寄稿エージェント:渡部 海帆
「スポーツ人材」や「体育会人材」などと称される人材は、新卒採用・キャリア採用においても高く評価される。
実態として、採用したいという企業側からの需要に応えるように、スポーツ人材に特化した人材紹介企業が複数存在する。
なぜ、スポーツ人材は企業側からの人気が高いのだろうか。
今回は、スポーツ人材が高く評価されやすい理由と、スポーツ経験がビジネスシーンでどのように役立つかを解説する。
スポーツ人材が企業から高く評価される理由
スポーツ人材には、「根性がある」「粘り強い」「体力がある」といったイメージを持たれやすい。
これらのイメージは、決して間違っているわけではない。
しかし、それだけでは長いキャリアパスのなかで順調にステップアップしていくことは難しい。
キャリアパスの実現に重要なのは、自身が「どのような強みを持ち、どのように強みを生かせるのか」を正しく捉えることだ。
スポーツ人材にはこれまでのスポーツ経験を通じて、前述の要素が備わっている割合が高いため、企業からの評価も連動して高い傾向がある。
さらに、スポーツ人材が高い評価を受けているのにはもう一つ明確な理由がある。
それは、これまでのスポーツ経験を通じて、キャリアパスの実現に不可欠な「社会人基礎力」を自然に身につけていることだ。
この「社会人基礎力」について、次項にて詳しく解説する。
社会人基礎力とは
社会人基礎力とは、「職場や地域社会で多様な人々と仕事をしていくために必要な基礎的な力」の総称である。
最初に概念として提唱したのは経済産業省で、2006年に発表された。
その後、平成29年度に開催された「我が国産業における人材力強化に向けた研究会」では、新たに「人生100年時代の社会人基礎力」が定義付けられたのだ。
これは、「人生100年時代」のなかでライフステージの各段階において活躍し続けるために求められる力の総称である。
ビジネスシーンでも、個々が能力を発揮し、キャリアパスを実現していく上で、社会人基礎力は重要であると位置づけられている。
この社会人基礎力を構成するものは、「前に踏み出す力」「考え抜く力」「チームで働く力」とそれに付随する12の能力要素だ。
具体的な内容については次項以降で解説したい。
参考:社会人基礎力|経済産業省
前に踏み出す力
「前に踏み出す力」は主体性・働きかける力・実行力という3つの能力要素で構成されている。
ビジネスでは、どのような状況下でも、一定以上の責任を持って行動することが求められる。
このとき、スポーツ人材は、過去の経験を踏まえて行動できる可能性が高い。
なぜなら「予選を突破したい」「優勝したい」などといった目標に向けて練習のサイクルを確実に実行していたという事実があるからだ。
スポーツ人材は、主体性と責任感を持ち、目標に真摯に向き合う姿勢が備わっていると予想できるだろう。
さらに、チームの仲間や監督、コーチなどさまざまな関係者を巻き込み、目標に向かって行動していたことも強みだ。
個人プレーに陥らず、協調性を保ちながら目標達成に尽力する社員がいることは、安定した企業活動に不可欠な要素である。
考え抜く力
「考え抜く力」は課題発見力・計画力・創造力で構成されている。
ビジネスでは、売り上げが伸びない、解約率が高いなどの課題が生まれることがある。
その際は、営業フローの見直しや顧客ヒアリングの徹底、サービス品質の改善などを実践することが重要だ。
この一連の流れを首尾よく実行するには、ある程度経験を重ねたビジネスマンでなければ難しいのではないかと思われやすい。
しかし、実は多くのスポーツ経験者が、同様の経験を無意識に実行しているのだ。
スポーツにおいても、試合で勝てない、技術的に不足しているなどの課題に直面することが多々ある。
その際には、まず現状分析を通して自らの課題を明確にする。
そして、課題の解決に向けたプロセスを組み立てて、実行するというPDCAサイクルを回す経験を数多く積んでいるわけだ。
この流れが身についているスポーツ人材は、ビジネスシーンにおいてもすぐに順応できる可能性が高い。
チームで働く力
「チームで働く力」は以下の要素で構成されている。
- 発信力
- 傾聴力
- 柔軟性
- 状況を把握する力
- 規律性
- ストレスコントロール力
多くのスポーツ人材が持つ協調性やリーダーシップは、ビジネスシーンにおいても間違いなく生かせる強みである。
とくに、チームスポーツ経験者は、協調性を土台とした規律性・発信力・状況把握力に優れている傾向がある。
このようなスポーツ人材は、社内調整のみならず、社外関係者など多くのステークホルダーを巻き込み協働することができる。
さまざまなビジネスシーンで重宝される人材となるだろう。
スポーツ経験を強みにキャリアを描く
キャリアアップの実現は、まず自身の強みを正しく理解することが肝要となる。
スポーツ人材には、スポーツ経験を通して培われた社会人基礎力に加え、「自己実現をする力」が備わっている。
常に自身の理想状態を想定し、そこに向けた成長のために試行錯誤を繰り返した経験は、キャリアを描く際も生かすことができる。
ビジネスで目標達成を目指すなら、まず5年後、10年後のキャリアにおける理想状態をマイルストーンとして置く。
そして、そこにたどり着くための正しい選択肢を選びながら、これまでの経験を生かし、まい進していただきたい。
そうすれば、理想のキャリアパスが実現できるだろう。