寄稿エージェント: 津村 航平
人材紹介業とはどんな業務で、どんなタイプの人に適正があるのか。
また、人材業界の知識や経験が将来どのような業界で活躍できる経験になるのだろうか。
本記事では、人材紹介業の魅力とそこにかかわるエージェント職の違い、さらには向いている人や業界を経たキャリアパスについて解説したい。
人材紹介業のエージェント事業とは
転職サポートには、転職者が求人や企業探しをする際に参考にする転職サイトと、転職者の代わりに専任のエージェントが付いて転職活動の代行やサポートをしてくれる転職エージェントがある。
今回は、忙しい求職者に代わってスピード感をもって確実な転職の成功に貢献してくれる、人材紹介業のエージェント事業にフォーカスを当てて解説する。
人材紹介業のエージェント職は2つに分けられる
エージェント事業は、キャリアアドバイザーと呼ばれる求職者側のエージェント(CA)と、リクルーティングアドバイザー(RA)と呼ばれる企業側のエージェントの2つがある。
ここでは、それぞれの役割の違いと向いている人材について解説したい。
キャリアアドバイザーは求職者をサポート
キャリアアドバイザーとは、求職者に対して、転職やキャリアサポートの支援を行う。
具体的には、転職を考えている求職者に対して、転職のきっかけや採用条件の要望などのカウンセリングをして、その求職者が希望する業界や適性に合致した求人情報を紹介し、転職活動の成功までを行うのがメインの仕事である。
転職活動の失敗でよくあるのが、本当の自分の強みや特性が分からないまま自己判断で転職先企業を決めたために、入社後に想像と現実とのギャップに苦しむことだ。
こんなときにでも、キャリアアドバイザーが付いて自分の強みや特性を他者視点で分析し、ベストマッチの業界や企業へその強みを存分にアピールできる。
応募書類の添削や模擬面接の対策を練ってもらうことで、ミスマッチを防げるのが最大の強みだ。
また、面接時に求職者が企業に伝え漏れたことをフォローしてくれたり、採用条件の交渉役を担ってくれたりと、キャリアアドバイザーは求職者と企業との円滑な橋渡し役として申し分ない。
【キャリアアドバイザーに適した3つの人物像】
キャリアアドバイザーには下記のような人物の適性が求められる。
- 傾聴力が高い
- 共感力が高い
- 人の良いところを見つけるのがうまい
特にキャリアアドバイザーは、相談者自身も気づいていないスキルの価値や適性を、カウンセリングから知る必要があるので、相手の本音を読み取って言語化をする傾聴力が必要とされる。
また、相談者の将来にわたる生き方について支援をするため、何よりも人が好きで人の役に立つことを喜びにできるかどうかが重要だ。
そのための共感力はキャリアアドバイザーにとっては基本スキルになっている。
また、転職者にありがちなのは、自分の得意分野やスキルに対する自己評価が低く、ときには強みとして認識していないケースも存在する。
転職活動を成功させるために、転職者のスキルが最も発揮される環境を判断するためにも、転職者の魅力や市場価値を発掘する能力が求められる。
リクルーティングアドバイザーは企業をサポート
他方で、リクルーティングアドバイザーは求人企業のサポートを進める。
担当する企業の経営者や役員、人事部門の責任者から得た企業の採用ニーズを細かく把握し、求める人材を整理して、採用するための戦略を提案する。
そして、社内の人事制度や評価制度、年収や昇格条件などを整理した上で、求人票の作成を行う。
また、条件を満たす転職希望者を企業に紹介するために、求人票をもとにキャリアアドバイザーと連携するのも業務の一つだ。
このように、基本的には求職者のサポートをキャリアアドバイザーが行い、求人企業のサポートをリクルーティングアドバイザーが進める「片面型」が一般的だ。
しかし、なかには求職者と求人企業のサポートを担当者一人で対応する「両面型エージェント」も存在する。
まさに弊社もそのうちの一つだが、両面型であれば求人企業から得た情報を的確、シームレスに求職者に伝えることができ、より手厚いサポートが可能だ。
【リクルーティングアドバイザーに適した3つの人物像】
リクルーティングアドバイザーには下記のような人物の適性が求められる。
- 探究心が強く課題解決が好き
- 個人ではなく仕組みに着目できる
- 多様な価値観を受け入れられる
リクルーティングアドバイザーは人材紹介を通じて企業の成長を支援していけることが最大の醍醐味だといえる。
クライアント企業が抱える成長課題を解決するには何が必要なのかを特定する必要があり、探究心を持って企業を分析する目線は欠かせない。
その上で、企業に属する個人への個別対策よりも、成長を阻害する要因を突き止め、解決へ導く仕組みづくりに着目できるかが重要だ。
そのため、リクルーティングアドバイザーには固着した価値観ではなく、企業ごとに多様な価値観を柔軟に理解して受容する力が特に求められる要素なのである。
また前提として、企業の個性や魅力、将来性を求人票に最大限に表現する文章力やキャリアアドバイザーへのプレゼン能力、仲介者としてのコミュニケーション能力は常に磨いておきたい。
人材業界経験後のキャリアパスについて
人材業界が他の業界と違うのは、人事へのキャリアチェンジを視野に入れて経験を積める点にある。
その理由は、人材業界の営業として継続的にあらゆる企業の採用活動に携わっていくので、効果的な顧客接点の創出や採用に至るまでの設計について詳しくなるからだ。
人材業界で得た経験や知識が企業人事で活きる点は下記のとおり。
- 求職者と企業の双方の気持ちが分かり採用の質が上がる
- 多くの業界知識が他業界の転職採用にも活きる
- 求職者へ響く企業アピールで優秀な人材を集められる
- 求職者の適性判断と入社後のケアで離職率を下げられる
- 社内業務にも調整力やコミュニケーション能力が活きる
このような経験やスキルは企業人事の質を大いに向上させる。
また最近では、メディカルやIT業界に特化した人材業界が注目を浴びている。
特にこのメディカルやIT業界は未経験からの転身が難しいものの「メディカル×人材」「IT×人材」といったキャリア形成を経て、そこから各領域の仕事に就く道が拓ける。
それ以外にも、キャリアコンサルタントの国家資格を取得して知識をつけ、他のキャリアコンサルタントとも交流を深め、業務の専門性を高めていける。
一方で、組織設計やRPO採用設計、組織コンサルタントとしてフリーランスという選択肢も見えてくる。
最近では、HRTechというシステム利用のトレンドもあり、HR領域に特化したIT領域のSaaSセールスなどに転身というキャリアも珍しくない。
このように、人材業界は多くの業界を俯瞰し他業種を横断した知識が身につくことから、自らのキャリア形成にも活かせるため、若手キャリアのハブとして人気の業種になってきている。
ぜひ今後を見据えたキャリアプランを構築していただきたい。