寄稿エージェント:柳場 昌弘
キャリアを取り巻く環境の変化
今日では、キャリアを取り巻く環境が大きく変化している。その理由として以下のことがあげられる。
・終身雇用の崩壊
経団連会長に続き、トヨタ自動車などが終身雇用の維持が難しいことを明言した。
・定年の早期化
早期退職・希望退職を募集した上場企業は93社に上った。
・JOB型雇用
欧米の雇用形態のスタンダードであるJOB型雇用の流れが大手企業にも及んでいる。
・副業解禁
大手企業を中心に副業解禁の流れが進んでいる。
以上4つの理由から、今後は総合職という概念自体が消失する可能性がある。それに伴い、キャリアにおける責任の所在は企業から自分自身に依ることがスタンダードと予測される。また、テクノロジーの進展でひとに依存していた業務が解消されつつある中で、その人だからできる尖った経験・スキルを身につけていくことが求められるであろう。
人生とキャリア
ゴールであるキャリアビジョンを明確に設定しないと、どのようなキャリアを積むべきかを決めることはできない。目先の求人ばかり追っていくと、得たい人生とは異なるところに辿り着いてしまうであろう。
キャリアを設計する際に重要なことは突出したスキル、知識を身に着けることだ。得意な領域に注力する。そうすることで、向き不向きの検討に囚われず持ち味を活かすことができるであろう。
また、得意な領域を持つことで、特定の領域におけるスペシャリストとなれる。明確なスキル・経験をもつため、それらを活かして働く環境や働き方を選択できるようになるのである。さらに、特定の領域で経験が積みあがっている状態は市場価値が高いため、年収アップに繋がりやすいというメリットもある。
ゴールであるキャリアビジョンを描くにはどうするべきか。重要なことは、「好き」でキャリアビジョンを決めていくことだ。「好き」を外してしまうと長く続けることや高い成果を上げることが難しくなる。加えて、「好き」でキャリアビジョンを描く視点も押さえておくべきだろう。キャリアビジョンを描く視点は、好きな”領域”、好きな”立ち位置”の二つである。
転職活動とキャリア
転職活動はキャリアを立て直す手段の一つである。転職の際にそれぞれの年齢層で評価される点をまとめた。
【20代】ポテンシャル、伸びしろを評価
20代は、ポテンシャル、伸びしろが評価されるため、これまでの経験・スキルはそこまで重要視されない。むしろ、コミュニケーション能力や志望動機の具体性などが重要になっていく。
【30代】経験・実績を評価
30代は20代と打って変わり、経験・実績・スキルを評価されるようになる。さらに、同業界、同職種での転職が一般的となる。
【40代】即戦力性を評価
40代は、経営課題の解決等、即戦力性を評価されるようになる。30代中盤以降、新しいところに挑戦しようとしてもなかなかいけないことが多いという現実もある。
転職活動をするうえで大事なことは、キャリアの目的、つまり自身の関心や将来ありたい姿に立ち返り実現方法を検討することだ。
また、ポテンシャル採用の可能性は年々下降していくので、業務経験のない新しい領域へは早めにチャレンジすることも留意しておきたい。人材市場の市況を活用するためにも、若いうちからキャリア設計をし、実現に向け動き出すことが重要だ。さらに、自身の得意な領域など明確な売りを作っておくと転職の備えとなる。
弱いところを中途半端に補強した丸いキャリアより、突出したスキル、知識こそが評価されるためだ。
キャリアの安定性は、終身雇用の時代においては企業が保証してくれていたものであった。しかし、JOB型雇用の到来とともにキャリアを自身で築かなければいけない時代が来るのである。