寄稿エージェント:玉津 智基
近年注目を集めているカスタマーサクセスは、サービスの継続率向上やLTV最大化に寄与する重要なポジションである。
しかしカスタマーサクセスという職種は知っていても、その魅力や特徴について把握している人は少ないだろう。
本記事では、カスタマーサクセスの将来性や向いている方の特性について、さまざまなデータをもとに解説していく。
カスタマーサクセスの洋々たる将来性
Mordor Intelligence社の調査(※3)によると、カスタマーサクセスの世界市場は、2021年から2026年において年平均24.4%成長すると予測されている。
実際、アメリカの大手小売企業であるウォルマート社では、カスタマーサクセスの取り組みに向け、2018年にCCO(Chief Customer Officer:最高顧客責任者)を設置した。ウォルマート社のような、いわゆる「ノンテック」業界にもカスタマーサクセスが普及しはじめたことは当時大きなニュースとなった。
カスタマーサクセスで活躍する人物の特徴4点
転職エージェントとして活動する中で、「カスタマーサクセスに向く人の特性は?」と質問を受けることは多い。
本章では、実際に自身の経験を踏まえた上でカスタマーサクセスに向く人の特性を解説したい。
共感性が強い
共感性が強い人は、カスタマーが何に困っていてどうしたいのか、といった不安や想いを感じ取る力が高い。故に、その悩みの先に何を実現したいのかという真のニーズをいち早く理解し、顧客の成功を手助けすることができる。
論理やデータを優先した意思決定ができる
先ほど共感性が強い人はカスタマーサクセスに向いていると述べたが、一方で情に流されやすかったり、人間関係のみで意思決定をする人はカスタマーサクセスには適さない。
カスタマーサクセスに向いている人は、データを用いて検討し、長期的な視点を大事にした意思決定を行える人物である。
長期・全体への目配りができる
カスタマーサクセスとして築くべき自社と顧客との関係性について、アメリカではしばしば恋愛と結婚に例えて説明される。
今、この瞬間を楽しく過ごす恋愛と、一生添い遂げることを前提にしている結婚との違いだ。カスタマーとの関係性をより深いものにできるのは、明らかに後者の「結婚関係」である。
加えて、夫婦二人で結ぶ結婚関係と比較して、カスタマーサクセスはより多くの人を巻き込んだ関係性構築となる。そのため、全体を俯瞰して捉えることが重要だ。
自社であればマーケティング、営業、プロダクトなどを含む全体の利害や状況を配慮しなければならない。また、カスタマーが企業ならば、契約の決裁者やプロダクトの管理者などを含めた会社全体の構造を捉えておく必要がある。
特に顧客の事業成長に深く関わる場合は、カスタマーサクセス自身も経営者目線を持ち、成長戦略を理解した上で支援しなければならない。
複数の視点から関係性を把握し、全体を捉えて物事を動かすことが得意であれば、カスタマーサクセスでその強みを大いに生かせるだろう。
多様性を受容し、協業が得意
カスタマーサクセスの仕事はチームプレイである。顧客はそれぞれの悩みを抱えており、彼らの悩みを解決し成功へと導くには、担当者一人の力では成し遂げることはできない。このことから、自分と違う畑の人と協業をする必要が日常的にあるため、チームで動き協力するのが好きな人物が向いているといえる。
キャリアとしてのカスタマーサクセスの魅力
市場ニースが非常に高い
LinkedIn社が2018年に実施した「アメリカでもっとも有望な仕事」ランキングで、カスタマーサクセスは3位に選ばれた。
現に、カスタマーサクセスはCEOへ続くキャリアだ、とも言われている。
これは2018年アメリカのトレンドであったが、日本にも数年遅れで同様の流行が訪れる。
事実、転職サービス「doda」を運営するパーソルキャリア社が行った調査で、インサイドセールスやカスタマーサクセスに関する求人数は、2019年から2022年までの3年間で12倍も増加していることが明らかになった。
求人状況の伸びからも、各社がカスタマーサクセスに力を入れはじめていることが読み取れ、転職市場のニーズが非常に高まっていることがわかる。
プロダクトの改善・価値向上に関わることができる
プロダクトに関する顧客からの問い合わせや要望を受ける機会が多いカスタマーサクセスは、商材をより価値あるものに改善していくためのヒントや提案を得やすい立場である。
プロダクトの改善にはカスタマーサクセス単体ではなく、営業部や開発部など他部署との連携が必要だが、自らが提案した改善要望が実際に反映され、顧客の課題解決につながった時にはカスタマーサクセスとしての意義を感じられるはずだ。
今後、カスタマーを中心に捉えて事業を推進することはますます主流になっていく。
このような時代の変革の中でカスタマーサクセスの考え方を学び、経験を積むことは、自身のキャリアをより前向きにさせてくれるだろう。
カスタマーサクセスへの転職を考えた際には、本記事でお伝えした向いている人の特徴やキャリアにおける魅力について、ぜひ参考にしていただきたい。