寄稿エージェント:中野 里咲
リーダーの存在意義は大きい。リーダーなくしては業務の円滑化は難しく、その素質が健全なチーム運営に大きく関係している。
リーダーに能力がなければ、チームも成果を出しづらくなる恐れがあり、仮にリーダーとして選ばれても、必要な条件が揃っていなければ活躍するのは難しい。
本記事では、新型コロナウイルス感染症が全世界で流行するなど、予測がしにくい現代に必要なリーダー像について考察していく。
Volatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性)という4つのキーワードが交差する現代において、どのようなリーダー像を目指せばいいのか、ぜひ参考にしていただきたい。
リーダーシップとマネジメントの違い
予測がしにくい現代において、必要とされるリーダー像に迫る前に、よく混同されやすいリーダーシップとマネジメントの違いを解説させていただきたい。
リーダーシップは、組織の目標達成のためにメンバーを導いていく能力であるのに対し、マネジメントは成果を上げるための手法を考え、組織を管理する能力といえる。
リーダーシップとは
リーダーシップとは、「指導力・統率力」などと表現され、ある一定の目標達成のために個人やチームに対して行動を促す力のことを表す。
基本的なポイントとしては主に以下の3つがあげられる。
- 目標達成のためのビジョンを示す(長期ビジョンの提示)
- ビジョンが実現するように、スタッフのモチベーションを維持しながら励ます(メンバーの動機づけ)
- ビジョンを実現するにあたって問題となる部分を解消するために、メンバーを統合していく(メンバーの統合)
以上、3つのポイントを兼ね備えていれば、リーダーシップを身につけた人物といえるだろう。
マネジメントとは
一方でマネジメントとは、目標・目的達成のための手段を定め、管理することだ。
例えば、「ビジョン実現のために細かな戦術を立案する」「あらかじめリスクを予想し回避するために改善する」「システムなどによる人の管理、確実に結果を出すために人・物・お金を調整する」といった役割があげられる。
分かりやすくまとめると以下の通りだ。
- 短期的な計画/予算立案
- 組織構造設計/人材配置
- 予実管理/問題解決
なお、複雑なビジネス環境においては、リーダーシップもマネジメントも、どちらも欠かせないものであり、補完関係にあることも認識しておく必要があるだろう。
また、複雑な状況にうまく対処することがマネジメントの役割であるのに対し、リーダーシップの役割は変化にうまく対処することであることもつけ加えておきたい。
VUCAの時代だからこそ
VUCA(ブーカ)とは、「Volatility(変動性)」「Uncertainty(不確実性)」「Complexity(複雑性)」「Ambiguity(曖昧性)」の頭文字をとった言葉であり、将来予測が困難な状態を意味している。
つまり、VUCA時代においては、予測困難な事態に臨機応変に対応できるリーダーシップがこれまで以上に求められる。
また、企業ではVUCAにあわせた人材育成が急務であり、リーダー育成を重視する企業文化が生まれている。
リーダーの役割
リーダーの役割とは、組織目標を達成するために、人を動機づけて鼓舞し率いる、行動プロセスをとることだ。
具体的には、「どんな方向に向かっているのか」というビジョンを明確にすることが大切である。
また、メンバーの心を一方向に統合し、動機づけを行うことも必要だ。そのためにはメンバーへのコミュニケーションが必要不可欠といえる。
そのために、五感に働きかけ、信頼を勝ち取ることが重要である。また、リーダーのメッセージを信じさせるためには、言葉と行動の一貫性が必要だ。
そもそも自分のためだけに行動するのであれば、リーダーの役割に就いている必要はない。なぜなら、自分のことだけに夢中になっていればよいからだ。
また、自分一人ではどうにもならないビジョンや目標がなければ、自分のことだけにとらわれて終わる可能性が高い。
いわば、リーダーには「ほかの人々の役に立つために」自分自身が成長し、能力開発に努める責任がある。
さらに、「ほかの人達と自分のビジョンの実現に向けて奉仕する」という役割を理解しなければならない。
優れたリーダーシップとは
優れたリーダーシップという考え方が、歴史とともに変化している。
リーダーは生まれつきという発想から、リーダーは育成可能、そしてリーダーシップの有効性は状況に依存すると変わってきた。
つまり、リーダーシップは「部下の状況や特性」と「環境要因」によってスタイルを変える必要がある。
部下の状況や特性
成熟度が低い(未熟な)メンバーに対しては、まず人間関係を構築していく。そのため、最初は指示が増える。
「やってみせ、言って聞かせて、させてみて、ほめてやらねば、人は動かじ」という、山本五十六の言葉にもある通り、褒めて長所を伸ばしていくことは、人を育てる上で非常に大切だ。
この言葉には、部下を育てるときの基本プロセスが詰まっている。
「手本を見せる」「説明し、また部下の疑問に答える」「実際にやらせる」「結果がどうあれ、その部下の仕事から長所を見つける」このようなプロセスが必要になるわけだ。
その後、関係性が密になれば指導を入れる。もちろん、時には叱る必要もある。しかし、それも基本の育て方がしっかりとしていなくては、部下には受け入れがたいものとなってしまう。
また、相手の長所を見つけることは、優れたリーダーには欠かせない能力だといえる。
成熟度が高くなってきたメンバーに対しては、仕事を任せて随時フォローしていくスタイルに変えていけばよいだろう。
なお、援助が必要なくなってきたら委任し、関係構築の時間は最小限にしてもよい。
環境要因
3-2.環境要因
リーダーシップは、外部環境、会社の経営体制や組織文化によっても変化する。
現在の組織風土で問題がないか。また、会社全体の存在意義や使命(ミッション・バリュー)を理解し、視野狭窄に陥らないようにすることも非常に重要である。
また、外部環境の変化に対応するためには、まずリーダーが自己変革を厭わないことも大切だ。
価値観をアップデートしながら成長するためにも、「悩んだら難しい方を選ぶ」くらいの気持ちの方がよい。
変化に対応することは、誰しも「驚き・抵抗」を示し、あらゆる苦しみを引き起こすことがあるだろう。
ただし、その抵抗の時間を短くすることはできる。変化を拒否することなく、変化の必要性を受け入れることが重要である。
それにより、変化の受け手ではなく「変革の担い手」となり、優れたリーダーシップを発揮していくことが今後は求められる。