寄稿エージェント:徳 若菜
マーケティングという単語を耳にする機会が増え、マーケ領域でキャリアを形成していきたいというニーズが高まっている。
しかし、マーケティングにも様々な手法があることをご存じだろうか。本日はその中の一つであり、近年需要が高まっているコンテンツマーケティングについてご紹介したい。
コンテンツマーケティングとは
コンテンツマーケティングとは、「ユーザーの課題を解決するために高品質な情報を発信することで顧客との接点を生み出し、見込み顧客を獲得から自社の顧客として育成する」という一連の流れを指す。
代表的な手法として、コンテンツSEOやSNSアカウント、メールマガジンなどが挙げられるだろう。
企業側が自社のサービスや商品を一方的に伝える広告などと異なり、ユーザーにとって情報価値が高く、関連性や一貫性のあるコンテンツであることが重要である。
まとめると、コンテンツマーケティングの目的は大きく4つに分けて考えることができる。
①コンバージョンの獲得
②顧客のナーチャリング
③認知拡大
④カスタマーサクセス
コンテンツマーケが求められている背景
今、多くの企業でコンテンツマーケが求められている理由として、「プル型マーケティング」への転換が挙げられる
「プル型マーケティング」とは、顧客が情報収集しているフェーズで相手が求めている情報を提供し、そのコンテンツによって集客を行う方法を指す。近年、SNSやウェブメディアの発達・普及に伴いユーザーが日々触れる情報量が急激に増加した。そのため、ユーザーは自ら情報の収集や取捨選択をすることが可能となり、購入前に情報収集を行うことが一般的になっている。
従来の「プッシュ型マーケティング」といわれる企業からの一方的なマーケティングが忌避される傾向が強まる一方で、ユーザーのニーズに合った情報の提供ができれば自然と顧客接点を生み出すことが可能な「プル型マーケティング」の需要が高まっているのである。
さらに、近年注目されている消費者の購買モデルである「Zero Moment of Truth」、すなわち「ZMOT理論」もコンテンツマーケの普及を後押ししている。
「ZMOT理論」とは、顧客が購入の意思やブランドのイメージを決定する瞬間は、顧客が来店などのファーストアクションを起こす前、つまり「ゼロの段階」で起きているというものである。
この考え方によると、消費者の購買モデルは、「刺激」→「情報収集」→「購入」→「体験」という4ステップに分かれている。そして顧客は「情報収集」を行った際に、自分の集めた情報に基づいて意思決定を行う。
誰もがネットを利用する現在では、情報収集のタイミングで顧客と接触を図ることが何よりも重要である。だからこそ、ユーザーにとって価値のある情報を発信していくコンテンツマーケティングは有用であり、運用ノウハウの需要も高まっている。
コンテンツマーケティングのメリット・デメリット
メリット
①コンテンツの資産化
コンテンツ数が増えるほど、ユーザーとの接点機会や流入経路も増加していく。
作成したコンテンツが顧客との接点を生み出す資産になり、その資産をストックしていくことができることは大きなメリットだろう。一般的なウェブ広告などの場合は掲載期間や配信期間が定められているが、自社コンテンツであれば無期限で掲載することができる。
良質なコンテンツを継続的に発信することができれば、継続的にユーザーを呼び込むことが可能である。
また、コンテンツは社内の研修資料や営業ツールとして活用するなど他の目的で転用することも可能であり、副次的な効果も期待できる。
②ブランディング効果
ブランドを体現するような良質なコンテンツを継続的に発信することができれば、顧客を自社のファンとして取り込むことができる。ファンは顧客であると同時に、周囲の人に対して自社商品やサービスを伝える発信者にもなりうる。魅力的なコンテンツを作成することは、長期的な観点で企業をブランディングしていく財産となる。
③低予算で取り組める
運用型広告の場合、配信期間や掲載媒体によるものの数十万円~数千万円の広告費用が発生する。
一方、コンテンツマーケティングであれば、コンテンツ作成費用とサーバー・ドメイン費用などの限られた費用で取り組むことができる。
④潜在層や非認知層にもアプローチできる
コンテンツマーケティングの手法の一つとしてSNSを活用すれば、潜在層や非認知層にもアプローチすることができる。検索エンジンからサーチされることで顧客接点を取れるSEO対策だけではアプローチできないような顧客層も、SNS上であれば目に留まる確度は高い。SNSとコンテンツの相性は非常に良く、ユーザーのタイムラインに興味関心を惹くコンテンツを投下することで多くのユーザーにリーチできる点も魅力である。
デメリット
①効果が出るまでに時間がかかる
コンテンツが一定数蓄積されてから効果を発揮していくため、成果が出るまでは1年程度かかる想定で動くべきだろう。継続的なコンテンツの発信とアップデートが必要となり、即時的な効果は期待できない。
②継続的にコンテンツが作成できる体制の構築が必要
上記の理由から、成果が出るまでの期間と、それ以降も継続的なコンテンツ作成が必要である。また、ユーザーにとって有益な情報を提供するという観点においても日々顧客ニーズは変化していくため、それらを満たすコンテンツの質を担保することも重要であり、運用を続けられる体制構築が求められる。
今後の展望
コンテンツマーケティングの先進国であるアメリカでは、近年、法人を顧客とするBtoB企業においてコンテンツマーケティングを活用する例が急増している。
日本のコンテンツマーケティングは現状、個人のユーザー(購買者、消費者)を想定したものが主流であるが、近いうちにBtoBの流れは日本にもやって来るだろう。
今後アメリカの動向を追ってBtoB企業におけるコンテンツマーケティングが伸びていく可能性を考慮し、今から運用方法を検討したりキャリア形成の一考にしていただけると幸いである。