広告代理店の役割と広告業界におけるキャリアパス

広告代理店の役割と広告業界におけるキャリアパス

寄稿エージェント:舩田 哲平

広告業界は華やかなイメージとやりがいのある仕事内容から、中途・新卒を問わず非常に人気がある。

2019年の国内インターネット広告費は、前年よりも19.7%増加し、2兆1,048億円となり、初めてテレビの広告費を抜くことになった。
これはスマートフォンの普及や、企業のマーケティングがデジタル領域にシフトしていることが要因となっている。

そのため、広告業界においてテレビCMが圧倒的な影響力を持っていた状況から大きく変化し、現在では、インターネット広告をはじめとしたデジタル領域の影響度が非常に大きくなっている。
それゆえ、広告会社はこれまでの事業戦略から転換する必要性に迫られている。

そこで今回は、転換期を迎えている広告業界の役割や広告代理店のキャリアパスについて、解説していく。

広告業界における広告代理店の役割

まずは、広告業界の仕組みについて、説明していきたい。

広告業界は広告を出したい「広告主」、広告を作成する「制作会社」、広告を消費者に伝える「媒体」、広告主と媒体の架け橋にとなる「広告代理店」の4つから成り立っている。

広告代理店とは、広告を出したい広告主(クライアント)の依頼により、営業活動・コンペなどを通じて広告・販促・プロモーション活動を代理で行う会社のことを指す。

また、総合広告代理店と専門広告代理店では、担当する広告の分野や事業内容に差はあるが、メインとなる役割は変わらない。

多くの広告代理店は、クリエイティブ部門である広告制作やイベント開催について、外部の企業に依頼しているため、プロジェクトや進捗の管理が主な役割である。

加えて大手では、作った広告やCMを、TVなどのメディアで発信できるように広告枠の買い付けやその交渉も行うのが特徴だ。

広告代理店の種類

大きく分けると広告代理店は以下の3つに分類できる。

総合広告代理店

総合広告代理店は、テレビ、新聞、雑誌といったあらゆる広告媒体を取り扱っている。

また、宣伝したい商品を、「どの媒体でどのように宣伝していくか」といったプランを考え、そのプランに最適な広告の制作や販売促進などを行う。

広告が完成すると、媒体から購入した広告枠に出稿する。なお、総合広告会社の大きな特徴は、複数の媒体で同時に広告を打てることが強みである。

専門広告代理店

専門広告代理店は、例えばテレビCM、インターネット広告など、特定の広告媒体に特化している広告代理店のことである。

仕事内容としては、担当する専門媒体の広告枠を販売するための営業活動を行う。

総合広告代理店では、宣伝プランに適した媒体を購入するが、専門広告代理店は媒体を売る側の役割をしている点が大きな違いとして挙げられるだろう。

また、媒体を売るだけではなく、自社で取り扱える媒体のなかから、どの媒体が最適かを提案する仕事も担っている。 

ハウスエージェンシー

ハウスエージェンシーは、特定企業の広告を制作する広告代理店のことだ。

ハウスエージェンシーのメリットは、特定企業専属の広告代理店であるため、総合広告代理店に依頼した際に発生する仲介手数料を削減できることだ。
しかし、現在では特定の企業のみならず、そのほかの企業の依頼も受けているハウスエージェンシーも存在する。

広告業界でのキャリア(培えるスキル・キャリアパス) 

最後に広告業界、広告代理店での経験で培えるスキルとキャリアパスについて述べていく。

広告代理店で培えるスキル

広告代理店で活かせるスキルは、大きく分けて3つある。

①提案営業力
広告代理店は、顧客の要望をもとに、顧客のビジネス拡大にコミットする広告を作り上げるのが仕事だ。そのため、顧客とのディスカッションのなかでニーズを拾い上げ、また顧客が考えていることを察した上で、成果物として形にするスキルが培える。 

②マーケティング思考
マーケティングは、広告よりも広い概念ではあるものの、やはり広告がマーケティングに果たす役割は非常に大きい。広告を仕上げていくなかでは、綿密なマーケティングリサーチをもとに、その顧客に高いマーケティング効果をもたらす広告が形成されている。
よって、広告分野に強みを持ちながら、「マーケティングに関する分析」や「マーケティング戦略」の立案などの専門性を培うことも可能だ。

③プロジェクト管理能力
ほとんどの広告は短期間でできるものではなく、顧客とのディスカッションを重ねながら時間をかけてブラッシュアップしている。結果として、顧客の要求水準を満たす、質の高い成果物に仕上げられていくのだ。一方で、広告は発信するタイミングが重要であるため、厳格な期限が決められていることもある。
そのため、プロジェクトチームをまとめ、スケジュールに沿って円滑に推進していく能力が求められ、多くのプロジェクトをこなすうちに、プロジェクト管理能力が向上していく。

キャリアパス

広告代理店での経験を活かせるキャリアパスは、大きく分けて2通り考えられる。

①他業界のセールス
広告代理店では、クライアントのニーズに合わせて、広告自体の必要性や効果を訴求する必要がある。単なる広告の枠売りではなく、戦略を重視した高い提案スキルが身につくため、成長産業や難易度の高い営業力が求められる他業界においても活躍が期待できるだろう。また、ストック型のビジネスモデルも学べるため、トレンドとなっているSaaS業界とも親和性が高い。 

②事業会社のマーケター
広告代理店で培った、マーケティングの知見やスキルを生かして、マーケティング分野の専門職に移っていく人も少なくない。広告代理店では、マーケティング戦略の一側面にしか携わることができないが、マーケターであれば、その企業のビジネス拡大に向けたマーケティング全体の戦略を立てて、マーケティング活動を推進していくことが可能になる。また、特定企業のマーケターと比較し、予算や施策が限定的になりづらく、幅広いマーケティング知識や経験を積むことが可能だ。よって、事業会社のマーケターとしての活躍が見込まれる。

このように、広告代理店では、ほかの分野ではなかなか得られないスキルセットを習得することができる。
消費者の購買行動が多様化し、マーケティングの重要性が高まる昨今において、広告代理店で得たスキルは、その人のキャリア形成に大きく役立つだろう。
もし、広告代理店やマーケティング分野でのキャリア形成に不安があれば、エージェントに相談し、一緒に解決策を模索してみてほしい。