寄稿エージェント:稲垣 大亮
終身雇用制度の崩壊やジョブ型雇用制度の拡大により、転職は多くの人にとって当たり前になりつつある。
そのような時代の流れから、人材業界で働く需要は今後ますます増えることが予想される。
本記事では、人材業界で働くことで得られる3つのスキルについてご紹介していく。
1,中長期の視野を持って数字で語る力
人材業界で身につくスキルを語るうえで、まずはどのような層がカウンターパートになるかという点から確認していく。
人材業界において企業側を担当する、いわゆるリクルーティングアドバイザーは、大企業担当では人事部門、中小企業やスタートアップ企業になると経営者の方に対して提案を行う職種である。
大企業の中で人事として働く人たちの特徴としては、現場で営業として高い実績を残している方が多いという点が挙げられる。
実は人事担当者の多くは、新卒から人事畑でキャリアを積み重ねてきた、という訳ではない。
大企業で採用に携わっているような人事の方は、営業として優秀な成績を積み重ねてきた人材を人事部が社内ヘッドハンティングし、会社の顔である採用の窓口として登用している場合が多いからだ。
そのため、人事部門の方々は数字への感度が非常に高いと言える。
勿論、中小企業やスタートアップ企業の経営層が数字で物事を語るのは言うまでもない。
彼らと円滑に交渉を進めていくためには、曖昧な表現を控え、定量的な根拠を基に提案していく必要がある。
つまり、経営者や人事側と共同し、その企業が求めている人材や将来的に必要となってくる人材ペルソナを自身で定義していくためには、全体像を数字で捉える力をつけていく必要があるのだ。
貸借対照表や損益計算書など財務の面から会社を捉えることは勿論、その企業の事業ドメインは何か、市場規模はどのくらいで、その領域でどのくらいのシェアをとっているのか、といった企業に対しての幅広い知見や分析力も身につけるべきだ。
数値でその企業の現状を捉えた上で、今後フェーズが変化していくにつれ、どのような戦略をもって事業を伸ばしていこうとしているのか、競合との差別化はどこで行っているか等を検討し、そこから企業の将来に必要な人材を定義し、企業へ提案していく。
このように、様々な角度から数値分析を各社ごとに行い、レベルの高いカウンターパートと議論を重ねながら必要なペルソナのアウトプットを出していくことで、中長期の視野を持って数字で語る力が洗練されていくのだ。
人材業界での仕事は、担当者が転職者と企業の仲介をしていくというビジネスモデルである。
2,再現性のあるセールススキル
明快なビズネスモデルであるため、シンプルなKPIに落とし込まれることが多く、個人の裁量を持って短期でPDCAを回すことが可能だ。
スピード感を持ってPDCAサイクルを回すことができ、更に裁量も大きいため、担当者は自分のKPIを容易に振り返ることができる。
つまり、KPIの各歩留まりにおいて、結果を出す為に急所となる部分を特定したり、何を工夫することでその部分の数値が向上するのかといったことを週や月といった早いペースで確認したり。することができる。
数値を基にしながらスピード感を持って確認や検討を行うことで、運や勢い任せではなく継続的に高い成果を出すことができるようになるのだ。
それでは、具体的にどういった手順で日々のKPIを見直していけば良いのだろうか。
例えば、「実績が出ない」という課題に直面したとする。
その際はまず、自分が普段行っている営業をプロセス毎に分解し、歩留まりを数値化する必要がある。
その上で、結果を出している人と自分の歩留まりを比較して乖離している部分に着目し、その要因を特定する。
仮に、成約までのプロセスが
「架電→アポイントメントの獲得→商談①→商談②→成約」
という順序で行われた場合、プロセス毎に数値化して比較することで、どこに差分が生まれているのか明確になるだろう。
アポの獲得から商談①の歩留まりに課題があるのであれば、そこから自分の問題点を分析し、「ヒアリングが浅いために顧客が正しく課題を認識できず、適切な危機感を持たせられていない」ことに原因があると理解することができる。
問題点が明らかになったことで、「ヒアリング項目を絞り、各項目における解像度を高めることができるような深掘りをしていくべきである」という正しい改善施策を打ち立てることができる。
施策が出来れば、あとはそれを実行に移していく。
改善策を組み込んだPDCAサイクルを回しながら数値の向上を図り、適宜振り返りを行って、結果が出る仕組みにまで落とし込んでいくのだ。
このように、KPIプロセスを分解することで自分のどのような行動がどこに影響を及ぼしているのか明らかになり、課題に対して適切なアプローチを取ることができるようになる。
自分自身のKPIを分析し、課題点と施策を積み重ねていく力は、どの業界どの職種であっても活用できる重要な能力である。
3,キャリアや組織に関する知見、専門性
様々な人のキャリアと深く関わる必要がある人材業界では、担当する顧客の組織構造がどんな仕組みをしているかであったり、どのような属性の人がどのようなキャリアを歩んでいるのかということを肌で直接触れながら学ぶことができる。
次第にそこから派生して、これからどのような業界が伸びていくのか、成功している企業の共通項は何なのか、どのような人材が市場から必要とされるのかも理解することができるようになっていく。
様々な業界、企業を見ていくことで、市場をマクロ視点でとらえ、将来までも思考する能力が身につけられるのだ。
これは顧客へ高い価値を提供するために必要なのは勿論であるが、自らがキャリアを選択する際にも参考になる知見であると言えるだろう。
今回は人材業界で働くことで身につくスキルについて説明してきた。
どのスキルも一流のビジネスマンになる為に非常に有効であるので、身に付けることによってあなたのキャリアを一段と飛躍させることだろう。
ぜひ、今後の転職活動において、人材業界も選択肢に入れてみてはいかがだろうか。