寄稿エージェント:多田 有花
一般的に、男性よりも女性のほうがキャリア形成は難しいとされている。
日本では、女性はキャリアとプライベートを天秤にかけ、いずれかを諦めることが多かった時代もあった。
しかし、昨今は終身雇用の終焉とキャリア観の変化により、女性のキャリア志向も高まっている。
一方で、いまだ女性特有の障壁に対応しなければならないのも事実である。
本記事は、ジェンダー論を説くものでもなければ、女性活躍推進を叫ぶものでもない。
現状はまだ存在する一定のジェンダーギャップについて、目を背けることなく、キャリアの客観視ができるよう本記事を活用いただければ幸いである。
女性にこそ求められるキャリア戦略について考察していきたい。
女性のキャリア形成における障壁
過去をさかのぼれば、「結婚したら家庭に入り育児に専念することが当たり前」だった時代はたしかに存在した。
現代は、そこからの脱却を目指し「結婚・出産・育児を経ても働き続けることが当たり前」とされる時代への過渡期ともいえる。
これにより、女性が自由にキャリアを選択できる前向きな風潮が醸成されてきている。
しかし、プライベートとキャリアを等しく実現しなければならないハードな側面も出てきていることは否めない。
過渡期ならではの特徴ともいえるが、この障壁を乗り越えることこそが今後のキャリア形成には不可欠だろう。
なにが障壁となるのか
いつ結婚して子どもを産み休暇をとるのかといった社員個人の計画は、経営側からみるとまったく関係がない。
企業からすれば、組織の成長のために全力で仕事にコミットできる社員のほうが貢献度が高いのは事実である。
それゆえに、ライフイベントによって企業に割けるリソースが制限されてしまう社員は、貢献度が低いとみなされてしまうのだ。
極論かもしれないが、こうした認知は実に多くの組織で起きており、この障壁に向き合うことこそが女性のキャリア形成における第一歩である。
女性管理職比率
障壁を示す一つの要素として、女性管理職比率の低さが挙げられる。
日本企業の女性管理職比率は、約12%と低い水準にとどまり、キャリア形成において課題が存在することを示唆している。(※参考1)
キャリア形成に影響を与える要因として、長時間労働や働き方の制約があるだろう。
働き方改革は叫ばれてはいるが、長時間労働や毎日出社を求める企業はいまだに多い。
こうした働き方は、家庭と仕事の両立を目指す人にとって高いハードルになる。
また、男性社員の育休取得率は向上している(※参考2)ものの、まだまだ女性は家庭や子育てを優先すべきとの声が社会的に多いのも実情である。
これらの女性の昇進を妨げる要因を解決するために、現在では働き方改革やキャリアアップ支援制度の導入に取り組む企業も多い。
もちろんさまざまな課題はあるが、時代の変化と企業努力によって、女性がキャリアを実現していくための土壌は、少しずつ整えられていくだろう。
一方で、キャリア選択の自由度が増すからこそ、自然と自身のキャリアに対してのオーナーシップが求められていく。
オーナーシップを軽視すると、最終的にキャリアかプライベートかどちらかを諦めざるを得ないという状態に陥る可能性がある。
そうならないためにも、女性こそしっかりとキャリア戦略を持って進んでほしい。
※参考1:厚生労働省の「2021年度雇用均等基本調査(企業調査・事業所調査)」結果|独立行政法人労働政策研究・研修機構
※参考2:男性が「育児休業」を取らない理由とは?育休取得率を上げるためのポイント|ボーグル
女性のキャリア戦略
ここでは、女性のキャリア戦略を構築するためのポイントと習得しておきたいスキルについて解説していく。
ライフイベントの影響が小さいうちに働く
出産や育児など家庭にフルコミットするまでに、どのような経験を積んできたのかが、復帰後のキャリアに大きな影響を与える。
ライフイベントによりキャリアが中断される年齢には、個人差はあるが、いずれにしても30代になってからキャリアを考えるのでは遅いだろう。
なぜなら、ライフイベントを迎えてキャリアを立て直すことは、組織的にも本人的にもキャリアプラン作成に圧倒的な時間が不足しているからだ。
キャリア形成を考える際には、まず自身がキャリアに費やせる時間と年齢の重みを捉え、30代以降の状態を設定してほしい。
そして、キャリアを逆算して20代のうちにとるべき経験や、スキルを身につけていく必要があるのだ。
20代で取るべき経験やスキル
それでは、どのような戦略を持って20代を進めるべきなのだろうか。
各業界や職種ごとに差異はあるが、ある程度意識すべき共通項はいくつかある。
ここでは、それらについて解説する。
明確な実績を上げる
将来の目標にかかわらず、まずは目の前の業務で実績を上げることは必要である。
とくに、家庭にフルコミットする直前の2~3年でどのような実績を上げてきたのかは、復帰後のアサインに大きく影響する。
いつキャリアの中断が起こってもいいように、実績を用意しておくことが重要だ。
「目の前のことを着実に推進できる人にこそチャンスは訪れる。」
これは業界や職種が変わっても同じことが言えるだろう。
リーダーシップを育む
プロジェクトに参加し、プロジェクトリードやチームマネジメントの経験を積むことは女性のキャリア形成において役立つだろう。
これらを経験することで、以下の能力を養える。
- コミュニケーション力
- 問題解決能力
- チームマネジメント力
- ステークホルダーマネジメント力
- 計画の立案力
- タスクやリスク管理能力
このように選択肢を多く持つことは、社内外問わずゆとりを持ったキャリア形成にもつながるのだ。
社内ロールモデルを見つける
自身のロールモデルとなるような先輩社員を見つけることも重要である。
もし理想とするロールモデルが存在しない場合、その組織には、自身が望むキャリアの土壌が整っていないことを示している。
また、復帰後に役立つであろう社外ネットワークを構築しておくことも有効だ。
復帰後のキャリアは社内だけではない。
もしも社内にロールモデルが見つけられない場合、社外も含めたキャリアパスも検討すべきである。
それぞれに合った企業選び
以下のように、どのような規模感の企業を選ぶかも重要である。
- 育成カリキュラムや福利厚生の整った大手企業
- 裁量権や成長環境のあるベンチャー企業
もちろん、どちらを選ぶのが正解ということはなく、自分にはどちらが合っているのかを見極める必要がある。
その際にも、上述の3つの観点は意識しておくとよいだろう。
とくに女性の場合は、3つめの社内ロールモデルが重要な視点となる。
まとめ
キャリア形成においては、男女問わず各人に即した正解はなくとくに女性には、まだまだ乗り越えるべき障壁が多いのも実情だ。
だからこそ、しっかりと将来像から逆算してキャリア戦略を持つことが肝要となる。
年齢と時間の重みに選択肢を奪われることなく、強かにキャリアを築いていってほしい。