寄稿エージェント:鈴 武大
銀行の業務は、幅広く細分化されており、顧客対応を行う窓口担当や、書類手続き担当、また近隣企業とやりとりする法人営業担当など、さまざまなものがある。
今回は銀行業界の営業スタイルや習得できるスキル、キャリアについて詳しく考察していく。
銀行業界の営業スタイル
銀行の三大業務といわれているのが預金・融資・為替業務だ。それ以外の業務も、もちろんあるが、ここでは三大業務に焦点をあて業務内容を振り返っていきたい。
預金業務
個人や企業を問わず、数多くの顧客から資金を預かるのが預金業務だ。日常的に利用する普通預金をはじめ、各種定期預金、企業が小切手や手形を振り出すための当座預金などの銀行口座を管理する仕事である。
銀行の窓口でよく目にするが、こうした窓口担当者は「テラー(teller)」と呼ばれている。一般職の行員が従事することが多い業務であり、銀行の表の顔として活躍している。
通常、営業と呼ばれる業務においては、取引先のもとへ足を運び商談を進めるイメージがあるが、テラーのようにカウンター越しで取引先との商談を進める「カウンターセールス」と呼ばれるスタイルも存在するのだ。
融資業務
預金業務によって預かったお金を、資金を必要としている企業や個人に融資し、銀行はその利息によって利益を得ている。
例えば、企業が事業拡大する際の設備投資資金や、個人が家を建てるときの住宅ローンなどが代表的である。
こうした融資には、企業の発展や個人の幸福を応援する側面もある。その一方で、融資先が倒産したり個人がローンを返済できずに自己破産したりする場合がある。
そうなると、融資金の回収が難しくなり、返してもらえなかった融資金はすべて損害となってしまうため、融資先は慎重に見極める必要があるだろう。
為替業務
電気料金やガス料金、電話料金などの公共料金の口座振替など、銀行口座をもつ顧客からの依頼によって、振り込みや送金を行うのが為替業務だ。
そのほかの業務
かつては銀行で扱うことのできなかった投資信託、損害保険や生命保険などの販売が近年解禁になった。こうした金融商品の取り扱いも銀行業務の一つになっている。
実際には、住宅ローンを借りる顧客に、火災保険の提案を行うなど親和性の高い保険商品をセットで勧めることが多いだろう。
また、最近では不動産会社と連携した不動産の提案や、総合的な資産コンサルティングなど幅広い業務を担うようになった。
銀行業界で得られるスキル
一口に「銀行員」といっても、業務の内容は実に幅広い。しかし、どの業務でも、目標ノルマ達成や仕事の正確さが求められることは間違いない。
ここからは、銀行業務のなかで培われるスキルについて考えていく。
営業力
銀行で取り扱う商品は、預金や個人ローン、金融商品(保険商品、投資信託など)、法人融資と多岐にわたっている。
どれも「お金」に直結する「無形商材」であり、そのような商品を顧客へ営業・販売するには、顧客のニーズに寄り添いながら合致する商品の選定が必要となり、いかに商品の購入へつなげるかが鍵をにぎるだろう。
ニーズを汲み上げ、なぜその商品で課題を解決できるのか具体的なプランをもとにプレゼンするなど、高い営業力が培われるのだ。
コミュニケーションスキル
銀行で培われるスキルとして、コミュニケーションスキルが挙げられる。銀行は営業活動を通じて多くの顧客と接する。
また、銀行員が取り扱う商品は「顧客の大切なお金」であるため、無礼やミスがあっては顧客からの信頼を失ってしまいかねない。
顧客からの信頼があってこそ成り立つ営業活動であるため、コミュニケーションを円滑に行うためのスキルや、他人から心を開いてもらうような話術については、自然と鍛えられる。
これらのスキルは、どの業界に進んでも必ず役に立つものである。
財務・税務に関する知識
銀行業務では、財務や税務に関する知識も身につく。どのようなキャリアパスを選んでも、お金から切り離された業種はない。
銀行で得た金融知識は、多くの人が持っているものではないため、たとえ異業種に進んだ場合でも必ず役に立つ場面が訪れるだろう。
幅広い提案力
これまでの枠組みにとらわれず、「何でも売っていく」といったスタンスを重視しているため、幅広い提案力も身につくだろう。
関わる会社の幹部と交渉したり、経営戦略に関わったりと、心にささる提案力は銀行業界のみならず、どの業界でも通用するスキルの一つだ。
さらに、ITソリューションを使って営業を進めることもあるため、「最新の提案営業力」が身につくだろう。
銀行員のキャリアについて
では、銀行員はどのようなキャリアパスを描いていけばよいのだろうか。
銀行内でのキャリアアップ
金融営業の知見や経験を有していれば、国内でのキャリアアップだけではなく、海外赴任も可能となる。
また、各支店から本部部門への転勤、ファイナンスに特化したような部署への異動も問題ないだろう。
同じ銀行内のキャリアに限定すれば、融資担当者を経験後に、プレイングマネージャーとして30歳前後で役職に就く。
その後、30代中盤頃に、課長に出世するようなイメージである。最短で40歳頃に次長を目指すことになるが、ここからが初めてマネジメント職のポジションになるだろう。
最終的には、支店長になれるかどうかが鍵となる。支店長や本店の部長というポジションに、50歳までに就ければ、その後、役員になれる可能性も出てくるわけだ。
有力な転職先候補
最後に、銀行員の転職先について考えていく。銀行の一般的な営業経験で、強みとなるものとしては、集計で法人担当であった経験や法人営業の実績などが挙げられる。
見込み客に対してのソリューション営業の経験は、他業界の営業職でも重宝されるだろう。
実際の転職先としては、証券会社、不動産業界、コンサルティング業界、M&A仲介会社などが挙げられる。
形にとらわれず、商材が何もない状態から、実績を作り上げた経験は実に大きい。このような強みをアピールすれば、転職活動でも必ず役立つだろう。
銀行からのキャリアパスに何か不安があるなら、ぜひエージェントに相談してみてはいかがだろうか。