが影響して、自分の努力を否定的に捉えることがある。
トラウマが出るような経験が繰り返されると、自分は頑張ってもうまくいかないと考えてしまう思考パターンが定着してしまう恐れがある。
自分の頑張りは無駄と感じる思考パターンは、実際のところ一時的な感情や状況に起因するものが多く、実際にはその人が頑張っていないわけではない。
自分を正しく評価し、過去の経験から学べれば、トラウマを乗り越える手助けとなる。
トラウマを乗り越えるには、経験や実績よりも「自分らしさ」が何かを理解するのが重要である。
採用面接でも、結果や実績だけを聞いて評価をするわけではなく、その人自身が何を大事にしているのか、なぜ大事にしているのかを聞かれることが多い。
過去の行動から、自身が感じた事柄やその理由を考えてみることから始めると、自己理解が進んでいく。
キャリア構築で外してはいけないポイント
学生時代の深掘りに活用できる具体的な「自己分析」や「過去の振り返り」の手法は、Webサイトや書籍を活用すればいくらでもある。
さまざまな手法があるなかで、共通して外してはいけないポイントがある。
それは「他者の目線で考える」ことだ。
キャリアを形成するうえでは、あらゆる他者と関わる必要がある。
会社に属する場合はもちろん、起業や独立をする場合もクライアントやパートナーとの関係は切り離せない。
いくら自分自身の理解を深めても、それが他者から見てどう思われるのかを合わせて理解しておかなければ、転職活動もうまくいかないことが多い。
また、起業する場合も、クライアントから求められる要求・要望にあてはまるサービスや商品を提供する必要がある。
常に他者が自分に向ける目線はどのようなものかを念頭に置き、キャリア構築を検討するのが望ましい。
まとめ
他者目線で考える手法はいくつかあるが、最も手っ取り早いのは信頼できるエージェントに相談をしてみることだ。
キャリアのプロであれば、学生時代の深堀りから価値観を明確に捉え、自身の理想に合ったキャリアプランを提示してくれるはずだ。
一人でも多くの方が自身の理想のキャリアを描き、納得感を持って仕事ができる状態になることを願っている。