IT企業における3つの上流フェーズと親和性の高い職種について

<strong>IT企業における3つの上流フェーズと親和性の高い職種について</strong>

寄稿エージェント:粂田 敦希

上流フェーズに進みたいというSE(システムエンジニア)は、数多く存在する。しかし、業務スコープによって、「どこを上流と捉えるか」が変わるため、注意しなければならない。例えば、「コンサルティングファームで上流工程に携わりたい」という希望がある人に、実際に話を聞いてみると、「上流=システムの要件定義」と理解していることもある。

また、システム・技術志向の強い人が、「上流にいきたい」という理由でコンサルティングファームへ転職した場合には、入社後のギャップに戸惑うだろう。

今回はIT企業における上流工程について、3つの階層別に説明していくので、何となくイメージしている上流業務が、具体的にはどのようなものなのかをぜひ理解してほしい。

また、それを実現するために、どのような企業・職種を選択すればいいのかについても触れていきたい。ぜひ、本記事を参考に、具体的なキャリア形成につながれば幸いである。

IT企業における3つの上流フェーズ

それでは、IT企業における3つの上流フェーズについて解説していく。

IT戦略

IT戦略とは、経営方針に従い、IT技術をどのように経営戦略の一部として利用するかという方針のことだ。

中期経営計画に関わるような、経営上重要な課題に対する施策を検討するために、IT資産のアセスメントや課題の抽出、解決の方向性・実施策の検討などを行う。

システム企画・構想

IT戦略フェーズで策定した課題・方針をもとに、各事業の業務・システムに、企画や構想を落とし込んでいく。この結果から、より具体的な課題の抽出や改善策の検討を行うのだ。

また、業務・システムにおける現状を把握した上で、IT戦略に沿ったグランドデザインを策定し、システムのあるべき姿を具体化させていくのが特徴といえる。

ベンダー選定やRFP(提案依頼書)作成、場合によってはPoC(概念実証)開発を行い、システム開発フェーズにつなげていく。

システム開発(要件定義~リリース)

企画フェーズで定まった事項や、RFPをもとにシステム要件定義を行い、実際にシステムを構築していく。

SE上流工程で求められるスキル

SE上流工程では、顧客の要望をまとめ、システム化を実現するための設計を行い見積もりをまとめるフェーズとなる。

必要なスキルとしては次のようなものが挙げられる。

業務知識

顧客の業務に精通している必要がある。また、顧客企業が関係する業界の知識や顧客企業を取り巻く環境などの知識も必須となる。

なぜなら、それらを加味しなければ、より具体的に顧客の要望をシステムに落とし込むことができないからだ。

このように、SE上流工程では、ITスキル以外にも幅広い業界知識が必要となる。

ITスキル

顧客の要望がまとまったあとは、「設計」フェーズに移行する。このときに実現可能なシステムを想定して設計する必要があるため、ITスキルは必須となる。また、設計後は下流工程を担当するエンジニアに内容を引き継ぐ必要がある。よって、エンジニアと同等に会話できるITスキルが必須だろう。

ヒアリングスキル

顧客が抱えている課題や要望は、顧客のなかできちんと整理されているわけではない。よって、そのような課題や要望を正確にヒアリングし、「要件定義書」としてまとめておく必要がある。

このような理由から、ヒアリングスキルが必須となる。また内容によって、ヒアリングする顧客を選ぶ必要性も出てくる。

自社の課題を明確に把握している担当者や裁量権をもった経営層など、場合によっては複数人を巻き込んでヒアリングを進めるとよいだろう。

よって、顧客の誰が詳しい情報を把握しているのかについて、日ごろから知っておくために、コミュニケーションスキルも必須となる。

IT企業3つの上流フェーズに関連する職種

続いて、それぞれのフェーズに携わる職種についてみていきたい。

IT戦略:コンサルタントか事業会社のCIO、IT企画職

CIO(情報統括役員)やIT企画職は、未経験からの転職は難しく、ファーム出身者か事業会社SEの上流業務経験者が採用ターゲットとなる。なおコンサルティングファームでは、ファームやチームによって携わるフェーズが異なる。

IT戦略に携わりたい場合にターゲットとなるのは、戦略ファームのIT部門や外資系総合ファームのIT戦略チーム、ワンプール制の総合ファームなどが知られている。

システム企画・構想:コンサルタントかプライムSIerのPM、事業会社のIT企画職、自社開発企業のPdMなど

企画構想段階に携わりたければ、総合系のコンサルティングファームや、ITアーキテクト職というキャリアがある。プライムSIer(システムインテグレーター)でも可能だが、提案できる技術の幅や業務側への介在度、そしてナレッジに限界があるだろう。

一方で、技術に重点を置きたい、さらにシステム開発まで携わりたい人は、SIerか事業会社SEが適している。

また、シンクタンクのエンジニア職であれば、上流工程に携われることも多いため、システム企画や提案経験者として、IT企業の上流へジョインできる可能性が高い。

シンクタンクは、コンサルティングファームのように、顧客企業の課題解決が目的ではなく、社会や経済の調査・研究が目的だ。よって、研究機関という位置づけになる。そのようなシンクタンクの調査・研究の一環で、システム企画やITマネジメントといったサービスを展開しているのが特徴だ。

システム開発:SIerのPM、自社開発SE

自分で手を動かしたい、技術に軸足を置きたいという人は、SIerのPM(プロジェクトマネージャー)や自社開発SEという選択肢が適している。しかし、プライムSIerのPM職などは、自分で手を動かすよりも、二次受け・三次受けパートナーの進捗管理をすることも多くなる。

よって、要件定義から実装まで行いたいのであれば、自社で一貫して開発をしている企業を選ぶのがよい。このように、一口にIT企業の上流工程と言っても、フェーズによって、貢献できる職種や経歴が異なる。

まずは経歴や実績を軸として、自分ならどの上流工程に関わることができるのか、客観的な分析を進めてほしい。自分一人での分析に不安があるなら、ぜひエージェントに相談してほしい。「真の実力」を知ることができるよい機会になるはずだ。