転職活動のゴールは転職ではない。転職における本来の目的と役割とは

転職活動のゴールは転職ではない。転職における本来の目的と役割とは

寄稿エージェント:今西 航平

近年、転職を視野に入れて働く社会人が増加している。

キャリアについて個々人が検討しなければならない今の時代では、転職を通してキャリアアップやキャリアチェンジをすることは当然であり、有益な手段の一つだ。

ただ、「転職を成功させること」そのものがキャリアのゴールと捉えてしまっている人も散見される。

そこで本記事では、転職・転職活動の真の目的を紹介するとともに、自身のスキル・経験の棚卸しに効果的な方法を解説する。

キャリアに悩み、転職を検討している人はぜひ参考にしてほしい。

転職はあくまで「手段」である

転職がゴールだと考えている求職者は意外と多いが、実際には目標を達成するための手段にしかすぎない。

先を見据えたキャリアを考えるには、転職・転職活動の真の目的を理解しておく必要がある。

ここでは、転職・転職活動の本来の目的や役割を解説する。

転職・転職活動の目的とは

ここでは、転職と転職活動それぞれの目的は何かを解説する。

転職

転職活動のゴールを転職と捉えている求職者が散見される。

しかし、その認識は間違いだ。

なぜなら、転職した先に叶えたい想い・将来像があるからである。

以下に一例を紹介する。

・キャリアアップ・キャリアチェンジをしたい
・年収を上げたい
・ワークライフバランスを整えたい など

逆説的にいえば、上記のような叶えたい想いや将来像がないのに転職を行えば、ミスマッチを生むだけでなく、その後のキャリアにも大きな影響を与えかねない。

転職は自身の希望を叶えるための手段の一つであり、転職が成功してからが本番なのだ。

また、自身の希望を叶える手段は転職だけでなく、以下のような手段もある。

・現職に留まる
・社内異動をする
・副業をする など

転職にこだわらず、上記のような最適な手段を選択するためには、次にご紹介する転職活動の目的や役割を理解する必要がある。

転職活動

転職活動について、「希望を叶えるための行動」と捉えている求職者は多いが、転職活動には別の側面がある。

その側面とは、転職活動を進めることで、自身のキャリア・人生における「現在地」を把握できるということだ。

現在地とは、主に以下のような要素のことを指す。

・自分がどのような人間なのか
・どのような人生を歩みたいのか
・自分の市場価値は社会からどのように評価されるのか など

また、上記のような現在地に加えて、転職活動を進めることで将来像に対して必要な実績や経験、スキルも可視化できる。

転職活動を通じ、人生の目的・将来像を想像しながら、選択肢を検討していくのが転職活動本来の意義である。

そのため、転職活動のゴールは転職ではなく、その先の活躍まで見据えるべきである。

キャリアは自ら選択する時代へ

これまで多くの人にとってキャリアは、終身雇用を前提に組織から与えられるものであった。

しかし、IT技術の発展や新型コロナウイルス感染症をはじめとする外的要因により社会が大きく変化し、「VUCA(ブーカ)」と呼ばれるように不確実性が増している。

それゆえ、企業は終身雇用を維持することが難しくなった。

企業が終身雇用を担保できなくなると、自ずと転職する人が増えていき、キャリアにおける選択肢も徐々に増えているのが現状である。

例えば、以下の流れは今後も加速するだろう。

・早期退職者の増加
・フリーランスへの転身
・本業と副業やパラレルキャリアの両立 など

このように、キャリアの選択肢が増えれば、これまでのように組織に縛られず行動できる人も増え、「働く」ことの意味合いは「お金を得る手段」から「自己実現そのもの」に変化しつつある。

働き方・働く場所、さらには働く時間さえも選べるようになり、個人が多様かつ自由にキャリアを描ける時代なのだ。

しかし、同時にキャリアの自由度が高いからこそ、個々人がこれまで以上にキャリアと向き合い、選択し、その責任を全うする必要がある。

多様な時代だからこそ、自身が望むキャリアを実現するためには将来像を描き、現在地を把握したうえで、必要な経験やスキルを明確にする必要がある。

そのうえで、自分が何ができてどのような価値を発揮できる人材なのかをアピールしなければならない。

キャリアの選択肢は年齢とともに狭まるので、若手の頃から将来像を実現するための経験やスキルを把握しなければ、ビジョンの実現は難しいだろう。

キャリアにおいて現職に残るメリット・デメリット

とある調査結果では、20~70代における転職経験者は60%強にまでのぼると発表されており、今後も転職経験者は増え続けるだろう。

一方で、現職に残ることもキャリアにおける選択肢の一つであることには変わりない。

ここでは現職に残るメリット・デメリットを改めて整理しておきたい。

現職に残るメリット・安心感がある
・社内人脈や社内営業がしやすい
・各ポジションによる待遇を把握しやすいため、出世へのイメージも湧きやすい など
現職に残るデメリット・業務に対し飽きやマンネリを感じる
・自身の市場価値を把握しにくい
・スキルの伸びを感じにくい など

転職を検討する前に、現職に残るメリット・デメリットを改めて認識したうえで、業務の棚卸しをしながら、現職での活動内容を振り返る必要がある。

経験・スキルの棚卸しをして振り返ることが重要

現職で得た経験・スキルの棚卸しには、以下のフレームワークを用いると可視化しやすい。

・期間 (202〇年〇月~202〇年〇月)
・業務内容/誰にどのようなモノや価値を提供しているのか
・得た経験/スキル/学びもってほかに活かせる選択肢は何か
上記を変化があったタイミングごとに作成していく

フレームワークを用いて棚卸しを進めるなかで、自身の現在地を正しく認識することが大切である。

半年に1回・1年に1回でも棚卸しをすることで、日々の業務のなかでは気づけなかったことや新たな課題を見つけられる。

仮に、経験やスキルの更新・追加が止まっているのであれば、キャリアについて考えるタイミングなのかもしれない。

まとめ

キャリアの自由度が高まるにつれて、個人の責任も大きくなる。

キャリアのオーナーシップは、企業が責任を持つものではなく、自身で持つものだ。

キャリアの終盤に差しかかかったときに、「よいキャリアだったな」と思えるような道を歩んでもらえたら、エージェント冥利に尽きる。