寄稿エージェント:瓜生 遼馬
昨今、日本人で海外留学をする学生や社会人は、増加傾向にある。文部科学省の調査によると、新型コロナウィルス感染症が蔓延する前の2019年度には、年間10万人が海外留学をしているのだ。
なお、海外留学を希望している人は、就活を有利に進めたい学生や、キャリアアップ・キャリアチェンジを考えている社会人などが多い。数十年前までは、留学を経験しているということが大きな加点対象になっていた。しかし、令和の時代は、留学経験のみで自身をブランド化できるほど甘い状況ではない。
今回は、留学経験をキャリアに活かしていくには、具体的にどのようにしていけばよいのかを解説していく。
留学ではどのような能力が身につくのか
それでは、実際に留学を通じて身につく能力から考えていきたい。多くの人が、真っ先に思い浮かべるのが「語学力」だが、それ以外にも下記のような能力を身につけられる。
- 異文化適応能力
- 主体性・積極性
- 忍耐力・我慢強さ
- コミュニケーション能力
- 幅広い視野
- 問題発見・解決能力
- 判断力・決断力
ここでポイントになるのが、上記能力はすべてにおいて同じような深さで身につけることができなければ、あまり意味がないということだ。
それでは具体的に、留学経験をどのようにキャリアへ反映していけばよいのか、そのポイントについて考えていこう。
自分自身の価値観に合った能力を獲得する
人は、それぞれ異なる価値観を持っている。だからこそ、自分の価値観に合った環境で、エネルギーを注ぐことによって、想像以上の成果を発揮できるのだ。
自分自身の価値観を十分に理解した上で、留学を通じて得るべき能力を選択するべきである。
つまり、まずは価値観の理解からスタートしてみてほしい。次に、留学をキャリアに活かすためには、「留学前」「留学中」「留学後」のフェーズごとに、やるべきことを明確にしておこう。
それでは、具体的にフェーズごとにどのような行動をすればいいのか紹介していく。
留学前
留学前にしておいたほうがよいことは、具体的に以下の3つだ。
現時点での「強み」を理解する
まずは、自分自身の現状を把握して、他者よりも秀でている点を認識する必要がある。方法としては、過去からこれまでの人生を振り返った際に、自分が生き生きとしていた瞬間や、成果を発揮した瞬間に焦点をあてると見えてくるはずだ。
留学を通じて伸ばしたい能力を決める
次に、発見できた強みや留学を通じて得られる能力のなかから、特に自分の強みを伸ばせそうな能力を選択する。
留学の目的・目標を設定する
最後に、留学の動機を明確にした上で、留学中に振り返りができるように明確な目標を立てるのだ。目標は、長期的なものと短期的なもの、両方を定めるとよい。短期的な目標は、定量的で実行の可否が分かりやすい目標を定めるとよいだろう。
また、簡単に達成できてしまうものよりも、一定の努力を必要とする目標に設定することがベターだ。
例えば、「主体性の向上」を長期的な目標とする場合は、「現地コミュニティのイベントに週3回以上参加する」など具体化することが大事である。
留学中
留学経験をキャリアに活かすための留学中のポイントは、下記の3つだ。
- 留学前に立てた目標の実行
- 定期的に記録を残し、達成の可否を振り返る
- 目標の見返り・修正
具体的には、現地のコミュニティ情報を集めて、実際にエントリーしていく。また、毎週日曜日には、振り返りの時間を設けて、3回以上参加できていたか記録をつけるとよい。なお、振り返りを設ける期間は、留学期間をもとに考えるとよいだろう。さらに、2週に一度、月に一度といった形で、短期的な目標設定の振り返りも必要である。
現時点での目標達成度や継続性から、自分自身の身につけたい能力を客観的に評価して、さらに伸ばしていくための短期的な目標に修正を行っていくとよい。
留学後
帰国後は、留学生活で自分の強みがどれだけ成長したかを振り返ろう。帰国後に、自分自身と向き合うことで、自身の現在地を改めて再認識できる。
留学前に確認したときと比べることで、変化をより感じることができるだろう。最も重要なポイントは、アウトプットすることである。
自分の強みや成長したことを記録に残しておくことをおすすめしたい。
留学で得た能力を活かしたキャリア戦略
留学経験を活かせるキャリア・就職先はたくさんある。ここからは、代表的な仕事について紹介していく。
外資系企業への就職
留学経験を最も活かせるのは、外資系企業への就職だ。また、外資系企業は、日系企業と比べて給与が高いのが魅力といえる。
外資系企業であっても、取引先のほとんどが日本企業になる場合には、入社直後はそれほど高い語学力は求められないことが多い。しかし、キャリアを重ねていくごとに、海外出張が増えることや、海外企業とのやり取りなどの業務で、英語を使うことが多くなる。
よって、ビジネスレベル程度の語学力が求められるだろう。さらに、公用語が英語の外資系企業で働く人や、マネージャー以上のポジションを目指す場合は、ネイティブ並の語学力が必要になる。
この語学力は仕事のなかでも身についていくので、最初から諦める必要はない。日頃から、英語力の向上を目指していけばよいだろう。
海外営業部がある企業
メーカーや商社といった、海外との取引が多い企業には、社内に海外営業部が存在する。また、海外営業部に所属すると、海外出張や海外駐在が多くなるため、留学で得た語学力を発揮する機会が増える。
日本本社と海外クライアントとの間に立つときには、国籍が違う人とのコミュニケーション能力も活かせる。また、新しい市場の開拓に取り組むため、語学力とともに「高い営業力」を身につけることが可能となり、一石二鳥というわけだ。
スタートアップ企業
スタートアップ企業には、特にIT系が多いという特徴がある。また、IT人材は世界的に不足しており、日本企業でも外国人のITエンジニアの採用は年々増加している。そのため、多国籍なメンバーと仕事ができる人材や、外国人幹部や社員のサポート・アシスタントができる人材の求人も多い現状がある。
さらに、スタートアップ企業の場合は、外資系IT企業やデジタルマーケティング企業のサービスを使用するなど英語で連絡するケースが多い。そのため、仕事で語学力が必要になる企業が多いのだ。
留学は、多くの人がその後のキャリアに大きな影響を与える経験になり得る。だからこそ、これから留学する人や、実際の留学経験者には、実体験をキャリアにどう活かしていくのかを、明確にした上で歩んでほしい。
もし、キャリア形成に不安や悩みがあるなら、エージェントに相談してみることで、解決策が見えてくるはずだ。