寄稿エージェント:有郷 菜花
新卒市場で人気の高いメーカーだが、入社後しばらくして転職に踏み切る人材も少なからず存在する。転職市場では、メーカー出身者はどのような扱いを受けるのか気になる人もいるだろう。
入社後や転職市場に参入する際などに、想定していたものと違うといったギャップを感じていると、思うように活動できないこともあり得る。
今回は、そのギャップへの理解を事前に深められるように、メーカー出身者のキャリア形成はどのようなものになるかを解説していく。
新卒市場でのメーカーの立ち位置とは
学情が発表した2024年卒学生対象の就職人気ランキングでは、上位10社のうち、4社がメーカーであり、学生からの人気が非常に高い。
2024年卒就職人気企業ランキング(総合ランキング)
1位:伊藤忠商事
2位:任天堂
3位:講談社
4位:味の素
5位:集英社
6位:アサヒ飲料
7位:大日本印刷(DNP)
8位:資生堂
9位:オリエンタルランド
10位:イオングループ
任天堂、味の素、アサヒ飲料、資生堂と生活に身近な商材を取り扱うtoCメーカーがランクインしている。このことから、「実際に使っていて親近感がある」「有名な大企業」などという理由から志望する学生が多いと推察できる。
参考:2024 年卒学生対象「就職人気企業ランキング」を、朝日新聞の朝刊紙面にて発表|株式会社 学 情
なぜ転職を検討するのか、転職市場でのメーカー出身者の立ち位置
転職市場においてメーカー出身者はどのような立ち位置で、人材の価値はいかほどなのかが気になる方も多いだろう。
一方で、転職先にメーカーを選択することとはどういうことなのかという疑問を抱く方もいるはずだ。ここでは、これらの疑問点に対する実情を解説する。
なぜ人気のあるメーカーから転職をするのか
新卒市場においてメーカーが人気なのは、多くの人々の共通認識だろう。
それだけに志望者が多く、複数回の面接を突破して内定を得て入社までたどり着けるのはごくわずかの限られた人材だけとなる。
そこまで大変な道のりを経て入社をしたにもかかわらず、なぜメーカー出身者は転職を考えるのだろうか。理由としては以下が考えられる。
- ルート営業で成長を実感できない
- 年功序列の環境のため、昇進まで時間がかかる
- ワークライフバランスを尊重したい意向が強くなり、異動や全国転勤などが難しくなった
メーカーの安定的な基盤は魅力的だが、そこに対するギャップが生じると転職を視野に入れる傾向が強い。メーカー営業は、安定した消費者ニーズがあるなかで、特定の取引先とのやり取りがメインになりやすい。
そのため、ルート営業でニーズのある商品を売っていくことになる。
この営業方法は、少なからず会社の看板や商品力によって売れるという側面があることは否めず、成長の観点でギャップを感じる方もいるだろう。
また、想像以上に他部署への異動が叶わず、昇格や昇給に時間がかかることに対してギャップを感じることもある。
転職市場でのメーカー出身者の立ち位置
会社の看板に依存してしまうルート営業メインのメーカー出身者は、転職市場での市場価値はあまり高くないのが現実だろう。
理由としては、営業力という観点では、ルート営業経験者は無形営業経験者に比べると、劣ることが否めないからである。
その代表的なものの一つが、顧客開拓力という観点だ。新規開拓営業経験者は、日常茶飯事に行っている業務であり、苦にしない人も多い。それに比べると、ルート営業経験者は、顧客開拓力が足りないという見方をされる。
さらに、特定の有形商品を取り扱ってきた経験は、ほかの業界へ移ったときに知識として生かすことが難しい。
そのため、基本的には「転職先の業界でも生かせる営業力、提案力があるのか」という観点で判断、評価されるのが実情だ。
メーカー出身者のキャリアの可能性
メーカー営業出身者がキャリアチェンジできないのかというと一概にそういうわけではない。
ここでは、キャリアチェンジの選択肢や転職で注意すべき点について解説したい。
転職に際して注意すべき点
転職に際して注意すべき点は、年齢の壁があることだ。
30代に入ってくると、スキルや実績、その領域への知見をもとにより高い年収を提示される。
つまり、即戦力としての転職が一般的であり、ハードルが非常に高くなってしまうことがある。
そのことを踏まえれば、キャリアチェンジを目指す場合は、ポテンシャルを生かした転職が可能な20代のうちにすべきだろう。
ただ、業界内で川上、川下に移っていくというキャリアアップの転職であれば、30代以降でも十分可能性はある。
キャリアチェンジの選択肢
キャリアチェンジの転職となれば、無形商材の営業へ軸足を変えていくというキャリアが一般的だ。
商材に頼らない営業力や専門性を身につけることで、その後にまた転職をするとなった場合にとれる選択肢の幅が広がるだろう。
たとえば、明確に人事になりたいという目標がある方は、まずは人材紹介営業へ転職をして2~3年経験を積む。その後、事業会社の人事へ転職というキャリアが描ける。
一人ひとりのご意向や将来像に合わせて取るべき選択肢は変わってくるが、そこに対して制限はない。
ただ、ITや広告代理店など一部業務親和性が求められる業界については、一度の転職ではなかなか到達するのが難しい。
あくまでも、20代のうちはアプローチショットの転職が大事になってくるということを念頭に置くのが肝要だ。
それが積み上がった後に、キャリアのハブとなる選択肢を軸に転職活動を進めていくとよいだろう。
メーカー出身者のキャリアについて悩まれている方は、ぜひエージェントに相談していただきたい。