寄稿エージェント: 安達 克輝
販売職とは、その名の通り来店したお客様に対して、ダイレクトに商品(有形商材)の魅力を発信し、販売していくのが主な業務内容だ。
エンドユーザーに商品を販売する以外にも、在庫調整、売り上げの管理などさまざまな業務を担当している。
特に、正社員で雇用される販売職に関しては、アルバイトやパートタイマーなどと比較し、業務への裁量権を持つ分、責任も大きい。
今回は、正社員で雇用される販売職が、どのようなキャリアプランを構築すればよいのか、2種類のキャリア戦略とキャリアプランの考え方について触れていきたい。
販売職と営業職の違いについて
販売職のキャリアについてご紹介する前に、転職者が混同しやすい販売職と営業職の違いを整理していきたい。
職種 | 特徴 |
接客 | 来店したエンドユーザーに対して、きめ細やかなサービスを提供する、いわゆる「おもてなし」が業務。 |
販売職 | 来店したエンドユーザーを接客するという点では接客業と同様だが、加えて売り上げを確保するという役割が追加される。 |
営業職 | 販売職と同様に売り上げを確保し、さらには自ら顧客を獲得するところまでをカバーする違いがある。 |
実は、これらの職種はすべて、エンドユーザーに商品やサービスを提案し育成していく業務を担っているが、接客→販売職→営業職へ移るためには、表の通り、より多くのスキルが必要となる。
販売職が理解すべきキャリアは2通り
販売職が理解すべきキャリアは、次の2通りである。
- キャリアアップ
- キャリアチェンジ
ここでは、それぞれを比較してご紹介していきたい。
販売職のキャリアアップとは(販促系の場合)
キャリアアップとは、いわゆる社内でのポジションをステップアップしていくことだ。
一般的には販売スタッフから店長に昇進し、そこから本部で管理系と販促系のような仕事に就いていくことをイメージするとわかりやすい。
例えば、店舗販売スタッフから、店長に昇進。その後、本部での商品企画やプロモーションへ移っていくようなケースだ。
ただし、いつ移れるかどうかというタイミングについては、ポストの空きなども影響するため、事前にキャリアプランを立てることは難しい。
販売職から店長、商品企画、プロモーションへのステップアップを検討する場合には、3〜5年と中長期的な計画性と粘り強さが必要だろう。
販売職のキャリアチェンジとは
次に販売職のキャリアチェンジについてご紹介したい。
キャリアチェンジとは、販売職から業界の異なる職種へキャリアを移すというイメージが分かりやすいのではないだろうか。
例えば、弊社がご支援している転職希望者からご要望として多いのが、販売職からマーケティング、企画職へ転職するという事例だ。
販売職はエンドユーザーとダイレクトに関わる職種のため「どうすれば商品が売れるのか」、物が売れるまでの流れを間近で見ており、顧客の購買行動をもとにイメージできる。
この経験は、マーケティングや商品企画など、消費者購買行動全体もしくは新規商品企画を検討する際にも役立つだろう。
ただし、実店舗への来店ベースで物が売れる仕組みを考えるだけではなく、商品がどう認知され、来店につながったのかというマーケティング全体を理解しなければならない。
いきなり販売職からマーケティングや商品企画へ転職することは難しい。
販売職におけるキャリアの特徴と考え方
ここでは、販売職のキャリアアップおよびキャリアチェンジについて特徴と考え方を整理していきたい。
販売職におけるキャリアアップの特徴と考え方
販売職におけるキャリアアップの特徴は、以下の通りである。
- 店舗販売職から店長、本部(マーケティングや商品企画)に昇進するにはポストの空きが必要である
- まずは店長へ昇進し売り上げアップを図る必要がある
- リモートワークは難しい
- 年収のアッパーはある程度定まっている
(1)については、これまでもご紹介した通りであるため、割愛をさせていただきたい。
その上で、店舗販売職からキャリアアップを目指すには、店長への昇進が必要である。店長として、どれだけ売り上げに貢献したかが、本部職への昇進で絶対条件となるためだ。
なお、店長へ昇進しキャリアアップを目指すためには、乗り越えなければならないハードルがいくつかある。
例えば、販売職は「薄利多売」というビジネスモデルを採用しているため、スタッフ1人当たりが生み出すことのできる売上金額は、月間で数十万〜数百万円程度と言われている。
つまり、より多くの売り上げを確保するためには、スタッフの増員が必要であり、売り上げの最大化を図るには、業務内容の仕組み化とマネジメント力が欠かせない。
販売職としてキャリアアップを軸に今後の方向性を検討するのであれば、売り上げに貢献するための販売戦略のみならず、スタッフをまとめあげるマネジメント力や内部の仕組み化をロジカルに実行できる適性が必要だろう。
また、あなた自身の働き方にフォーカスすれば、販売職は店舗常駐型のビジネス形態であるため、リモートワークの導入が難しい。
柔軟な働き方を重視したいのであれば、キャリアアップではなく、キャリアチェンジも模索したいところだ。
なお、キャリアを模索する上で外すことができない年収についても、売り上げの限度額によって、年収のアッパーはある程度決まっている。
販売職におけるキャリアチェンジの特徴と考え方
販売職におけるキャリアチェンジの特徴は、以下の通りである。
- 販売職からいきなりマーケティングや企画へ移るのは難しい
- 営業職からキャリアを積めば年収のアッパーは高めていける
- 営業職からキャリアを積めば柔軟な働き方も可能
- 営業職へ転職するには売上目標から逆算した行動が必要
弊社にご相談のあるキャリアチェンジの希望として多いパターンは「マーケティングや企画に移りたい」というものだ。
しかし、この職種に関しては「物が売れる全体像やエンドユーザーの市場分析」など専門性の高いスキルが必要なためいきなり転職するのは難しい。
販売職から、将来的にマーケティングや企画職への転職を実現するためには「売れる仕組み」を理解できる営業職からスタートしたいところだ。
営業職で実際に物を売っていくことで、「どうしたら商品へ興味をもってもらえるのか、物が売れるのか」を理解することができる。
また、働き方にフォーカスすれば、さきほどご紹介した販売職からキャリアアップを目指す店長職と比較し、担当顧客数や商材の単価調整が可能なため、年収アッパーは高めていけるだろう。
1人当たりの月間売上金額が、数千万〜数億円に達する営業職も存在するほどだ。
特に、保険業界などでは、顧客数や契約数アップがそのまま年収に反映されることがある。
ワークライフバランスについては、コロナ禍の影響もあり営業職でもリモートワークやフレックス勤務が導入されつつある。そのため、柔軟なワークライフバランスも実現できるようになってきた。
ただし、業界によっても違ってくるため、しっかりと現状を見極める必要がある。
販売職からマーケティングや商品企画へキャリアチェンジを検討する際は、まず営業職で物が売れる仕組みを理解し、売上目標から逆算をして、どのようなところに課題があるのかを抽出して、改善策を数字に落とし込んでいくことも大切だ。
今回は、販売職のキャリアについて「キャリアアップ」「キャリアチェンジ」それぞれの特徴と考え方について紹介させていただいた。
どちらを選ぶかは、理想のキャリアプラン、働き方とのバランス、適性によって異なるため一概には言えない。
まずはキャリアを棚卸し、価値観の把握から中長期的なキャリアプランを模索してみてはいかがだろうか。