寄稿エージェント:中野 里咲
「即戦力採用」は、実は簡単なことではない。
なぜなら即戦力の定義として仕事に必要な知識や技能を保有していること以外にも、会社のビジョンやミッションを理解していることが欠かせないからだ。
くわえて企業の拡大に伴い採用人数が増えると、即戦力の採用は、より困難になる。
そのため、マインド面も含めて「人を育てる」ことが必要不可欠となってくる。
今回は人材育成について大切にすべきこと、さらには人材開発との相違点について詳しく解説していく。
人材教育で大切にするべきこと
人材育成で大切にすべきことは、大きく分けて3つある。
育てる相手をしっかりと見ること
育成は、一朝一夕でできるものではなく、画一的なものでもない。育て方は、一人ひとり違ってくる上に、その人の成熟度によっても変わってくる。
また、育成する人数が増えると、どうしても仕組化ばかりを考えてしまう。しかし、本来育成は十人十色であるべきだ。
実は、仕組化して効率UPを図るべきか、それとも、仕組化しないほうがよいのかを見極めることは非常に難しい。
仕組化を考えるよりは、まず相手をじっくりみることからスタートしたい。
活躍する姿をイメージすること
メンバーそれぞれがどのような姿で活躍をするのか。また、どのような強みが発揮されるのか、そのイメージを膨らませることが大切だ。
もちろん、最低限達していなければいけないレベルはある。しかし、できていないところばかりを見ていては、指摘ばかりの育成になってしまうだろう。
重要なのは、本人の強みが最大限に発揮されて、楽しくやりがいをもって働けることだ。そのためには、育成担当者が、対象者の活躍するイメージを明確にもっておく必要がある。
どれだけ相手を想えているか
育成する上で、指摘をすることや叱ることは、当然起こりうる。そのときに、本人が不快な思いをせずに、前向きに受け入れられるかは、育成者との関係性が大きく影響するだろう。
育成側は日々、「相手のためになっているのか」「本当に相手のことを心から思っているか」を振り返らなければならない。
その姿勢が、相手に伝わるからこそ、伝えたい内容が相手にすっと入っていき、成長につながっていくのだ。
人を育てることの重要性
経営資源において、「人」は非常に大事である。いくら資金が豊富で、よいサービスであったとしても、活かす人がいなければ意味がない。
どのような人材を育てるか。それは企業により、あるいは、業種・職種によって異なってくる。また、経営環境や時代によっても、求められる人材の素質、条件は変化していくだろう。
いずれにせよ、企業の盛衰は人次第である。人さえ育てていれば、どのようなことがあっても企業は生き延びていくことができる。
企業の発展に、育成は必要不可欠なものである。人間は誰でも、皆それぞれに無限に伸びる可能性や個性、潜在能力を秘めている。
そのため、信頼感をもって相手に接し、それぞれの素質や才能を見つけ出す努力をし続けることが大切である。
そうした考え方のもと、それぞれの人に合った育成の仕方を工夫する。そしてあきらめずに、根気よく努力を続けてこそ、着実に人が育っていくのだ。
人材育成と人材開発は両論
「人材育成」と「人材開発」は、しばしば混同して使われることが多い。しかし、それぞれに異なる意味を持っている。
人材育成の特徴
人材育成には、具体的に次のような2つの特徴がある。
必要なことを新しく身につけさせること
必要なことを新しく身につけさせるタイミングで、まず思いつくのは、入社・異動といった時期になる。
新入社員向けビジネスマナー研修や配属先での導入教育などは、分かりやすい人材育成方法といえる。
また、普段の業務のなかでも「必要なこと」「新しいこと」を身につけるタイミングは常にある。
必要に応じて日常的に行われる教育や、部下に業務を引き継ぐタイミングなどで、その都度行われるのが人材育成といえる。
ライフプランやキャリアパスなど社員の土台となる
キャリアだけでなくライフプランの面でも、豊かさを与えることができるのも、人材育成の1つといえる。
職場で充分なパフォーマンスを発揮するために、心身の健康や自己啓発が必要なことは周知のとおりだ。
さらに、資産運用やメンタルヘルスケアといった教育を取り入れるケースもある。このように、安定して働くための知識やノウハウを社員に教育していくことも人材育成といえるだろう。
人材開発の特徴とは
一方で、人材開発の特徴としては、次のような点が挙げられる。
社員の能力を伸ばすためのスキルを身につけさせること
人材育成が新しいスキルや知識を身につけさせるのに対して、人材開発はその社員が持っている能力を伸ばすことを狙いとしている点が特徴だ。
課題解決のためには新しい知識やノウハウを学ぶことも必要となる。
そのような場合に、今ある課題に狙いを定め、その社員が課題の解決に到達できるように習得させることが、人材開発の特徴となっている。
ライフプランやキャリアパスなど仕事の土台になる
社員には顕在化している能力と、知識としては持っていても、未経験であるなどの潜在的な能力がある。
言うまでもなく、知識は経験を伴って能力として活かすことができる。そのためには、課題やチャレンジの機会を用意し、経験を通じて能力の使い方を学ばせる必要があるだろう。
その結果として、新たな能力を実用化でき、成長につながるのだ。
かつて人材開発は、社員の長期キャリア形成やライフプランと、会社の成長に目的があった。しかし、現在の人材開発は、個々のスキルアップを目的とした人材の活用、パフォーマンス向上に重点が置かれている。
より早くその社員の特性や強みを把握し、それに合った人材開発手法をとっていくことが重要だ。
そこから社員の持つ能力を実用化していくことで、比較的短期間で社員の成長を促すことが可能になる。
雇用制度が多様化するいま、人材育成や人材開発の方針や手法も、さまざまなケースに対応する準備を進めておく必要があるのだ。
人材育成や人材開発に悩みや不安がある場合には、エージェントに相談し、解決策を探ってみてはいかがだろうか。