寄稿エージェント:蔭野 正人
近年、IT・SaaS業界を中心にインサイドセールスのニーズが劇的に高まっている。
インサイドセールスは組織の営業成果を上げるため重要な役割として注目されているが、実際に具体的な役割は明確ではない人も多い。
そこで本記事では、営業活動におけるインサイドセールスの役割や重要性、メリットを解説する。
インサイドセールスの役割
インサイドセールスは、もともとアメリカが発祥の営業手法だ。
国土の広いアメリカでは取引先への訪問が困難であるため、訪問せずに電話やメールでやりとりをする手法が広まった。
国土が比較的狭い日本ではあまり浸透していなかったが、リモートワークの普及を皮切りに、徐々に注目されるようになった。
ここでは、インサイドセールスが担う役割を4つ解説する。
見込み顧客へのアプローチを行う
インサイドセールスの重要な役割が、見込み顧客へのアプローチだ。
アプローチ方法は以下の2種類に大別される。
業務名 | 概要 |
SDR(Sales Development Representative) | 反響型: 問い合わせや資料ダウンロードなどインバウンドのリードへ対応する |
BDR(Business Development Representative) | 新規開拓型: 営業担当自らがダイレクトメールやメールなどで顧客獲得を目指す |
上記のうち、多くの企業ではSDR型が導入されている。
ただし、SDR型でインバウンドのリード獲得が難しい場合には、BDR型のインサイドセールスも展開しなければならないだろう。
リードナーチャリング(見込み顧客の育成)
BtoBビジネスは、サービスの検討期間が長くなりやすく、短期間で商談につながらないリードも存在する。
しかし、一度のやりとりで商談につながらないからといって、そのリードを放置することだけは避けたい。
なぜなら、放置している間、リードが競合他社のサービスを検討していることに気づくことができず、そのまま他社に契約されてしまう可能性が高いからだ。
そこで鍵を握るのが「リードナーチャリング」だ。
リードナーチャリングとは、サービスの検討度合いに応じて、リードと適切なコミュニケーションを取り、購買意欲を醸成することで受注や商談へつなげるマーケティング手法のことである。
リードナーチャリングの方法はさまざまだが、インサイドセールスとマーケティング担当者が連携して、架電・メールマガジン・SNSなどを活用するとよいだろう。
時には、Webコンテンツやセミナーへ案内するのも効果的である。
見込みの高いリードをフィールドセールスに流す
インサイドセールスを導入している企業では、インサイドセールスとフィールドセールスを分けている場合が多い。
分業化されている場合、インサイドセールス側で見込みの高いリード(=ホットリード)だと判断した際に、そのリードをフィールドセールスに引き渡すのが一般的だ。
フィールド側は、インサイドセールスから引き継いだ内容をもとにアプローチができるため、スムーズな提案やクロージングが可能となる。
顧客のリアルな声を集める
多くのリードとつながるインサイドセールスは、見込み顧客のリアルな声を収集するのに最も適した立場だ。
例えば、以下のような声を集められる。
・ 資料ダウンロードの意図
・ サービスに対する疑問点や不満
・ Webや資料に対する改善点 など
マーケティングをはじめとするそのほかの担当者は、顧客の意見に触れる機会はほぼ持てない。
そのため、インサイドセールスが集めた顧客の声は、自社サービスやマーケティングのブラッシュアップに大いに役立つのだ。
インサイドセールスのニーズが高まる背景とは
インサイドセールスのニーズが高まっている背景には、さまざまな社会情勢や消費者の変化が関係している。
ここでは、その背景について解説する。
企業の購買行動の変化
ITの発展と普及に伴って情報源がWebに移行することで、誰でも簡単に必要な情報を手に入れられるようになった。
実際に「Web上の情報をきっかけにBtoBの製品やサービスを検討した」というケースが約半数を占めることもある。
そのため、旧態依然の「御用聞き」のような営業スタイルには限界が訪れているのかもしれない。
能動的な見込み顧客に対して、いかに「Web上で有益な情報を提供できるか」「リードとの接点を作れるか」が重要になっている。
人手不足による働き方改革の推進
少子高齢化に伴い、日本における労働人口は今後も減り続けるだろう。
日本国内の企業で働き方改革が行われているのは、人手不足対策として一人ひとりの労働生産性を上げることが急務だからだ。
なお、営業職に関しても人材不足の影響を非常に多く受けている。
人手不足の営業現場では、飛び込み営業や1件ずつ架電してアポを取るような営業スタイルの維持は難しいのが実情だ。
そのため、一人の社員が複数の営業先を管理しやすいインサイドセールスの需要が高まっている。
サブスクリプションサービスの増加
昨今、買い切り型ではなく毎月利用料を支払う継続課金型「サブスクリプション」のビジネスモデルへとシフトしつつある。
サブスクリプション型ビジネスは「多くの利用者に、長期間継続利用してもらうこと」を前提としているため、1ヵ月あたりの費用は低額となる。
つまり、1件ごとの売り上げは低い分、案件を大量にこなす必要があり、可能な限り営業活動を効率化しなければならないのだ。
そのためサブスクリプションビジネスでは、一人で複数の営業先を担当しやすいインサイドセールスとの相性がよい。
非対面営業のニーズ拡大
社会情勢の変化によって、Web会議ツールを活用した非対面での営業ニーズが高まっている。
Web会議ツールはもちろん、オンライン商談に特化したツールも登場し、営業は変容のときを迎えているのだ。
「対面でのやりとりが減った分、必要な情報が入手しにくくなった」と感じている見込み客とオンライン上での接点をつかめれば、大きな営業チャンスとなり得る。
世の中のニーズに合わせて、非対面での営業活動=インサイドセールスの活用を促進していくことが重要だ。
インサイドセールス導入のメリット
最後に、企業側の視点でインサイドセールスを導入するメリットを紹介する。
業務の効率が上がる
インサイドセールスは顧客を訪問する必要がなく、架電業務に集中できるのがメリットだ。
1日に多くの顧客へアプローチでき、限られた時間を有効活用できる。
また、時間や交通費などのコストがかからないため、効率よく多くのリードとつながれるのだ。
案件の創出機会が増える
インサイドセールスでは、すぐに案件化しなかったリードに対しても継続的なコンタクトが取りやすい。
メルマガやSNSなどで連絡を取って、見込み顧客の検討度を高めることで、商談の創出につなげられるのだ。
フィールドセールスでは追跡できない検討度の低い見込み顧客に対しても、効率よく・幅広いアプローチが可能である。
商談化率や成約率が向上する
インサイドセールスは、見込み顧客の行動・対応履歴などの重要な情報を保持している。
確度の高い情報を踏まえてフィールドセールスが提案を行うことで、効率的な顧客対応や成約率の向上につながる。
また、フィールドセールスのアプローチ結果をインサイドセールスにフィードバックすることで、双方に上質なナレッジが蓄積するのもメリットの一つである。