寄稿エージェント:島田 龍太
就活生や転職者に人気の高い商社は、私たちに身近な商品やサービスを支えている業界だ。華やかでグローバルなイメージに、憧れを持っている就活生も多いことだろう。
今回は商社の事業内容や魅力、キャリアパスについて詳しく解説していく。
商社の事業内容と種類について
まずは、商社の事業内容と種類について、見ていこう。
商社の事業内容
商社の事業内容は、大きく分けて二つある。1つ目は、生産者から原材料を仕入れて、取引先のメーカーに販売する「トレーディング」というビジネスだ。
生産者にとっては、売り手を拡大する役割を担っており、メーカーにとっては、需要を満たす調達をしていく役割を果たしている。
また、原材料の調達だけではなく、加工・製造・流通・宣伝・販売といった、バリューチェーン上の一連の流れが関わるビジネスモデルであるため、商社は非常に重要な位置づけとなっているのだ。
2つ目は、商社が保有している人・金・情報といった資源を、企業や事業に投資をする、いわゆる事業投資の側面がある。
その結果として、企業価値の増大や配当金で利益を上げるビジネスモデルとなっている。具体的な例としては、コンビニエンスストアやスーパーマーケットのグローバル展開への投資などが挙げられる。
商社の種類
商社は、大きく二つに分類することができる。1つ目が、さまざまな商材を扱うような総合商社だ。
もう一つは、鉄鋼・金属・エネルギー、繊維や食品に特化している専門商社。どちらも卸売業に分類されている。
総合商社は、莫大な資金を保有しているため、事業投資をメインに行っているのが特徴だ。
よくメーカーとの違いについて問われることがあるが、メーカーは基本的に自社製品の製造を主軸とする会社である。
上流から下流まで幅広く対応する商社もあるが、流通の役割を担えるのがメーカーとの違いであり商社の強みだ。
商社が人気を集める理由
次に商社が人気を集める理由について述べていくが、大きく分けて4つある。
グローバルに活躍できる
1点目は、どの商社も海外に取引先があり、また自社の海外拠点とやり取りする場面が多い。つまり、グローバルに活躍できるのだ。
また、海外出張や現地駐在の可能性も高いため、世界中をフィールドにして、スキルを身につけたい人には、最適な業界と言えるだろう。
規模の大きい案件に携われる
トレーディングや事業投資では、何億や何兆といった、大きなお金が動くビジネスに関わっていける。
また、電力やインフラ関係に携わっていくと、社会貢献性の高さや世の中に生み出す価値が大きいことに、やりがいを感じることができるだろう。
圧倒的な給与水準
総合商社の平均年収は、1,000万円を超えている。日本のサラリーマンの平均年収が、400万円と言われているなかで、総合商社の社員は実に約3倍の給与を得ているわけだ。
実際の働きが、正当に評価され、給与に反映されることは大きな魅力といえるだろう。
多様なスキルを習得できる
トレーディングでは、一つの商品を売っていくだけではなく、幅広い商材に関わっていける。
また、幅広い業界に携わっていけるため、多種多様なスキルを習得できる。つまり、「ジェネラリスト」として活躍できる人材の成長が期待できるのだ。
ただし、現在の転職市場を見ていくと、ジェネラルなスキルを習得できる業界は、年齢を重ねるごとにその傾向が顕著であり、他業界から見れば専門性に欠ける部分がある。
つまり、専門的なスキルや経験が問われる転職市場では、劣勢に立たされる場合もあると認識していただきたい。
また、商社全体の風土として年功序列の色が強いため、20代からマネジメントを経験できるかと言えば必ずしもそうではなく、成長速度が遅いというデメリットもあるだろう。
商社出身だからこそ活かせるスキルとキャリアパス
商社出身者が持つジェネラリスト的な立ち位置や年功序列型の風土を踏まえて、どのようにキャリアを描いていけばいいのか解説したい。
社内でのキャリアアップ
ジェネラリストとして、幅広い商材に携わって成長していきたいのであれば、今の社内でキャリアアップしていくのがベストだろう。
ただし、専門的なスキルの習得や若いうちに裁量権を持って働きたいと考えるならば他業界を含めて、自分の現在地を見直すことをおすすめする。
社外への転職
繰り返しになるが専門的なスキルを身につけたい、若いうちから裁量権を持って成長していきたいという希望がある人もいるだろう。
そういった人は、一度ほかの業界を見ながら、自分の現在地や実現したいキャリアを見つめ直す時間を設けた方がいい。
では、具体的にはどのような転職先があるのか、その一例をご紹介したい。
コンサルティング業界
1つ目が、経営・戦略コンサルタントだ。商社での営業は、企業の上位レイヤーとの折衝を通じて、対人コミュニケーションスキルを積んでいける。
したがって、コンサルティング業務として、クライアント企業に深く入り込んで、丁寧なヒアリングと課題解決が必要とされる業務との相性がよいわけだ。
経営・戦略コンサルタントの業務難易度は高いが、高い年収水準を維持したい人にも向いているだろう。
外資系投資銀行
2つ目は、外資系の投資銀行だ。投資銀行の具体的な業務内容は、企業に対して資金調達を中心とした、サポートを行うことになる。
つまり、大きな資金を扱うような法人案件に携わった経験があれば、そのスキルを十分に活かすことができるだろう。
さらに、海外企業との交渉などで英語を使っていけるため、語学スキルをさらに伸ばしたい人にもマッチしている。
ベンチャー企業
商社で得られない経験をしたいという希望があり、とにかくスピード感を持って成長していきたい人には、ベンチャー企業が非常に合っている。なかでも一番のおすすめは、人材業界だ。
商社のなかには、商材ではなく、個人のスキルや経験で戦っていきたいという想いを持っている人が、一定数いると思われる。
人材業界では、自分自身のスキルや業界の知識、キャリアに関する情報、これらをもとに、顧客に対して価値を見出していく。
よって、スピード感をもって自らのスキルを伸ばしていきたいのであれば、人材系のベンチャーが向いているだろう。
ここまで、商社出身者におすすめしたい転職先を3例ほどご紹介させていただいた。
そのなかで、やはり大事になってくるのが、現在どのような課題を持っていて、将来どのようなキャリアを描きたいかということだ。
商社にいて、もし悩みがあるのであれば、まずはエージェントに相談してみるのがよいだろう。
その結果、自分自身のキャリアや現在地を把握できる、よい機会になれば幸いである。