寄稿エージェント:安田 大綺
人が成長するための考え方は大きく二つある。
一つは、弱みを克服することで、もう一つは強みを伸ばすことである。
ただ、一般的には短所を改善させる方向に促すことが多い。
要因の一つとしては、日本の学校教育が苦手をなくして満遍なく成長できるように促す方針を採用しているからである。
弱点を克服して成長する方法自体に問題があるわけではない。
ただし、キャリアの構築に対しては、自己分析を行って自身の強みを把握し、それを伸ばしていくことが重要である。
なぜなら組織内での自分の弱みは、弱みを強みとするほかの人材にカバーしてもらえればよいからだ。
本記事では、キャリアを考えるにあたって重要な自己分析の必要性や方法などを解説する。
効果的な自己分析の方法を知りたい人は、ぜひ参考にしてほしい。
キャリアにおける自己分析の必要性
キャリアを考えるにあたって、自己分析の実施は必須事項と言っても過言ではない。
自己分析の必要性が高くなる理由としては、自身の強み・弱みを理解しておかなければ、企業とのミスマッチが起きる可能性が高くなるからである。
ミスマッチが起きると、業務を通じた成長・やりがいを感じられない恐れがある。
自身が望むキャリアを歩んでいくには、自身の得意を活かし不得意をカバーできる環境に身を置くのが望ましい。
ただ、自己分析ができていたとしても、知名度・年収が高いなどの理由で企業を選んでしまう人が一定数いる。
知名度・年収が高いなどのステータスは、それ自体にメリットがあっても、キャリアに対してのメリットは少ない。
それゆえに、入社後キャリアに悩んでしまう人が出てきてしまう。
自己分析によって強み・弱みを明確にできた後は、キャリアのプロである転職エージェントに相談し、適切な環境を見つけるのが効果的である。
効果的な自己分析の方法
ここでは、具体的に自己分析の方法について二つ紹介する。
人生グラフの作成
一つ目は、幼少期から現在に至るまでの人生グラフを作ることである。
人生グラフを作成する際に、意識したい項目は以下の通りだ。
・何を意識して選択してきたか
・夢中になれたことは何か
・長く続けられたことは何か など
上記の項目を振り返ることで、自身の強み・弱みは何かが捉えやすくなる。
例えば、幼少期から大学に至るまでテニスを続けているのなら、「集中力が高い」または「忍耐力がある」「自分の課題に対してPDCAサイクルを回して改善するのが得意」などの強みが見えるだろう。
このように自身の原体験が、自己分析の手がかりになるはずだ。
ストレングスファインダーの活用
二つ目は、ストレングスファインダーを活用することである。
ストレングスファインダーは、米国のGallup社が約40年にわたって行ってきた「人間の強み」に関する研究に基づいて、34の資質を言語化したものである。
この研究で、自分の得意なことに取り組んでいる人は、そうでない人よりも6倍も意欲的かつ生産的に仕事に打ち込む傾向があると判明した。
また、得意なことに取り組んでいる人は「生活の質がとても高い」と述べる傾向が3倍以上に達するそうだ。
巷では、「努力をすれば、何にでもなりたいものになれる」と考えている人もいるが、ストレングスファインダーによればそれは間違いである。
例えば、業績トップのセールスマンが、努力をすれば優秀なマネージャーになれると考えている場合、まずは毎晩遅くまで働いてキャリアアップを目指すだろう。
しかし、努力が実った数年後に、実は自分にはマネージャーに必要な「人を育てる才能」が備わっていないことに気づくケースがある。
マネージャーを目指した努力が全て無駄になるわけではないが、セールスマンとしての努力をしていれば、さらに会社に貢献できただろう。
この例では、マネージャーを目指す前に、ストレングスファインダーを用いて自己分析を行っていれば回避できた可能性が高い。
しかし、今の社会システムでは昇進・昇給を目指す場合、ほとんどの企業は、これまでと異なる役割を求める傾向が強い。
異なる役割が得意な内容でなければ、成果を上げることが難しくなり、やりがいを感じることもできなくなる。
仕事がうまくいかず生活の質も下げてしまわないように、ストレングスファインダーを活用した自己分析が重要だ。
自己分析で浮き彫りになった「強み」をどう活かすか
自己分析で判明する強みにはいくつか種類があるが、ここでは代表的なものを二つ紹介する。
強み | 概要 |
---|---|
他者や物事などを個別化できる | ・その人の特徴や個性を一般化したり類似化したりせずに、個々人の違いに注目できる ・本能的に人の性格や動機・考え方を観察しているため、その人に合った言動・行動が自然と行える ・組織においては、メンバーの特性を掴み、細やかなフォローアップができるリーダーとして活躍できる |
学習欲がある | ・内容や結果よりもプロセスに刺激を感じる ・着実で計画的な過程を経て、能力を身につけた状態に魅力を感じる ・早い段階で学んだことを復唱・練習する努力をし、スキルを習得するにつれて自信を高められる ・新しいスキルや知識の習得、環境変化への適応が求められるシーンで活躍できる |
上記で取り上げたような強みには、見方を変えれば弱みも内包されていることがほとんどである。
だからこそ、キャリアを積んでいくことに最も大切なことは「強みを活かすこと」である。
なぜなら、自身の弱みは、ほかの資質を持った方が補えるからだ。
例えば、考えより行動を優先する「活発性」の資質を持つ方は、戦略立案が得意な「戦略性」の資質を持つ方をパートナーにすれば、お互いを補える。
企業が成長するためには、それぞれの強みを活かせるチームや組織を作り上げることがベストだ。
それゆえに、企業の人材採用においても、どのような人材を採用すべきか、事前に要件が決まっていることも多い。
自分が望むキャリアを実現するためには、チーム・組織づくりの特性を理解し、要件に適合する「自身の強み」を自己分析により理解し、伝える必要がある。
全てのキャリアに悩む人が、効果的な自己分析を行った上で、より充実したキャリアを構築していけることを願っている。