販売・サービス職におけるキャリアの考え方。現職で意識すべきキャリア設計とは

販売・サービス職におけるキャリアの考え方。現職で意識すべきキャリア設計とは

寄稿エージェント:今西 航平

販売職のキャリアは、社内でキャリアアップを目指す場合もあれば、販売職での経験を活かしてほかの業界へキャリアチェンジする方法もある。

充実したキャリアを築くためには、自分の得意不得意や理想の働き方、やりがいなどを踏まえて、どのようなキャリアを築いていくかを定めることが大切である。

正社員で働きたい女性のための転職サイト「女の転職type」の調査では、「別業界、別職種に転職をしたい」と回答した販売職経験者が70%を超えていた。

多くの販売職に従事する人が、今後のキャリアについて悩んでいることがわかる。

そこで本記事では、販売職のキャリアアップ・キャリアチェンジについて解説する。

現在販売職として働いていて、今後のキャリアに迷っている方はぜひ参考にしてほしい。

販売職における2通りのキャリアプラン

販売職で目指すべきキャリアパスは、大きく分けると2通りだ。

・店長や本部での商品企画・プロモーションなどへの「キャリアアップ」
・販売で培った経験をもとに、マーケティングや企画職などへの「キャリアチェンジ」

ここでは、キャリアアップとキャリアチェンジそれぞれの特徴について解説する。

販売職のキャリアアップ

キャリアアップは、社内で職位を上げていくことを指す。

販売職におけるキャリアアップの一例は以下の通りだ。

・販売スタッフから店長へ
・店長から本部の管理・販促系へ
・本社勤務として自社商品の仕入れ業務や店舗開発、人事部へ など

ただし社内でのキャリアアップは、ポストの空き具合によって部署異動の時期が左右される。

そのため、例えば「3年後に企画職に就く」「5年後にスーパーバイザーに就く」などのキャリアアッププランを立てることが難しい。

また、そもそも販売スタッフから商品企画・プロモーションへとキャリアアップすること自体が容易ではない。

販売スタッフとしてよい成績を出したとしても、最低3〜5年の接客経験が必要な場合もある。

社内でキャリアアップを考える場合、可能な限り社内状況を把握しながら、状況に応じた柔軟な対応ができるように考えておくことを推奨する。

キャリアチェンジ

販売職から別の業界・職種へキャリアチェンジすることも可能だ。

販売職から考えられるキャリアチェンジの代表例は以下の通りである。

・営業職
・マーケティング
・企画職 など

上記のような職種は、販売職の業務を通して得た経験やスキルを活かしやすく、比較的キャリアチェンジに挑戦しやすい傾向にある。

特に、営業職へのキャリアチェンジは、これまでの顧客折衝経験を活かしやすいため成功の可能性が高い。

一方で、マーケティングや企画職へのキャリアチェンジは、営業職に比べると多少難易度が高まる。

そのため、マーケティング・企画職へのキャリアチェンジは、最終的に到達できるように段階を踏んだキャリア戦略を構築して、挑戦することが望ましい。

また、キャリアチェンジのしやすさは年齢やこれまでの経歴などにも左右される。

キャリアアップと比較すると、キャリアチェンジの難易度は高いため、戦略的かつ計画的にキャリアを考える必要があるだろう。

販売・サービス職のよくある悩み

販売・サービス職に従事する人は、以下のような悩みを抱いていることがある。

・休みが少ない・不定期
・仕事がきつい
・年収が割に合わない
・市場価値への不安
・スキルを高めたい など

一方で、販売職は顧客から直接感謝の言葉をいただける希少な仕事でもあり、その点にやりがいを感じる人も多い。

また、常にコミュニケーション力を求められる職種であるため、高度なコミュニケーションスキルを身につけられる環境で勤務できることもメリットだ。

「悩みがあるから別の業界に転職しよう」と短絡的に考えるのではなく、自身が望む将来像はなにか、そして理想を叶えるために現在のポジションからとるべき行動はなにかを考えてみてほしい。

そうでなければ、目的や目標を設けないまま目先の理由だけで転職を繰り返すことになる。

大切なことは将来像を鮮明にしたうえで、そこから逆算し現在とるべき行動・役割を認識することなのだ。

キャリア設計に役立つ販売職の役割の変化

販売職に関わる業界の多くは、コロナ禍を経て大きな転換期を迎えている。

それに伴い企業がブランドや店舗の在り方を見直すとともに、販売員が担う役割も大きく変化しているのだ。

現在、販売員に求められる役割の一例は以下の通りだ。

・実店舗での接客にとどまらずデジタルとリアルをつなぐことによる売上創出
・店舗やSNSを通じたブランドの発信
・SNSやECプラットフォームを活用して、自身をPRすることによるブランド認知の向上
・ブランドや販売員自身のファン創出 など

インフルエンサーや推し活などが流行する昨今では、企業に属する一販売員であっても、企業が個人の実力や意欲に依存する割合が高まりつつある。

ブランドや販売員がネット上でポジティブな話題として取り上げられれば、その宣伝効果は計り知れない。

このように外的要因からの影響も受けやすいのが小売・サービス業の特徴であるため、改めて足元だけでなく中長期的な目線でキャリア形成を行うことを推奨する。

現職で意識したい考え方

販売員としてのキャリアを検討するにあたって、特に意識しておきたいのが採用目線からの「年齢対比」と個人の「ポータブルスキル」である。

年齢対比

キャリアにおける年齢対比とは、企業から求められる年代ごとの「ポテンシャル」と「業界親和性」のことを指す。

年代ごとのポテンシャルと業界親和性の割合は以下の通りだ。

年代ポテンシャルと業界親和性の割合概要
新卒ポテンシャル:100%
業界親和性:0%(問われない)
学生時代に力を入れていた事柄、人としてのスタンス・コミュニケーション能力が主な判断材料で、業界親和性は問われない
第二新卒ポテンシャル:70%
業界親和性:30%
・ポテンシャル:社会人として基礎能力がある前提で、ストレス耐性 や成長意欲、コミュニケーション能力が高い基準で求められる
・業界親和性:業務のスピード感や構造的な思考力などから、採用後にどれだけ早く業務をキャッチアップし成果を出せるか判断される
20代後半ポテンシャル:10~30%
業界親和性:70~90%
・ポテンシャル:マネージャークラスの活躍ができるかを見られる
・業界親和性:顧客・商材・業務内容の3点でこれまでの経験がどれぐらい活かせるかを判断される

年代が上がるごとに、個人の持つポテンシャルよりも業界親和性が重視される傾向が強くなる。

そのため、いかに業界親和性を持つ人材なのかを採用の場でアピールするかが重要だ。

ポータブルスキル

販売・サービス職では、目標数字を課せられることが少なく、業務親和性の訴求が難しい傾向にある。

販売・サービス職が、業務親和性を訴求する際に効果的なのが「ポータブルスキル」だ。

ポータブルスキルは、特定の業界・職種にとらわれず、どのような環境でも活かすことができるスキルの総称である。

ポータブルスキルの一例は、以下の通りだ。

・PCをどれくらい使いこなせるか
・業務に関する数字を意識して仕事をできるか
・「目標→課題→仮説→実行→検証→結果」の順で考えて実行できるか など

上記のようなポータブルスキルがあることをアピールできれば、販売・サービス職に対する業界親和性を効果的に訴求できる。

年齢対比に合わせた業界親和性を検討しつつ、キャリアアップ・キャリアチェンジを目指すことが望ましい。